第22話落とし穴

「…な、なんなんだこれ…」


 さっき遠くから見た限りだとよくわからなかったけど、この迷路人工的にできたやつじゃなくて天然でできたものらしい。丘や山道や急な坂などが入り口からでもよく見える。これは…歩きずらそうだ。


「歩きずらそうだね…」


「あ、ああ…」


 でもまあ戦うことができないような地形でもないし、なんとかなるか。


「ねえ、わかってるよね?戦わないことを前提にこのクエストしてるってこと忘れたらダメだからね?」


「わ、わかってるよ…」


「本当かな?男の子はすぐに戦いたがるから…はあ」


 マユは呆れるように言った。そんな偏見はやめろ…と思ったけど正直俺は戦いたい。この痛覚がオンの状態では本当に戦いたくないけどオフの状態ならいくらでも戦いたい。でも、これは俺の性別が男だからとかそんな理由じゃなくて、このゲームはそういうゲームだからだ。むしろMMOに来て戦闘をしないなんていう方がどうかしている。俺はおかしくない!


「と、とにかく敵に見つからないようにしたらいいんだよな」


「うん♪…あっ、そうだ、ちょっと試したいことがあるんだけどいいかな?」


「ん?なんだ?」


 そう言うとマユは何やら武器を取り出して、それを軽く俺の腕にかするぐらいに斬った。


「痛っ…何するんだ」


「あっ、クエスト中でフレンドでも痛いんだね、でもHPは減ってないから痛みだけなんだ〜」


 なるほど、それを試すために俺を試しに斬ったのか…ちょっとかするぐらいだから別にいいけど。


「ここはゲーム世界だし、HPが減らないなら死ぬことはないよね…なら死なない程度に…あ、ううん?なんでもないよ?」


 今かなり怖いことをぼやいてた気がするけど気のせいだよな?


「じゃあ、入ろうか」


 そしていよいよ迷路の中に入った。目的地がわかっているだけ今回のクエストはやりやすいかもしれない。俺たちはできるだけ真ん中に近づい───


「うわっ…!」


 曲がり角に落とし穴があった。そうか、こういう罠も当然あるのか。落とし穴とは…賊らしい感じだな。って、冷静に分析してる場合じゃない、痛みはそのままならだいぶ痛い…


「───っ!」


「っ…!」


 俺が落ちた瞬間にマユが上から手で繋ぎ止めてくれた。


「た、助かった…」


「えへへ…❤︎」


 マユが俺のことを引き上げてくれ───あれ?


「マ、マユ?引き上げて欲しいんだけど…」


 もしかして重くて持ち上げられないのか?そうなったら最悪武器を出してロッククライミングみたいにして登っていくしかないか…


「…今私が手を放したら死なないにしてもマトくんはとても痛がるよね…?」


「え?ま、まあ、それは…」


 マユは何が言いたいんだ?


「つまり、今私がマトくんのことを支配してるってことだよね?」


「……」


「な〜んてね♪冗談だよー」


 そういうとマユは俺のことを地面に引き上げてくれた。驚かさないでくれ、真冬のことを思い出してしまった。


「早く行くよー♪」


 今度はマユが俺の前を先導してくれた。

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