三月二十七日 1313 くめじまとなおしま

 つい先程まで俺の本体だった艇の番号が無骨な灰色のペンキで塗りつぶされていく。岸についていない方の番号と艦尾の名前は作業艇がやって来て消してくれているのだが、他の船の波に揺られて俺が思っていたよりも大変そうだ。そんな様子を見物しながら、ふと背後が気になった。振り返れば見たことのある艇の陰が一つこちらに向かってきているではないか。艇といっても作業艇よりもふた周りは大きな艇だ。そして入港ともなれば通りかかる遊覧船よりも大きな波が立つ。

「なんで今?」

波の動揺が小さな作業艇に伝わりローラーが先程よりもあらぬ方へ行くことが増えた。

「なあ、あと二十分遅らせなかったか? なお?」

二本煙突の四番艇に言葉をかければ、俺よりも小柄な【艦霊ふなだま】が気まずそうにはにかんでいた。

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