第17話 居なくなった姫

加藤と鈴木のクソッタレに絡まれたが。

奈々の所属している野球部だっけか。

その野球部の主将が加藤と鈴木を威圧して俺を助けてくれた。


何というかその.....俺と奈々の噂で持ちきりの様だが。

告白の、だ。

勘弁してくれ.....。


「君達は面白い存在だね」


「.....何も面白く無いです.....」


「そんな事言うんだ?はるちゃん。ふーん.....」


「いやいや。お前よ.....真面目に勘弁してくれよ」


俺達は階段を登りながら.....そんな会話をする。

その中で姫の事を考えた。

夢色に電話したら、大丈夫そうだ、と返事があり。

取り敢えず俺は.....安心した。

だけど油断は出来ない。


「はるちゃん」


「!.....な、何だ」


「.....どうしたの?本当にそんな深刻な顔をして」


「.....何も。気にすんな。そういう日もあるんだよ。俺は。昔からそうだったろ?」


「.....あのお母さんの事.....だよね。最低だと思うから思い出したく無いかな」


少しだけ眉を顰めてから奈々はかなりの怒った様な顔になる。

それは簡単に言うとマジな感じで豹変した。

その様子を俺は、だな、と複雑に感じながら目線だけ動かす。

すると友崎先輩が俺と奈々を見てから複雑そうな顔をした。

俺と同じ様な、だ。


「君達も相当な人生を歩んでいるんだな」


「.....君達.....も?.....それは友崎先輩もですか?」


「俺は祖父が厳しくてね。それから交通事故で死んで両親が居ないんだ。.....それでビシバシと厳しくてね。.....嫌では無かったけど何と言うか.....厳しいよ」


「.....友崎先輩.....」


「.....」


奈々は驚愕した様な眼差しで友崎先輩を見る。

友崎先輩は、八島。君も田中も良い子だと思う。俺は羨ましい。心から支えてくれる女の子が君の側に居るのだからな、と友崎先輩は笑みを浮かべる。

俺はその姿に、大変な人生を歩んでいるのですね、と答える。


「大変だけど毎日は充実している気がするよ」


「そう思えるのが羨ましいです。でもモテるんじゃ無いですか?友崎先輩って」


「それは勘違いだ。野球部の主将だからモテる時代はとっくに通り越したのさ。それにモテるからと田中の様な良い子は.....居ないよ。分かるかな」


「.....友崎先輩.....確かにその通りです」


そして2階に上がってから友崎先輩は指を差す。

すまないが俺はこっちだから、と言葉を柔和にそのまま発する。

俺はその姿に、はい、と答える。

奈々と共に頷きながら、だ。


「.....また後でな。田中」


「はい。友崎先輩」


「君もな。モテモテ君」


「その異名は止めてほしいっす.....」


ハッハッハ、と笑顔で去って行く友崎先輩を見送ってから。

俺達は顔を見合わせて苦笑いを浮かべる。

そして.....そのまま上の階に上がろうとした。


もう少ししたらチャイムが鳴る。

ホームルームだな。

するとスマホに電話が掛かってきた。


俺は?を浮かべて電話を見つめる。

まさか.....、と思う。

それは夢色だったから、だ。

俺は電話に出る。


『助けて.....お兄。.....姫お姉ちゃんが居なくなった.....何時のまにか』


「.....マジかよ.....!!!!!」


俺は愕然とした。

その感じに、どうしたの!?、と奈々が心配げに見てくる。

俺は歯を食いしばってからそのまま奈々を見る。


今から学校を飛び出したら相当な感じになりそうだが。

だけど。

姫を放って置けない!

学校の授業なんてそんなもんはどうだって良い。


「ちょ、ちょっと何処に行くの!はるちゃん!」


「体調悪くなったから帰る!!!!!」


「そんな!?.....じゃあ私も帰る!!!!!」


「ハァ!?アホかお前!?」


何を言ってやがる!

お前は何の関係も無いだろ!、と俺は叫びながら階段を降りる。

だが奈々は、そうやってまた私を除け者にするの!?嫌だ!、と駆け出して来た。

マジかコイツ!


「大体!はるちゃん何か隠しているでしょ!それも気に入らない!私達どんだけ一緒だと思っているの!?何の為に幼馴染って居るの!?」


「良い加減にしろ!お前は学校の授業を受けろ!マジに反省文もんだぞこれ!」


「そんなの嫌!反省文ぐらいならどうだって良いし!」


「良くねぇよ!?」


良くない癖に何ではるちゃんだけ!?そんなの嫌だもん!はるちゃんが好きなのに!、と奈々は叫ぶ。

教師が怒る中、俺達は下駄箱に着いた。

ああクソ!


「.....後悔すんなよ!」


「何が!しないもん!」


「馬鹿ばっかりだな本当に俺の周りは!」


そして俺は教師の手を掻い潜ってから。

そのまま下駄箱を飛び出して閉まっている校門を飛び越えた。

それから駆け出して行く。

そして奈々と共に駆け出した。


「でも何でサボるの!」


「だから体調不良だって言ってんだろ!」


「またそんな嘘を吐くの止めて!本当は!?」


そう言われて俺は足を止める。

そしてゼエゼエ言いながら顔を上げる。

それから俺は真剣な顔で奈々を見る。

そうしてから告白した。


「実はな。姫がイジメを受けている。深刻な」


「.....そんな.....」


「.....家から居なくなったそうだ。だから追おうと思ってな」


「.....そんな事.....嘘。.....姫.....さん」


「だから今直ぐに姫を探さないといけない。自殺するかもしれないし。.....取り敢えずは俺は姫に電話を掛ける。お前はあっちを探して欲しい。お前も姫に電話してほしい」


そんな事を言いながら俺は奈々を見る。

三叉路で見開きながら奈々は俺を見つめる。

そして強く頷いた。

うん!、と笑顔で、だ。

俺は笑みを浮かべて真剣な顔になる。


「初めてだね。.....有難う。はるちゃん。私みたいなのを頼ってくれて」


「お前は昔から役立つ幼馴染だっつーの」


「えへへ。嬉しいな。.....じゃあ行こうか!」


そして俺達は学校をサボってから。

そのまま姫を探す手立てを探り始めた。

後で多分俺達はマジに怒られると思うが。

そんな事はどうでも良い。

考えるべきは今はそんな事では無いから、だ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る