第19話 よし、遊園地に行こう
先が見えない。
だけど.....姫はその事で死ぬ事を止めてくれた。
俺は.....その事だけでも良かったと思う。
帰って来てから情報を聞いた有栖と洋子さんが抱き合って号泣した。
親父も唇を噛んでいる。
会社を早く退社してやって来た様だった。
俺はその姿を見ながら.....空を見上げる。
そうしていると泣いていた夢色が俺の袖を掴んだ。
奈々も泣いている中で、だ。
「.....お兄。有難う」
「.....何がだ」
「.....姫お姉ちゃんが死んだら私達は居なかった。私達もじさつしていた。だからお兄が.....居なかったら怖かった」
「俺は止めただけだよ。.....姫は今も悩んでいる。だからどうしようかって」
「.....でもそれでも。お兄だい好き」
そして俺をギュッと抱きしめてくる夢色。
俺はその姿に久々の笑みを浮かべてから夢色の頭に手を添える。
すると親父がやって来た。
ニカッとしながら、だ。
「流石だ。我が息子よ」
「.....まあね。っていうか俺はサボっただけだよ。学校を」
「人生の中では道から外れる事も必要だ。お前はそれをやり遂げた。だから.....有難うと言っておく。頭を下げさせてくれ。何時も有難う」
それから親父は頭をゆっくり下げた。
本当に深く、だ。
俺はそれを見ながら、俺がしたい事をやっただけだから、と親父に苦笑する。
すると最後に姫がやって来た。
「.....」
「.....どうした?姫」
「えっとね。しゃがんで。お兄ちゃん」
「.....?.....しゃがんでどうするんだ」
「良いから。早くしゃがんで」
俺は?を浮かべたまま。
言われた通り膝を曲げた瞬間。
頬にそのまま優しくキスをされた。
ふぁ!?、と思いつつ頬を抑えて姫を見る。
姫は赤面で俺に笑顔ではにかんでいた。
「お兄ちゃん。.....心から好きだよ」
「.....」
「.....」
「.....」
まさかだなアッハッハ!!!!!、と親父が爆笑する。
洋子さんが、まっ!、と口元に手を添えて見る。
しかしそれ以上に遥かに凍てつく視線が俺を包んだ。
全員、眉を顰めている。
姫と俺以外、だ。
「いい加減にしろ。姫。.....お前。本格的に殺されるぞ」
「良いよ。お兄ちゃんと一緒なら殺されても。アハハ」
「冗談に聞こえない!!!!!」
すると有栖が、アンタ.....最低、と呟いた。
そしてその中で奈々は、アッハッハ!はるちゃんモテモテぇ!、と威圧のある声で言葉を発した。
それから夢色は、お兄.....うわきもの、と回答する。
俺なんでこんな目に遭っているの?
「.....おっと。それはそうだった。みんな」
と親父が声を発する。
それからまたニカッとした。
俺は首を傾げながら親父を見る。
この後は予定無いよな?みんな、と言う。
ん?
「車で出掛けようじゃないか。姫ちゃんの息抜きの意味でも。どうせみんな仕事が無いんだから」
「いや。親のする事か親父それは.....」
「良いじゃないか!アッハッハ!言ったろ?人生ではたがが外れるのも大切だ、と」
「もー。基樹さん。.....でもそれもたまには良いかもですね。アハハ」
そして俺達は。
その事件のあった日、遊園地に遊びに行く事になった。
親父の運転する車に乗って、だ。
因みに奈々は、ごめんね。家の事が気になる、と帰った。
俺はそれを見送ってから俺と洋子さん、親父と3姉妹と遊園地に向かう。
因みに学校からの連絡もあったが親父は無視した。
ええんかそれで.....。
☆
「ゆうえんちとか3年ぶりぐらい」
「私は5年ぶりね」
「私は3年ぶりだよ!同じく」
「うーん。俺は行った事ねぇな」
えー。お兄ちゃん(お兄)行った事無いの、と呆れた顔で姫と夢色が見てくる。
仕方が無いだろう。
俺はリア充じゃ無いんだから、と思いつつ夢色と姫を見る。
有栖に至っては、アンタ何の為に人間として生まれて来たのかしら、とか呟いているのだが。
いやいや!最低だなお前!!!!!
「アッハッハ。.....まあ春木は連れて行けなかったからな。色々あったしな」
「そうだな。親父」
すると、じゃあ私が遊園地案内してあげる!、と姫が俺の腕に自らの腕を絡ませてから俺を見上げてくる。
するとその横に座っていた夢色が、姫お姉ちゃん!よこどりしないで!、と頬を大きくしながら腕を絡ませてくる。
俺は苦笑い。
有栖は、モテモテね。アンタ、と呟く。
「でもお姉ちゃんも嫉妬しているんでしょ?それでも」
「ハァ!?違うわよ!姫!」
「またまたぁ。そんな倦厭していると私が取っちゃうよ?お兄ちゃん」
「.....マジで?」
「違うから!!!!!勘違いしないの!春木!」
真っ赤になりながら俺に否定の言葉を発する有栖。
そんな感じで言い争う俺達。
そうしていると、貴方達。着いたわよ。遊園地。
と助手席に居る洋子さんが笑顔を浮かべた。
俺達は外を見てみる。
「わー!ゆうえんち着いたね!」
「.....そうだな。着いたな。夢色」
「え?嬉しくないの?お兄」
「嬉しいとかそんなんじゃないよ。だって俺高校生だしな」
「いや、逆に普通の現代の高校生だったら喜ぶんじゃないの。アンタ」
有栖は眉を顰めて?を浮かべる。
そんなもんかねぇ。
良く分からないけど、と考えながら車は駐車場に入車した。
俺はそれを見ながら.....母親の事をふと思い出す。
アイツは.....俺をこんな場所に連れて来てはくれなかったしな、と。
思いつつ俺は頬杖を突くのを止めながら。
3姉妹を笑みを浮かべてみた。
「よっしゃ。楽しむぞ。今日は」
「そうね。姫の為に」
「そうだね!」
「.....有難う。.....みんな。こんな私の為に」
恥ずかしがりながら苦笑する姫。
姫はまだ複雑な感じを浮かべるが。
俺達はとにかく全力で楽しませよう。
そう考えつつ姫の手を握った優しくゆっくり握った。
姫は.....笑顔で俺を見てくる。
「どうしたの?お兄ちゃん」
「.....お前が死ななくてよかった。そう考えている」
「.....!.....」
「.....そうだよ。姫。死なない事が私達の生きがいだよ」
「.....お姉ちゃん.....」
有栖も笑みを浮かべる。
そして夢色も、みんなも、だ。
姫は涙を浮かべてから.....そのまま、うん、と頷いた。
絶望はまだ計り知れない。
しかし俺達なら。
きっと。
乗り越えられる筈だ、と思った。
そう。
姫の為に、だ。
考えながら俺は真剣な顔をして拳を握り締めた。
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