第75話兄妹の風景
「─────ん!」
「─────ちゃん!」
「…ん?」
「起きてってばお兄ちゃん!」
「…え」
良い朝だ、日が差していて気温もちょうどいい。
なのに琴葉は一体何をそんなに怒ってるんだ?
時計を見ても、まだ時間は7時前だ。
「どうした?琴葉」
「どうしたじゃないよ!授・業・参・観!」
「あ、ああ、後で行くって、確か1限目からだったよな、その時にはちゃんと起きてるから─────」
「はぁ?何言ってるの!?一緒に登校するんだってば!」
「…え?」
「え、じゃないよ!」
先に琴葉が登校して授業を受けてるぐらいの時に俺も行ってぐらいだと思ってたのに…え、じゃあもしかして今から朝ごはんで着替えてってするのか…?
「か、勘弁してくれ、ちゃんと後で行くから────」
「嘘!大体お兄ちゃん私の学校の場所知らないでしょ?」
「うっ…で、でもそれは琴葉が地図なりなんなりで残してくれれば…」
「そんな手間かかることするぐらいなら一緒に行ったほうが早いの!もうっ!早く起きてよ!」
そう言って琴葉は俺の状態を無理やり起こさせる。
「あ、あぁ…わ、わかった、わかったって…」
まさかこんな時間から活動するなんて思ってなかったから昨日は少しだけ夜更かししてしまっている。
そのためまだ少し眠いため俺の体の動きは鈍い。
「お兄ちゃん、これ以上寝ぼけるつもりなら…」
「ん、ん?いや、寝ぼけてない!」
あ、危ない危ない、過去琴葉を怒らせて携帯用ゲーム機を壊されて泣いた覚えがある。琴葉は怒らせてはいけない…
「はい!もうご飯作ってるから食べてね!」
「わかった」
そう言って俺の部屋から琴葉が出た後、俺は着替えてからリビングに行くとすでに琴葉が作ったという料理がテーブルの上に並べられていた。
「…っ!お兄ちゃん!」
「ど、どうした…!?」
「その服!」
「ふ、服…?な、何か変か…?」
別に普通に着てるはずなんだけどな…まぁ琴葉レベルの女子高生の価値観とほとんど1人の俺の価値観を合わせてはいけないな。
「それ私とこの前買い物に行った時に買った黒のハーフコートの服だよね!」
「えっ?あ、あー、そうだな、うん」
「嬉しいー!私のために選んでくれたのっ!?」
「えっ、あー、そ、そうだ」
実際はなんとなくで選んだだけだったけど…ここで本当のことを言っても雰囲気が悪くなるだけだし、こういうのは合わせておこう。
「…嘘つくならもうちょっと上手く嘘ついてよ」
「…なんかごめん」
「あ〜、でもやっぱりそういうのは嬉しいなぁー」
「そ、そうか…?」
俺は…仮に俺がマユに買った服をマユが着てくれてたら…まぁ嬉しいな。
「もーお兄ちゃん全然女心わかってないよ〜」
「わかってる!」
「え?どの口が言ってるの?」
「…すいません」
せっかく良い雰囲気を保とうと嘘までついたのに、結局なんとも言えない空気となってしまった…優しい嘘でも見抜かれてしまえばただの嘘と変わないってことなのか…
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