6、凛子と3姉妹

第23話 凛子の不登校と3姉妹と春木と

夢色、姫が俺達の元に集合した。

そして俺と3姉妹は凛子を見つめる。

凛子は俺達に久々だからと飲み物を買ってくれた。

申し訳無い感じだ。


授賞式が終わってから俺達は外にある椅子に腰掛けてその飲み物を飲む。

凛子は3姉妹を見ながら目をかなり丸くしている。

そして笑みを浮かべながら、本当に3姉妹なんだ、と見る。


それから、良いなぁ、とニコニコする。

しかし夢色と姫はそんな気分では無い様だった。

何故かって?それは簡単だ。


「お兄ちゃん。また女の子だね。女の子の知り合い多いね。アハハ」


「.....お兄。また女の子」


「.....お前ら。今はそれは失礼だって」


すると凛子が、モテモテだねぇ、とニヤニヤしながら両腕で頬杖をついた。

凛子に事情は話している。

つまり俺と有栖が付き合ってない事を、だ。

仮のデートだった事も。


「でもね。お3人かた。私とはっくんはそんな関係じゃ無いよ。アハハ」


「そ、そうだな。俺達は友人みたいな関係だし.....」


「え?そうなの?お兄」


「.....ああ。恋愛感情とかは無い」


ホッとする3人。

俺は、オイオイ、と思いながらその姿を苦笑いで見る。

すると凛子が、でもこんなに美少女たちに囲まれて幸せ者だね君、と凛子はニタニタし始めた。


俺は、まあな、と笑みを溢す。

凛子はその姿に、あ。そう言えば奈々ちゃんは元気なの?、と聞いてくる。

その言葉に、まあバリバリ元気だよ、と答えた。


「うーん。そっか。良かった良かった。あんな別れ方をしたからね」


「.....まあな」


「.....え?何の話?お兄ちゃん」


「そうだな。.....俺と凛子と奈々の別れ方だよ。転校したんだよな凛子は。その別れ方が結構.....複雑なあれでな」


「.....?」


有栖は俺に?を浮かべながら目線だけ動かして見てくる。

知りたい様だった。

俺はその感じに、なんつうか母親が追いやったんだよ。凛子を邪魔だから県外にな、と答える。


そして自嘲気味に笑った。

最低な真似を.....凛子にはしたんだ、と。

すると複雑な顔をしていた3姉妹に向いてから。

俺を見てから真剣な顔をする凛子。


「はっくん」


「.....何だ?凛子」


「最低じゃ無いから。はっくん悪くないから」


「.....お前は何時もそう言うよな。フォローが上手いっつーか」


「だってはっくんは全く悪くない。貴方の母親が悪いんだから」


でもその母親と別れて.....今は別の道を歩んでいる。

その事を話してくれて有難うね。はっくん、と俺に向いてくる凛子。

そして言っちゃ悪いが祖母の様な笑みを浮かべる。

相変わらず、まったりだな、と思う。


「凛子さん」


「.....ん?姫ちゃんだっけ?何」


「.....お兄ちゃんはどういう人ですか」


「.....んー。.....まあ簡単に言えばえっちな人」


飲み物をぶひゃっと噴き出してしまった。

このアホは何を言っているんだ。

姫と夢色と有栖のみんなが赤面で固まる。

俺は睨みを効かせつつ凛子を見つめる。

凛子は、まあ冗談だよ、と笑顔を浮かべた。


「冗談にはキツイ。勘弁してくれ」


「アハハ。ゴメンゴメン。ゴメリンコ」


「.....いちいちギャグが古いんだよお前は.....」


「まあまあ。御免って」


「.....まあ良いけど」


それにしてもお前.....今日は高校とか学校休んでから授賞式来たのか?、と聞く。

すると凛子は、いいや。私学校行ってない、と答える。

え?、ってか。

は?!


「私ね。不登校になったの」


「.....え.....オイ。マジか」


「.....私の額って傷が有るじゃん?大きな。だから嫌なの。馬鹿にされて。前の学校では上手くいっていたのにね」


「確かに十字の様な傷が額の右の方にお前は有るな。.....だけど.....そんな事に.....そうだったのか」


すると夢色がジュースを飲む手を止めてから凛子に向く。

私もふとうこう、です、と言葉を発した。

俺達は驚く。

そして夢色は、髪色でばかにされます、と話した。


「.....夢色ちゃん.....」


「.....でもへいきなんです。.....お兄が私を認めてくれたから。髪色もみんな認めてくれた優しいお兄が居るから。凛子さんのきもちとっても分かる」


「.....そうなんだね。居場所を見つけたんだね。君は」


私はまだ見つからないね、と答える凛子。

そして髪の毛を上げた凛子。

そこには.....バツ印の様な傷が10センチに渡って有った。


それを隠す為に凛子は髪留めを着けて隠しているのだが、だ。

夢色と姫と有栖は、ショックを受けた様な悲しげな顔になっていく。

それを凛子は首を振って否定した。


「そんなに悲しい顔しないで。.....私は学校にただ単に馴染めないだけだから」


「.....でもそうであっても.....イジメって最低だと思います」


「.....姫.....」


「.....私もイジメを受けていますけど.....分からない事ばっかりです」


「姫ちゃんもイジメを受けているんだね」


悲しげな顔をする凛子。

その姿を見ながら、でも私もお兄ちゃんが助けてくれています、と意を決する。

凛子は、そうなんだ、と笑みを浮かべる。

その姿に、はい、と姫は頷いた。


「.....君は本当に昔から変わらないね。はっくん」


「.....当初はコイツらを一切助けるつもりも無かった。.....だけど家族の絆が深まってからは違ったんだ」


「.....君も大切なものを見つけたんだね。そして君を守ってくれる人達に出会ったんだね」


「.....凛子.....」


するといきなり、そうだ!、と手を叩いて笑顔を見せた夢色。

驚く俺達は?を浮かべながら見ていると。

凛子さんとお友達になろうよ!みんなで、と提案してきた。

俺は目を丸くする。

一番驚いていたのは凛子だった。


「.....え.....良いの?」


「.....あたりまえです。.....だって凛子さんはお兄のお友達だから。.....だったら私達のお友達です!」


「.....」


涙を浮かべた凛子。

それから、あれ?おかしいな、と涙を流しはじめる。

俺はその姿を見ながら。

有栖と姫と夢色に向いた。

姫と有栖はスマホを取り出しながら、取り合えず住所とかメルアドとか交換しましょう!、と姫が笑顔を浮かべる。


「.....優しいね」


「当たり前の事をしているだけです」


「.....だそうだ。良かったな。凛子」


「こんなに優しくされたのは.....1年ぶりぐらいかな。嬉しいな」


そして凛子は.....有栖と姫と。

それぞれメルアドとかを交換してから満面の笑顔を浮かべた。

そういえば当初の目的がなされてない様な?

考えながら俺は凛子を見つめる。


「そして当然、はっくん。君のメルアドと電話番号も」


「.....お。おう」


「はっくん。絵はずっと描きなさい。昔の事があっても君は天才なんだから。だから絵の練習でたまに呼び出すね」


「いやいや。だから俺は絵は.....」


そこまで言ってから夢色が目をキラキラさせた。

そして俺を見てくる。

期待の眼差しで、である。


また絵を描いてくれるんだ、的な感じだ。

俺は顔を引き攣らせながら.....周りを見つめる。

みんな俺に期待している。

それに対して盛大に溜息を俺は吐いた。


「分かったよ!.....やれば良いんだろ.....」


「流石ははっくんだね」


「お前な!俺は絶対に絵は描けないって言ったのに」


「.....でもね。はっくん」


また真剣な顔になる凛子。

それから俺に柔和に笑みを浮かべた。

そして俺の手を握る。

君の絵が私の絵を進化させていたんだよ、と。

そう言葉を発した。


「.....私は悲しいから。.....母親のせいで絵を描かないなんて。それは嫌だ」


「.....お前.....」


「絵を描けなくなったのはたったそれだけだよね。それで好きな事を辞めるのかな君は。.....君は絵は諦めてない筈。だから描けるよ。君ならまた」


「.....凛子.....」


だから筆を持って。

と凛子と3姉妹は笑みを浮かべて見てくる。

君はもう一人じゃ無いんだからね。

そう凛子は言葉を紡いだ。

私達が居るから、と。


「そうだよ。お兄」


「私も居るから」


「そうだね!私も!」


「.....全くな.....」


コイツら本当に良い加減にしろよ。

そんなに言われたら絵を描きたくなってくるだろ。

ただでさえ見ているだけで気分が悪くなっていたキャンバスに絵を、だ。

俺は頭を掻きながら手を見る。

そこに.....見えない筆がある気がした。


君はもう一人じゃ無い、か。


俺はその言葉に空を見上げる。

そして.....4人を見た。

取り敢えずは少しだけでも描いてみる、と言う。

それから凛子に向いた。


「有難うな。凛子」


「.....殆ど何もしてないよ。.....3姉妹ちゃんのお陰だよ」


「.....そうは言うけどな。お前のお陰もある」


「.....そっか。.....有難うね。はっくん」


また笑みを浮かべる凛子。

そして俺は.....その日、また絵を描く事を決意した。


今はまだ気分が本当に悪くて色彩も何も考えられない。

だけど.....絵コンテぐらいなら描ける気がした。

母さんの事は忘れよう。

そう、思った。

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