第23話マユの狂気
それから無事になんとか中間地点にまで来ることができた。そこで俺は、ちょっと気になっていたことを口にしてみた。
「なあ、マユ、気のせいだったら良いんだけど…」
「ん?どうしたの?」
口にしようかどうか迷ったけど、別に隠す意味もないし言うことにしよう。
「なんか、視線感じないか?」
「…視線?ここゲームの中だよ?」
「そ、それはそうなんだけど…」
マユの言っていることは最もだ、ここはゲームの中だから視線なんて感じない…はずなんだけど、ここ最近妙に視線を感じる。なんというか気味が悪い。こういうのを第六感とか言うのかもな。
「きゃああああああああああああああああああ」
「ちょっ、マユ!そんな大声出したら気付かれ───」
「私じゃないよ…!多分他の人」
マユが小声でそう言った。おかしいな、しっかりと2人で参加したから2人だけだと思うんだけど…もしかして途中参加可能的なやつなのか?
それにしたってこのクエストは俺たちのようなほとんどクエストに行っていない人、つまりはレベルが低い初心者が行くクエストだ。そうそう簡単に被ることなんてないと思うんだけど…実際に被ってるんだから何にも言えないか。
「とにかく助けに行こう!」
俺がそう進言すると、マユが俺の腕を引っ張った。
「な、なに?」
思わず聞くとマユが俺の目を直視しながら言った。
「今の、声的に女だよね」
「そ、それが…?」
思わず俺は視線を逸らす。
「なんで目逸らしてるの?ちゃんと目を合わせて話そうよ」
そう言ってマユは俺の顔を強引にマユの方に向かせた。あ、あれ、変だな、レベルはまだ同じぐらいだから抵抗できるはずなのに何故か体が動かない。
「話戻すけど…女を助けに行くの?」
「お、女っていうか…プ、プレイヤーの人を助けに───」
「女だよね?」
「性別だけ見ればそうかもしれないけどやっぱりこのゲームの醍醐味はオンラインで知らない人と協力し合うってことだと思うんだ、だから────」
「目の前に彼女がいるのに他の女を助けに行くの?」
「そ、それはそうだけど…ごめん!」
別に何かやましいことをしようと思ってるんじゃなくてただただ困ってる人を助けるだけだ、そこに彼女彼氏とかそう言うことは関係ないはず…!
そう思って俺はしゃがんでいた足をゆっくりと立ててダッシュでその声の方に向かっ───
「ちょっと待って、まだ話は終わってないよ?」
「ん”ん”ん”ん”んんんんぁぁぁぁぁぁ!!」
俺は咄嗟に何かで口を塞がれて右足を切断された。あくまでもゲームだから血の表現とかはリアルよりはグロさとかはなく、もちろん痛みも実際に足を切られた時よりは痛くないんだろうけど、やっぱり基本的に痛覚設定をオンにする人はそういう痛みとかにもリアル感を求めるからそれなりには痛い。
そして何より、足を失ったという事実が精神的に痛い。
「ん”ん”ん”ん”」
「…多少痛みはあっても現実にはなんの変化もないから、いいね」
もはやマユが何を言ってるのか痛みと精神面のせいでよくわからなかったけど、マユは俺のことをそっと地面に寝かせた。とはいえ、やはりゲームはゲーム。すぐに痛みも引いてきた。
俺は当然マユに抗議する。
「何するんだっ!」
「私がいるのに他の女のことなんて助けようとするからだよ」
`私以外の女のことなんて次に見たら、わかってるよね?`
「────っ」
真冬がフラッシュバックした。やっぱりどことなく似てる気がする。…いや、これが普通なのか?俺は真冬しか恋愛経験がなかったから物差しがなかったけど、普段は優しいマユですらこんな風になってしまうなら、真冬も普通だったのかもしれない。真冬も普段は優しかった。
「で、でも、一応助けた方が良いと思───」
「えっ、あんたたち何してんの?追いついちゃった…」
「…え?」
俺とマユが話し合っていると、後ろから全く知らない赤髪のポニーテールで何故か制服姿の女の子が現れた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます