第30話真冬の嫉妬
私は自分の家に帰って、自分の部屋に入ると同時に、部屋に置いてあったバウンスボールを全力で壁に向かって投げた。
「ああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!」
私が投げたバウンスボールは部屋の四面の壁を縦横無尽に跳ね回っている。
「誠くんの隣にいた女!なんなの!!」
反応を見る感じ付き合ってはないんだろうけど、あの女は少なからず誠くんに好意を抱いてる。誠くんは気づいてないけど、絶対にそう。
「ああああああああああああああああああああ!!!!!」
私がいない間にとうとう懸念してたことが…でもとりあえず真冬として連絡先を交換することができた。これは大きな進歩。あとはマユとして親睦を深めていく…
「誠くんに馴れ馴れしくして…!あのあのあのあのあのあの!!」
私の嗜好とは別に、私の口は冷静さを書いてずっと叫んでいる。私の部屋は誠くんとこの部屋で何をしても周りに音が聞こえないように、防音にしてある。
「大体!何が「じゃ、早く帰ろ〜」なの!?本来なら私が誠くんと帰ってるはずなのに〜!!私が今誠くんと一緒に帰れないことをいいことに〜!!」
「ああ、早くしないと誠くんがあの女に汚される〜!!」
私はすぐにVRを起動して、H・J・Oにログインした。すでにオンラインだった誠くんの元に向かった。
「マトくん〜!」
「あ、マ、マユ…」
誠…マトくんは気まずそうにしている。…そっか、そういえば現実で彼氏がいるのかっていう質問を濁したままだったね…
「そ、その…」
「ん…?」
本当はマトくんが何を言いたいのか気づいてたけどあれて気づいてないふりをした。あくまでもマトくんから言わせるために…
「マ、マユはリアルで彼氏いるのか…?」
マトくんが遠慮がちに聞いてきた。もうちょっと引き伸ばしていいかもだけど、そろそろマトくんが私に愛想をつかしちゃうかもしれないから本当の事を言う。
「もちろんいないよ!私の彼氏はマトくんだけ!」
本当は誠くんだけって言いたかったけど、マトくんとリアルでもちゃんと会えるぐらいまでの関係になれたら、その時は誠くんだって私とちゃんと付き合ってくれるはず。私と別れたって言うのは事実だけど、今ここにいるマユも事実だから。
「そ、そうか…」
「それがどうかしたの…?」
私はそーくんから安堵の言葉を聞きたかったため、そう質問した。
「いや…よ、良かったなって思って────」
「あっ!いたっ!マト〜!」
これからようやくマトくんが私に彼氏がいなくてよかったって言ってくれて、私が「そんなのマトくん以外にいるわけないよ!」って言ってもっと好感度を上げようとしていたのに、邪魔が入った。しかも女の声で。
振り返ると、そこには山賊から宝を奪うというクエスト中に会った赤髪の女がいた。なにマトくんの名前勝手に呼んでるの?
「あ、ユリ」
「えっ…」
ユリ?ユリって何?なんでマトくんがこいつの名前を知ってるの?
「……」
私は、この瞬間確信した。マトくん…誠くんから1日でも手綱を外してしまうと、すぐにでも他の女の誘惑に負け、浮気してしまうと。
そして、反省もした。マトくんが不安になる姿を見たかっから昨日は用事があるなんて言ってマトくんとゲームをしなかったけど…こんなことになるなら今後は絶対にマトくんを離さない。…そう、鎖に繋いででも────
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