ソロ活動

月夜桜

ハルとの出会い

 これは、僕がハルと出会う前の話である。


「くぁ……ん。眠い。けど、頭はよく回るんだよなぁ」


 カタカタとタイピングの心地よい音が静かな部屋に鳴り響く。

 まぁ、それもそのはず。僕のキーボードは青軸だからね。


「えーっと、今は……2,300文字か。この辺で話を締めないと読みにくくなるな」


 締める場所を仮に決め、推敲を始める。

 うーん。うーん。ここ、もっといい表現があると思うんだけどなぁ……。

 むぅ……詰まった。

 こういう時はSNSでエゴサするに限る。


 ん? ……えっ、これ、もしかして、ファンアート……?

 うそっ、マジか。初めて貰った……。

 えっとえっと、こういう時は──


『ハルミヤ様、ふぁ、ファンアートありがとうございますっっっ!!ヽ(´Д`;)ノヽ(´Д`;)ノ とても可愛いミツキちゃんですね! えっと、ファンアートを貰ったのが初めてなので、どうすればいいのか分からないのですが……そうですね。近況報告にて紹介してもよろしいでしょうか?』


 送信っと。

 ……ファンアート。ファンアートかぁ……どうしよう。ものすごく嬉しい。ソロで執筆活動してきた中で、一番嬉しいかもしれない。

 あっ、そうだ、お礼も兼ねてSSを書こう。

 ミツキと主人公が街中デートするお話は本編でも書いてなかったはずだし……これを書こう。


『つ、ツキヨミ先生が反応してくれた……っ。えっと、近況報告の件、構いません。寧ろ、ありがとうございます』


 気が付けば、そんな返信が返って来ていた。

 いいねを付けて、執筆再開っと。

 さぁ、書き上げるぞ~!


 ☆★☆★☆


 その後、初めてファンアートを描いてくれた人は、毎日の様に違う子達のイラストを描いてくれた。その人の他にも、徐々にファンアートをくれる人が増えてきた。

 まぁ、その度に僕は紹介とSSを書いたわけだ。

 ソロ活動の利点としてはこういう所があるのだと思う。

 全てを自分で管理しているから、ファンにお返しをしやすい。僕は、ファンがいるからこそ、執筆を続けられる。

 だからこそ、ファンに寄り添ってファンのことを第一に考えるのだ。


 一通のメールが届いたことを報せるイベントログがポップアップする。

 えーっと、このアカウントは仕事用か。

 内容は──


『ご無沙汰しております、ハルミヤです。ツキヨミ先生に折り入ってお願いしたいことがございます──』


 ふむ? いつもファンアートをくれる人だね。

 なになに。


『私を、ツキヨミ先生の兼アシスタントとして、雇っていただけないでしょうか?──』


 アシスタント、イラストレーター、ね。

 うーん。……アシスタントは、いい。だけど。

 ……うーん。取り敢えず。


『アシスタント兼イラストレーターの件、承知いたしました。アシスタントの申し出、とても嬉しく思います。契約に関しまして、法律等と照らし合わし、契約書を作成いたしますのでしばらくお待ちいただければと思います。また、イラストレーターの件ですが、こちらに関しまして、その都度依頼書を発行する形で描いていただくことは出来ますでしょうか? 返信、お待ちしております』


 うん、出来れば断って欲しいなぁ。

 さて、契約書を書く準備をしなきゃ。

 っと、……はや。もう返信が来た。


『早速の返信、ありがとうございます。アシスタントに関しましては、念の為契約書を確認してからとしたいと思います。また、イラストレーターの件に関しまして、こちらこそ、よろしくお願いします!』

『はい! こちらこそよろしくお願いしますっ!! 早速ですが、イラストの依頼書を書かせていただきます。失礼になりますが、以下のシチュエーションの場合、作成にはどのくらい掛かりますでしょうか?』


 こうして話を詰めていく。

 決まったこととしては、月50万契約でアシスタントをしてもらうことになった。

 これから、僕はこの人とファン達と一緒に作品を作り上げていくのか。


 これが、僕がソロ活動を辞めた経緯であり、ハルとの出会いであった。

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ソロ活動 月夜桜 @sakura_tuskiyo

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