第2話

「これは…」


「何個かあるの。鍵付きの本」


「どうやって開けるんだ?」


「わからない。鍵があれば開くはずだけど…」



八城はポケットを漁った

中に入っていたのは、1つの鍵だ

最近の鍵に使われているものではなく、少し前の横に凹凸がついている鍵である



「これ使えるかな」


「…なんの鍵?それ」


「わからん。昔、俺がもらったらしい」


「らしいって…ああそっか、貴方記憶ないんだっけ」


「そういうことだ」



八城はその鍵を差し込み、回した

すると本が開き、ものすごい速度でページが捲られていく

そして八城の目の前は、真っ白になった





「うっ…。ここは…?」



周りには誰もいない

強いて言うのであれば、かなり離れた位置にアリスが倒れている

しかし先程まではなかった傷が体中についている



「お、おいアリス!」



反応はない

そんな二人の周りに、数人の大人が駆け寄った



「おいあんたら、こいつを助けてやってくれ!」



八城の呼びかけが聞こえたのか、アリスを抱える大人

しかしそのまま、地面に叩き落とした



「なっ…!」


『何寝てるんだ悪魔!さっさと起きて、水を運べ!』


『うぅ…。も、もう何日も寝てないんです…。寝させてください…』


『うるさい!さっさと働け!』


『…だれか…助けて…』


「何を、してるんだ…こいつらは…?」



八城は直感的に悟った

これはアリスの記憶だ。ここに来る前に持っていた記憶の断片

つまりアリスも八城と同じように、イジメを受けていたのだ



「やめろ!」



八城が手を伸ばしたが、すり抜ける

当たり前だ。テレビに触れたところで、映像が変わるわけがない

男たちが去り、倒れた少女が取り残された



「クソが…!」


『いつまでこんなこと…してたらいいの…?』



アリスは木の桶に井戸水を掬い、棒の端に括り付けてどこかへ運ぶ

八城がついていくと、到着したのは辺境の村だ



「これは…集落…?」


『――、手伝うから貸せ』


『よ、夜斗よると…?でもそんなことしたら、貴方が迫害される…』


『構わん。その程度の人間に従う道理はない』



駆け寄ってきた少年が、水バケツを1つ持った

助けてくれるものはいるのだと安心した矢先、夜斗と呼ばれた少年に詰め寄る先程の男たち



『冬風!何をしている!』


『見てのとおり、手伝っているんだ。どう見てもこの子には約不足だろう』


『それをやらせるのが掟だ!教えただろう、そいつは悪魔だと!』


『悪魔はテメェらだ!こんな年端もいかねぇ女に、これを強いてるんだからな!』



夜斗は水バケツをおろし、自分の影に手を突っ込んだ

ポケットに手を入れるかのように



『こい、夜刀神ヤトガミ



引き出した手には、黒い大剣が握られていた

男たちが後退りする



『俺に喧嘩を売るということは、この村を滅ぼしていいってことだな!?喧嘩なら買ってやるぞ、あぁ!?』


『それは…死神の…!』


『俺は死神だ!テメェらがいう、悪魔を従える暴虐の魔王と呼ばれた存在。テメェら如き、1秒かかんねぇぞ?』



剣を握る力が強くなるのが八城には見えた

それほどに怒っているのだろう。アリスのために



『――、逃げろ。絶対に捕まるなよ!』



夜斗はその大剣を構えて、威圧をかけている

そこで八城の意識が途切れ、また本棚の前に戻った



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