第28話誠のリアル学校事情
その後俺たちは特になんなく適当な雑談をしながら、薬草を取ることに成功した。雑談と言っても、本当に雑な話で、例えばこの辺ざらざらしてるとか、山なのに花が生えてるとか、本当にそのレベルの話だ。
「今日は楽しかった!またねっ!」
「え、あ、ああ…」
話していくうちにちょっとは打ち解けられたような気がする。マユ以外とゲームをするのは新鮮だったため、色々と俺も楽しかったな。
ユリがログアウトすると同時に、俺もログアウトする。明日の夜からマユと一緒にゲームをすることになっている。
「…寝よう」
喋り慣れない人と話すと言うのは、俺のような人間には相当頭を使うので、何もせずに休むことにした。そして次の日…学校だ。
俺の学校事情といえば、特に面白いものは何もない。至って普通の高校生だ。強いて言うなら別のクラスに元カノの真冬がいるぐらいだけど、別れたばっかりの時は押しかけてきてたのに、別れてから1週間ぐらいして、いきなり押しかけて来なくなった。…その理由は未だに謎だ。
「まあ、とはいえ一年前」
真冬はモテる、多分今頃他の男子と付き合ってることだろう。
「ねえ」
「……」
それにしても、放課後に読むライトノベルは非常に面白い。人生の経験から書かれる実体験の小説とかは全然読みが進まないのに、ライトノベルはスムーズに読みが進む。
「ねえってば!」
俺は誰かにライトノベルを上に取り上げられた。
「何するんだ!」
「何するんだじゃないでしょ?声かけてるのに無視しないでくれる?」
「…え、あ、俺に声かけてたのか…?」
「それ以外誰がいんの?」
女子の声だったから真冬以外に女子と話すことなんて全然なかったし、声は真冬とは違ってたから俺じゃない誰かに話しかけてるんだと思ってしまった。
…そう、一年前の真冬の管理のせいで、俺は人間関係がだいぶ希薄だ。とはいえ、高校1年生の間に人間関係が作れなくたって、別に2年、3年生で作ればいいだけの話。グループが確立されてしまっていると言っても友達を作るのはそう難しいことじゃないだろう。じゃあなぜ俺がそれをしないのか…正解は先に述べた方法が俺には不可能だからだ。
俺は一年前に数ヶ月の間真冬と付き合っていたと言うことが周囲に知れ渡っていた。毎日一緒に帰ったりしてたらそれはバレてしまうのも無理はない。そして、俺は真冬に外でイチャイチャしないでほしいと頼んだが、「無理」の一言で返されてしまい、付き合っていることがバレるにまで至った。真冬は見た目も良く成績も全体的にかなり上位なため、非常にモテる。そのせいで俺は男子たちから恨まれている。
女子と友達になるなんてもっと難しい、だからこれは論外だ。
「…ねえ、何ぼーっとしてんの?」
「ぼ、ぼーっとなんてしてない…」
この人は…確か花龍院とかいう人だった気がするな。噂じゃちょっとお金持ちとか聞いたけど、正直あんまり興味はない。興味がないのに覚えてた理由は、この赤色のロングでおまけに胸も大きいからちょっと目立っていて覚えていたと言うことだけだ。
「まぁいいや、一緒に帰ろうよ」
「…は、は…?なんで」
この人となんて全く繋がりがない。強いて言うなら前図書室で俺が先に本を取ったにも関わらず本を取られて「これ私のね」とかって強引に奪われた思い出しかない。つまり関わり合いになりたくない。
「もしかして一緒に帰らないつもり?」
「ま、まあ…そのつもりだ」
「…へぇ〜、そう〜、じゃあね〜」
そう言って花龍院は帰ろうとする。
「ま、待て待て、本!本返せ!何しれっと俺の本を持っていってるんだ!」
「あ、これ…?ん〜、返して欲しかったらついてくれば〜?」
「は、はぁ!?」
そう言って花龍院は俺のライトノベルを閉じて、自分のバッグの中に入れた。
「お、おい!なんで閉じるんだよ!しおり挟んでなかったのに…!しかもかなりいいところだったのに!」
「はぁ…?知らないし、じゃあ新しいの買えば?」
そんな勿体ないことできないし、そもそもなんの解決にもなってない。
「いいから、そんなに返してほしいなら一緒に帰ろ?」
そう言って俺の腕を無理やり引っ張った。何もかも強引な人だな…そして俺はそのまま教室の外に連れられた。
「い、いいから本を返せ!それは俺の───」
「誠、くん…?」
「え……」
俺が左側を見てみると、そこには真冬がいた…
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