花より団子 つのしまとましゅう

 旧海軍の時代からあるこの補助艦艇の家の庭には花が咲く。春には桜にチューリップ、夏には沙羅双樹にヒマワリ、秋にはコスモス、冬には椿が庭に彩を添える。そうして今は残暑の陽光を浴び先日まで鮮やかな黄色を纏っていたヒマワリが、茶色に色あせ下を向いている。種を収穫できる日も近いだろう。

「なあ、【ましゅう】」

「なに?」

いつの間にか俺の横に立っていた男、掃海艇【つのしま】がヒマワリを熱心に見つめている。

「ひまわりの種ってうまいよな」

機雷きらい艦艇って皆同じことしか言わないのか?」

そう、この男だけではないのだ。激務の間を縫って慈しんだ花を不埒な目で見る機雷艦艇の多いこと多いこと。さすが掃海のできるゴロツキは七〇年以上たった今でもゴロツキのままである。

「お前らの酒のアテじゃないからな」

「そっかー」

一応釘は挿しておくがきっと効果は無いに等しいだろう。【つのしま】は気にした風もなく軽い返事を残し、これまた軽い足取りで帰っていった。

「この害獣め……」

毒づいたところでこいつらはまたやって来る。そう、行儀の悪いネズミのように。

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