第14話 姫が隠しているもの

俺、八島春木はそれなりの人生を歩んできた。

それなりの人生とは簡単に言ってしまうと.....無駄な事をしてきた。

それから蔑まれる人生である。

だけど初めてだろうけどそれを分かち合う事の出来る人間達に出会った。

感情をぶつけ合う事が出来たのだ。


それは俺の義妹になった3姉妹。

それぞれの名前を有栖、姫、夢色という。

どの様な意味で付けられたかというとこの3人で一つのストーリーが完成するのだ。

その全ての意味で名付けられた。


その3人は.....俺が見る限りそう何度も無い感じで笑い合った。

俺はその笑顔を見て幸せに思いつつ.....作る。

何を作っているのかと言えば所謂、輪っかの作品だ。


輪っかを繋ぎ合わせて鎖の様にする折り紙のヤツ。

あれを作っている。

俺達が仲良くなるパーティーの為に、だ。

夢色が一生懸命に輪っかを作る。


「夢色。それこんがらがっているぞ」


「あ。本当だね。お兄」


「こっちは出来たよ」


「早いな。姫」


「.....上手くいかない」


「落ち着け。有栖。ゆっくり切っていくんだ」


互いに糊付けで一生懸命に作っていく。

夢色は笑顔で作りながら。

姫は糊付け。


そして有栖は不器用な様子で折り紙を切る。

俺も糊付けしながらそれをサポートしていく。

そして様子を見ながら俺は完成させていく。


「ところでどれくらい作るのこれ」


「特に定めてないよ。お姉ちゃん」


「うん。たくさん作る」


「そんな沢山作っても意味無いだろ」


俺達は笑い合いながら完成させていく。

そういえば食い物とか有ったかな。

思いつつ.....冷蔵庫を見る。

そして飲み物を仕舞っている棚を見る。

と有栖がそんな俺の様子に、そういえば姫。飲み物とかどうするの、と姫に向いた。


「買ってきたよ。お姉ちゃん達が野球観戦している間に」


「うん。わたしも頑張った」


「それはすまないな。お前ら」


「ごめん。みんな」


「大丈夫だよー。お兄ちゃん。お姉ちゃん」


姫はニコニコしながら俺を見る。

そうしているとインターフォンが鳴った。

俺は、ん?宅配便か?、と思いつつ。


オレンジ色に染まっている外を機械越しに見る。

そこに何故か知らないが.....奈々が居た。

ちょ、何やってんだ!?


「姫!?呼んだのか!?」


「だって大勢居た方が楽しいですから。きっと!」


「いや.....それはそうだけど.....」


「おきゃくさん?」


俺は、そうだな、と夢色に答えながら直ぐに玄関を開ける。

そこには、はろー!、と奈々が私服姿で立っていた。

そしてニヤニヤする。

これ良いでしょ、と可愛い服を翻しながら、だ。

スカートなど。


「.....お前。その服装は狙ってきたな?」


「そうだねぇ?だってはるちゃんに告白したしね」


「.....いや.....恥ずかしいから」


「うん?私はちっとも恥ずかしくないよ?アハ」


「.....いやいや.....」


全くコイツは。

このまま付き合えたらもっと最高だけどね!、と、にしし、と紅潮して笑顔を見せてくる奈々。

俺は、まあ無理だな、と回答する。


でも確かにこのまま付き合えたら最高なのかも知れない。

だってコイツは.....俺に残された最後の友人で幼馴染だから、だ。

家事も出来るしな。


「お兄?どちらさま.....あ」


「あ!久しぶり!夢色ちゃん!」


柔和な感じの顔をする奈々。

俺はその姿に笑みを浮かべる。

すると奈々に対して固まっていた夢色がハッとした。

眉をどんどん顰めていく夢色。

ん?え?


「お兄。.....らぶらぶ駄目」


「.....いや、イチャイチャして無いって」


「ラブラブ.....?はっ!」


奈々が何か分かった様にハッとした。

それからニヤッとする。

夢色は奈々をライバル視した。

そしてメラメラと背後から炎が燃える夢色。

それから.....夢色は奈々を改めて見る。


「ライバルだね。夢色ちゃん」


「.....だね」


「.....お前ら.....落ち着け」


「落ち着けってのはおかしいよね。無理だよ?アハハ」


「.....」


奈々と夢色はバチバチと火花を飛ばす。

苦笑いしか出なかった。

すると、はい。そこまで、と姫が割って入る。

それからニコッとする。


「ようこそです。奈々ちん」


「あ。はろはろー。ひめっち」


「仲が良すぎだろ。お前ら。どうなっているんだ」


「どうって。そだねー。ひめっちとは意気投合だよ!アハハ」


「.....やれやれ」


すると有栖もやって来た。

頭を下げる有栖。

そして顔を上げた。

するといきなり奈々が、有栖ちゃん、と手を握る。

動揺する有栖。


「.....は、はい?」


「元気かな?さっき駆け出して行ったから」


「.....!.....元気です」


「.....そう?落ち込んだりしてない?」


「.....はい」


だったら大丈ブイだね!、と笑顔を見せる奈々。

奈々はどうやら。

俺に告白してからの有栖の反応を恐れている様だ。


その姿を見ながら、優しい箇所は相変わらずだな、と思う。

奈々が、だ。

そう考えながら奈々を見る。


「奈々ちん」


「何?ひめっち」


「それからみんな。家に入ろう。こんな場所で立っていてもしゃーないからね」


「確かにな」


あ。奈々ちん。さっきも言ったけど手伝ってくれると嬉しいかも!、と姫は笑顔を見せる。

奈々は、うんうん。当然手伝うよ、と腕まくりをした。

俺はそれを確認してから門を閉めようと.....した時。

何だか変な気配を感じた。


「.....?」


電柱の影。

そこから誰かが逃げて行く様子を見た。

俺は目を細めながらそれを確認していると。

お兄。どうしたの、と声がした。


「.....何でもないよ。夢色。入ろうか」


「.....?.....うん」


夢色は?を浮かべる。

その姿を見つつ、何だか嫌な気配がする。

と考えるが。


敢えて俺はあまり考えない様にした。

だけど。

俺が今まで経験してきた殺気の様な気配がした。

その事に、何も無いと良いが、と思いつつ俺は玄関ドアを閉める。


「.....」


外をもう一度、確認してから、だ。

防犯上の理由も有るが。

さっきのが気になったから、だ。

そして鍵を掛けて前を見る。

夢色が、といれに行くね、と駆け出して去って行った後。


姫がやって来た。

その顔は真剣な顔をしている。

俺は、どうしたんだ?姫、と聞く。

すると姫は、お兄ちゃん。.....私ね。何かマズい感じになっているみたいなの、と告白をしてきた。


「.....マズいって何だ?」


「.....マズい.....ってのがね。.....私の事を気に入らない人達が.....付けまわしているみたいで.....。あ。ここだけの話にしてね」


「.....!?.....お前.....それ有栖とかにも言えよ。何で.....」


「生真面目で綺麗な有栖お姉ちゃんと。絵の天才の夢色も原因の一つなの。イジメのね。優秀じゃ無い私の事を周りから馬鹿にされたりする事もある。.....この話をお兄ちゃんにしたのは.....お兄ちゃんなら心から信頼出来るって思ったの。.....実は私ね。クラスでずっとイジメられている子を救ったんだ。それ以降、ネットの裏アカウントに私の情報が載せられたり酷いイジメを受けていてね。今もだけど.....トイレで水を掛けられたりしているんだ。比較されたりもね。夢色と有栖お姉ちゃんと.....」


「.....!.....お前.....何だよそれ!?」


姫は自分を抱き締める様にしてカタカタ震える。

青ざめながら、だ。

どうやら先程の俺の電柱に向いていた視線を知っていた様だ。

それで話を始めたのだろう。

思いつつ.....姫を見る。


「完璧に犯罪じゃないか。.....先生とかに訴えないと!」


「.....そうなんだけどね。でも怖いんだ。私。また何かされるかもしれないって.....」


「.....姫.....」


俺は抱き寄せて姫を抱き締めた。

強く、固く、だ。

そのまま頭を動物を撫でる様に撫でる。


咄嗟の行動に.....姫は見開きながら涙を溢す。

それから.....俺に縋る。

声を隠しながら嗚咽を漏らした。

涙が次々に溢れてきている様である。


それでか。


何で.....姫が何時も元気を見せているのか.....という事が、だ。

そして何故.....自分の評価を表にあまり出さないのか。

これを隠す為だったのかもしれないと。

その様に.....思った。

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