3、絶望を抱える孤独
第11話 だからアンタは
有栖も夢色も。
そして多分だが姫も。
恐らく最悪の過去を持っている。
俺は.....何だか知らないがかなり俺達は共通していると感じた。
あのクソババアが死んでせいせいした。
根に持つ様に言う有栖。
俺はその言葉を聞いて.....有栖の過去を知った形だ。
最悪のパターンで、だ。
祖母が音楽家だったそうでそして、長女だから、と鍛え上げられたらしい。
だけど上手くいかなかったらしい。
それは全部、アンタと似ている、と言われた。
似ていると言えば確かに似ている。
俺の場合は下らない事だが。
「ねえ。アンタってパーティーした事あるの」
「無いな。俺は奈々と幼馴染なだけでそんな巨大な物はしたことが無いんだが」
「無いの?じゃあ何にも分からないんだけど。私もそんなに友人が居る訳じゃ無いんだけど」
「.....」
「.....」
リースとかレースを近所のコンビニとかスーパーに買いに来たが。
どうすれば良いのか全く分からない。
いや。
どうすれば良いのか分からないんじゃないか。
品物が多すぎて何を選べば良いのか分からないのだ。
さてどうしたもんか。
有栖は周りから、美少女だ、とか言われて俺は、何だあれ?、と言われている中。
俺は有栖を見る。
有栖は唇に手を添えて、うーん、とか言っている。
電話しようかな?姫に。
「電話するか。姫とかに」
「しなくて良いわよ。これぐらいで」
「良いのか?分からないんだよな?」
「分からない訳じゃ無いけど。.....どう選んだら良いのか分からないだけよ。.....私は色が分からない」
「.....?」
色が分からない?
どういう意味だ、と思いながら見ていると。
有栖は額に手を添えて溜息を吐いた。
それから、適当に選ぶわよ、と回答する。
俺は、そうだな、と同調の様に答える。
「.....有栖」
「.....何」
「.....お前さ。色が分からないと言ったよな。それは目とかの異常で色彩が分からないのか」
「.....違うわ。.....色を見失っただけよ。.....空だって曇り空よ。私にとっては鼠色の空。何時もね」
「.....すまん。これ喋って良いのか分からないが心療内科とかに行かなくて良いのか。お前は」
心療内科に行っても薬出るだけでしょ。
医者はろくなの居ないから。
と有栖は言い切った。
俺は、そんな事は無いと思うが、と回答するが。
有栖は、そんな事も有るから、と話す。
「実際に扱いをされたから。.....異端児と」
「.....」
「.....おかしいんだって。私は。.....頭とか」
「.....その医者は俺が殴り飛ばしたい気分だ。つうか何だそりゃ。お前の何処がおかしいんだよ」
「.....そう言ってくれる所がアンタらしいわね。相変わらず優しいというか」
有栖は柔和に俺を見てくる。
それからリースとかレースをかごに入れてから。
折り紙とか和紙とか入れる有栖。
俺はその姿を鼻息を吐き出して見ながら.....居ると声を掛けられた。
「あれ~?八島じゃん。何やってんの」
金髪と茶髪の男子2人。
痩せた奴と小太り。
不良の格好をしているのだが.....名前は確か鈴木と加藤だっけ?
名前が分からないというか興味が無い為に曖昧だ。
ただ一個だけ言えるのはコイツらは完璧な不良である。
そしてリア充だ。
面倒臭い連中である。
簡単に言うと非リア充に肩を組んで来る様なめんどい連中だ。
何でスーパーなんぞに居て俺に声を、と思ったのだが。
あー。成程な。
有栖が目的か、と思う。
「お前ってそんな可愛い女の子連れてたっけ?めっちゃタイプなんだけど」
「マジマジ。可愛いじゃん。名前何て言うの」
「.....」
有栖の肩を掴んだ。
そして顎に手を添えようとする。
有栖は眉を顰めて真顔で不愉快そうに見ていた。
何時でも金蹴りでもブチかましそうな勢いだ。
俺はそれをため息交じりで見る。
「.....鈴木に加藤だっけ。ちょっと今忙しいから」
「俺達友人じゃん」
「そんな事言うなって」
これがリア充。
こういうのが面倒臭いのだ。
何が?、ってそうだな。
突然非リア充がリア充の友人になるのだ。
都合が良い時だけ、だ。
これって本当に嫌いなんだけど。
全てが、だ。
このスーパーの警備員でも呼んで良いんだが.....そのうち来るだろうな。
今の状況はかなり面倒臭いのだがそれを言うとまた面倒臭い。
さてどうしたものか。
と思いながら見ると強い筈の有栖は震えていた。
俺も若干に恐怖なのだが黙っていられないなこれは。
「あのな。いい加減にしてくれ。.....その子が嫌がってる」
「嫌がってねぇよ」
「だなだな」
半分しか聞いてない。
駄目だこりゃ。
警察でも呼ぶか、と思いつつ店員を見るが。
店員も警備員を呼んでいる様に見える。
でも今から呼んでも少しだけ時間掛かるだろうな。
今直ぐには来ないだろう、と思い。
俺は加藤を突き飛ばした。
勢い良く、だ。
すると加藤が不愉快そうに俺を見た。
「何すんだテメェ。コラ」
「.....すまないけど俺の義妹なんだ。いい加減にしてもらえるか」
「義妹って嘘吐くな。そんな事あるかよ。お前にはこの女の子は似合わねぇ」
とか言って俺を突き飛ばす加藤。
殴りたいんだろうけど手加減した感じである。
だけど俺は加藤の力に突っ伏した。
そして有栖を連れて行こうとしている。
俺は、止めろ!、と叫んでから加藤に捕まる。
「しつけぇよ!お前!」
そして加藤に腹を殴られた。
俺はまさかの事に見開きながら、ぐ.....、と思いつつ腹を抱えてそのまま蹲る。
有栖が、大丈夫!?、と慌てる。
それから、ちょっと離してよ!、と有栖は暴れる。
だが加藤と鈴木は気にせずに無理矢理連れて行こうとする。
「行こうぜ。ソイツは大丈夫だから」
「そうそう。ハハハ」
たすけ、と呟いた有栖。
その言葉に俺はよろめきながら前に立った。
有栖が思いっきり俺に見開く中。
加藤と鈴木を残った力で睨んで見つめる。
マジに腹立たしいが俺には力が無い。
と思って加藤と鈴木を見ていると加藤が、しつこいな、と呟いたその時。
警備員がやって来た。
「何やってんだ君達は!」
「ちっ。.....行こうぜ。鈴木」
「お前、教室で覚えとけよ」
警備員が俺を見て、大丈夫かい?、と聞く中。
俺は痛みを堪えながら走って分散して去って行く加藤と鈴木を見た。
面倒臭い事になったな、と思ったが。
許せなかったからな。
義妹に手を出した事が、だ。
すると唇を噛んで有栖が俺を見てくる。
「.....何で.....私を置いて逃げなかったのよ。アンタ」
「.....何でってお前は俺の義妹だからな。妹だからな。逃げる気が起きない」
「あれ.....アンタのクラスメイトでしょ。この先ずっと絡まれるかもよ」
「それ以前に許せない物から顔を背けない主義でね。俺は。この後の事なんぞ誰も分からないし大丈夫だろ」
「.....」
有栖は涙を浮かべている様な目だった。
俺はその姿に少しだけよろめきつつ。
立ち上がった。
クソ。加藤のクソッタレ野郎が。
マジの本気で殴りやがって.....、と痛みが取れないと思いつつ居ると。
有栖が何か小さく呟いた。
「.....あの男とはえらい違いね.....だからアンタは」
と、だ。
ぶつぶつと小さくしか聞こえない。
一体何を話しているのか聞き返そうと思ったが痛みが酷く。
聞き返せなかった。
だけど何だか悪い事は言ってない気がするのでまあ良いか、と思う。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます