第76話琴葉のクラスメイト

「ふんふふんふふ〜ん♪」


「そ、そんなに授業参観が楽しみなのか…?」


「うんっ!」


 俺なんて小学生の時の授業参観なんて本当に嫌でしかなかったのにな…

 まぁ授業参観の前に学校そのものがあんまり好きじゃなかったんだけどな…


「…あっ、お兄ちゃんちょっと言っときたいことあるんだけど」


「ん?」


「誰かに言い寄られても、口説かれないでね」


「は?は、はぁ…」


 なんの心配だ、今まで顔がかっこいいなんて言われたこと…高校に入ってから女子に言われたことはあるけどそれは真冬と付き合ってるからというフィルターも入ってるだろうからな…

 その点今から行くのは授業参観だ、そんなフィルターもない。

 それから約20分ほど歩いて、ようやく琴葉の学校に着いた。

 俺の学校は家から15分ぐらいだから琴葉の学校は体感的に距離が遠く感じるな─────って!


「えっ!?こ、ここが学校…!?」


「そうだけど?」


「ひ、広すぎるだろ…」


 なんだこの広さ、パッと見た感じ遊園地─────は盛りに盛りすぎてるけど普通の学校の4倍ぐらいはある。


「あっ!琴葉ちゃんおはよー!」


「おはよー」


 うわぁ…登校してる時に友達から声をかけられるなんて夢イベントだな…


「隣の人誰〜?結構かっこいいね!でもなんで私服?」


「今日授業参観だから来てもらったの」


「…えっ!?もしかして琴葉ちゃんのお兄さん!?」


 そう言って1人の女生徒が俺に近づいてくる。


「どうりでかっこいいと思ったぁ〜、あ!お兄さんっ!いつも琴葉ちゃんから話は聞いてますっ!」


「えっ、ああ、どうも…」


 俺にこんなぐいぐい来られても困る。それに、勘違いするな…

 女子高生のかっこいいは社交辞令だ、勘違いするな、俺…!って。


「え、琴葉から聞いてるって…何を?」


「もちろんお兄さんのことです」


「へ、へぇ〜…どんな風に聞いてるんだ?」


「かっこよくて性格が良いとか、他には好きな食べ物髪型、嫌いな調味料洗剤とかをいっつも琴葉ちゃんがみんなに話してるんですっ!」


 琴葉!!!!!

 え、ちょ、は?待て待て、意味がわからない

 まずかっこよくて性格が良いとかハードル上げすぎな上に好きな食べ物と髪型を俺と全く関係ない人になんで教えてるのかも不明、そしてさらには俺自身すら知らない嫌いな調味料と洗剤もみんなに話してるのかっ!?


「ほら、かっこいいでしょ?」


「羨ましいなぁ〜私もこんな彼氏欲しいー」


「えへへっ、だーめ、お兄ちゃんは私のなんだから」


「…え?」


 俺は琴葉に近づいて少し耳打ちする。


「な、なぁ、ちょっと聞きたいんだけど男子に告白される時なんて言って断ってるんだ?」


「え?私にはお兄ちゃんがいるから無理って言ってるけど?」


「……」


 えええええええええええ!!

 嘘だろ!?そんな言い方で断ったら間違いなく俺にヘイトが集まって恨まれてるだろ…最悪だ。


「お兄ちゃん、そろそろ教室行こ?」


「…あぁ」


 俺はこの後最悪なことになるんだなぁと予想して琴葉のクラスの教室に向かった。

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