第24話新たな出会い

「え、えーっと…誰だ?」


 ゲーム内の中でもわざわざ制服を着てるなんて…学生時代に何か未練でもある社会人の人、なのか…?


「うわっ、最悪…」


 出会って間もないのに最悪とか言われる俺の心境が虚しい。と、思ったけどどうやらその視線は俺に向けられたものではなく、マユに向けられたものだった。


「人の顔見て最悪って…それより私とマトくんはここでまだ話すことがあるから、先行って」


 俺としてはもう話すことはない!…そういえばこの足どうやったら治るんだ?そういう魔法とかアイテム的なやつがあるのかもしれないけど生憎俺はそんなものは持っていない。


「はぁ…?…あっ、足切れてるじゃん、大丈夫?」


 切れてるなんてレベルじゃない。切断されてる。


「大丈夫…じゃない、です」


 一応俺の中ではおそらくこの人は社会人だと予想してるから敬語で話しておこう。ネットでもやっぱり初対面なら礼儀は必要だ…多分。


「…はい、これあげる」


 そう言ってその赤髪ポニテの人は俺に草を手渡してきた。


「…え、何これ…」


「それ、食べて」


「はあ!?」


 例えここがゲームの中でもこんなもの食べられるわけがない。テレビゲームとかで気持ち悪い虫が出てきて実害が無いからといって近づきたく無いのと同じだ。しかもかなり精密なVRだからそれ以上だ。


「こんなのマトくんに食べさせられるわけないじゃん」


 マユが仲裁に入ってくれた。助かった…


「え、これ回復草だけど…?」


「「…え?」」


 俺とマユは同時に疑問の声を口にした。こ、これが回復アイテム…?どこにでもありそうな雑草にしか見えない。


「あぁ、もう、そんなに信用できないなら、それ返して」


「ああ、待って待って!食べる、食べます!」


 そう言って俺は受け取った草をやや強引に食べた。


「ど、どう…?」


 なぜか感想を聞いてきた。このゲームは一応嗅覚とか味覚とかもあったりする。けど…この草は味がしない。草の味なんて再現しなくてもいいって言う判断だと思うけど、それはナイス判断だ。

 食べてから少しして、切り落とされたはずの右足が復活していた。


「な、治った…!?」


 これは素直にすごいな。


「だから回復するって言ったでしょ?」


「ああ、ありがと───」


「わぁすごいありがとじゃあ早く進んでー」


 マユが俺のお礼の言葉を遮るように言った。


「あんたなんなの?さっきからその態度、ムカつくんだけど」


「は?マトくんとの時間を邪魔してきたのはそっちでしょ?」


 マユが食ってかかるように言った。これは明らかにマユが悪い。


「あ、ありがとうございました…」


「っていうかなんでマトくんさっきから敬語なの?こんな奴に敬意なんて払わなくていいって」


 こんなやつって…俺からしたら右足を復活させてくれた恩人なんだけどな…


「い、いい人そうだし、それに多分目上の人だと…」


「目上…?何言ってんの?同い年だよ?」


「同い年…?え、じゃあ高校生?っていうかなんで俺の年齢を知って───」


「あっ、ちょっと諸事情思い出したから」


 そう言ってその一つに括った髪の毛を揺らしながら走り去ってしまった。…なんだったんだ、俺たちの話し方とかで高校生だと思ったってことでいいのか…?でもそれにしたってなんで制服…まあいいか。


「マトくん」


「はいっ!」


「…ちょっと一回クエストリタイアしよっか」


「え、でも…」


 一応クエストリタイアという機能はあるのになんで今までそれをしなかったのか、それはお金が思いのほか持っていかれるからだ。

 クエストキャンセル料金とか言って初心者にはかなり厳しい値段の額を出してくる。


「も、もう半分地点まで来たんだしどうせなら───」


「ちょっとマトくんと人生相談しないといけないことがあるからね」


「じ、人生相談…?」


 なんだその嫌な予感しかしないことは。


「とにかく、一回抜けるよ」


 俺とマユはマユの提案によりクエストをリタイアした。…お金でかっこいい剣とか欲しかったなぁ…

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