第10話琴葉と買い物

「で、そんな私の愛おしいお兄ちゃんが今日は早起きなのはなんで?」


「ああ、そうそう、ちょっと服でも買いに行こうかと…」


「服?珍しいね、普段そんなの買わないじゃん」


 俺の妹ながら失礼なやつだ。俺だって自分の身なりには気をつけ──てるのかはわからないけどとにかくそんな失礼なことを言う妹には兄としてお仕置きしてやらないといけない。


「今日のプリンは没収だ!」


「ええ…なんでー?」


「兄を愚弄した罰だ」


「そんなあ…じゃあせめて買い物にはついて行ってもいい?」


「ん?別にいいけど?」


「ほんと!?やったあっ」


 な、なんでこんなに喜んでるんだ?他人の…それも彼氏とかじゃなくて兄の買い物なんて高校生にもなったら普通は行きたくないと思うんだけど…


「でも本当になんで服なんか買うの?」


「ああ、そ、それが、実は…」


 と、俺は照れながら彼女について話した。琴葉はラノベみたいな感じで別に俺の恋愛を邪魔してきたりしない。むしろ喜んで応援してくれる。でもその相手がもしも琴葉のお眼鏡に叶わなかったら全力で邪魔してくる。

 実際元カノの時は本当に酷かった。だからマユが元カノと似たような感じじゃないことを願う…


「へえ!そうなんだ!相手の人はどんな人なの?」


「えっ?うん、良い人だと…思う」


「えー、何その曖昧な感じー、しかも前もそんなこと言っていざ会ってみたら超やばい人だったじゃん。また騙されたりしてるんじゃない?」


「いや、別に前だって騙されてたわけじゃ…」


 いや、過去とはもうケジメをつけよう。明日は過去とけじめをつける意味でも大事な日なんだ。そのためにも、もう元カノのことは忘れる!


「と、とにかく、服を買いに行くから琴葉もアドバイスを──」


「言われなくたってもちろん!」


 そして俺たちは謎に服屋さんが密集している場所に行き、服を買ってみることにした。


「んー、どれにしよう…なあ琴葉、今時の流行りとかないのか?」


「えー、流行り?んー…」


 そういうと、琴葉は手で四角の枠を作りシャッターチャンスとでも言わんばかりにその枠に俺をはめた。


「な、何してるんだ?」


「今頭の中でお兄ちゃんに似合いそうな服をお兄ちゃんに着せてるからちょっと黙ってて?」


「…はい」


 集中すると琴葉は怖くなることがあるのでだいぶ怖い。そして俺は被写体のようにじっと動かないようにし、しばらくしてようやく琴葉は手の枠を崩しどこかに行き俺のところに黒色のハーフコートの服を持ってきた。


「はい、これ似合うと思うよ」


「そ、そうか?あ、ありがとう」


 琴葉は花のJKだから服のセンスとかはかなりいい。そんなJKから服をチョイスしてもらえるなんて俺は恵まれてるな。

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