第7話 らいばる、だよ
俺の昔からの腐れ縁と言える様な幼馴染の奈々。
そいつが呼び出したので喫茶店で会話していると何故か知らないが姫と夢色らしきサングラスとかで変装した2人が喫茶店に入って来た。
今そいつ等は俺の目の前で聞き耳を立てつつ何故かブラックコーヒーを注文してからそのまま飲んでから青ざめて、おえっ、とか言っている。
何でコーヒーをブラックで飲んでいるんだ、とかツッコミを入れたいのだが。
思いつつ俺は奈々に感付かれない様に視線だけ動かしていた。
それから溜息を吐く。
「という事で今度さ。家に遊びに行っても良い?」
「いや.....何でだよ。ってかその前に勉強しろってお前。ガキってか少年じゃ無いんだから」
「嫌~。メンドクサイ~。それにゲームがしたい~」
「あのな.....」
そんな会話をしながら俺達はワイワイやる。
すると今度は奥に居る2人は何だか知らないがティラミスを注文した。
そして顔を引き攣らせて、苦い.....、と呟いている。
いや。そんなに注文して金が有るのかお前ら、という感じだが。
考えながら奈々を見ると。
「さっきから何見ているの?私が気が付いてないと思ってる?」
「.....え」
「.....私の後ろに何かあるのかな?」
「.....いやいや。何でもない。後ろの景色が綺麗と思ってな」
「え?後ろにあるのただの雲と太陽の壁紙じゃん」
いや。まあそうだけど.....。
お前が関わるとややこしいんだよ。
思いつつ俺は奈々を見る。
奈々の頬に先程食ったパフェのクリームが付いている。
俺は盛大に溜息を吐いた。
それから立ち上がって顔に付いているクリームを掬う。
そして食った。
「.....!?」
「なんか付いてたぞ頬に。つーかクリーム美味しいな」
俺は指のクリームを舐め終えてから顔を上げる。
何故か知らないが.....奥の奴らが硬直し匙を落とした。
そして目の前の奈々も目をパチクリして真っ赤になっている。
俺は目を丸くする。
昔から何時もやっていたろこんなん。
「いや、どうした?」
「.....えっと.....いや。な。何でもない!」
「.....?」
良く分からない。
その様に考えているとメールが届いた。
スマホに、だ。
俺は誰だ?宣伝か?、と思いながら奈々に許可を貰って開く。
そこにはこう書かれていた。
(お兄のアホ。.....しね!(-"-))
「.....」
夢色のメールだった。
いや、姫からスマホを借りているのか?
いずれにせよ何だか夢色がかなり怒っている様に見えるが。
というかこれって自分は見ていますって事なんだが.....。
思いつつ俺は苦笑い。
考えながら顎に手を添える。
何でこんなに怒っているのだ?
「.....だ、大胆だね。春ちゃん。アハハ」
「.....お前も何でそんなに恥ずかしくなっているんだ」
「.....え?.....い、いや?アハハ」
「.....」
何だか俺も恥ずかしいんだが。
思いつつ俺は頬を掻く。
すると目の前の夢色と姫を見る。
夢色はかなり怒っている様に見える。
メラメラと炎が上がっている様に見える。
な、何で?
「やっぱり何だか背後に違和感を感じるんだけど。誰か居る?」
「い、いや?誰も居ないんだが」
だがそうしていると。
夢色が遂に動いた。
姫が止めようとしたがそのままやって来る。
それから横に立ち。
そのままサングラスを、付け髭を勢い良く剥ぎ取った夢色。
そして俺の横に腰掛ける。
目を開いて驚愕している奈々の傍で.....頬を思いっきり膨らませている。
「.....あの.....誰?春ちゃん?」
「え?あ、ああ。コイツは.....」
俺は愕然としていたのだが言われて我に戻る。
そして言い掛けた所でキレた様に夢色が話し出した。
頬を思いっきり膨らませた状態で、だ。
文句を垂れる様に、である。
「私は八島夢色ですがなにか?」
「.....あ、ああ!成程!義妹ちゃん居たんだね」
「.....そ、そうだな。うん」
納得しながら奈々は夢色を見つつ。
そして笑みを浮かべて奈々は夢色に手を差し出す。
それから初めまして、田中奈々です、と挨拶をしたが。
頬を膨らませたままの夢色はプイッと横を見てその手をスルーした。
そして俺をジト目で見てくる。
って。いや。オイオイ。
何でだよ。
するとこう呟いた。
「お兄のばか。ふーんだ」
「.....挨拶しろよお前.....」
「.....アハハ.....何だか嫌われてるね」
すると姫がやって来た。
そして、お兄ちゃんゴメンね。まさか夢色が行くなんて思って無かった。
と付け髭をサングラスを外しながら謝る姫。
まあ仕方が無いんじゃないか。
後でバレるだろうしどうせ、と思っていると姫が奈々に頭を下げた。
「私、八島姫です。宜しくです。奈々さん」
「宜しくね。姫ちゃん。アハハ」
「.....ほら。夢色も挨拶」
「.....イヤ。ぜったいにイヤ」
姫が促しても駄目だった。
何でこんな事になっているのか、と思っていると。
夢色は俺の膝の上に座って来た。
何でだよ!!!!?
俺は再びかなり愕然とする。
みんな驚愕する中。
夢色は奈々を真っ直ぐに見ながら宣言した。
眉を顰めつつ、だ。
「らいばる。貴方は」
「.....え?ライバル?何のかな?夢色ちゃん」
「お兄。.....らいばる」
「.....???」
側で聞いている俺。
ゴメン。全然訳が分からない、と思っていると突然、奈々はハッとした。
それからニヤッとし始める。
なーるほど、と言いながら、だ。
そして真剣な顔になる。
「.....それは負けないよ」
「.....私だってまけないもん」
「へ?へ?いやちょっと待てマジにどうなっているんだよ。姫。助けてくれ」
「え?私?.....いや、まあ鈍感だねぇとしか.....」
「へ?!鈍感って何がだよ!?意味が分からねぇ!?」
何だか知らないがニヤニヤする姫を他所に睨み合う2人。
そして困惑する俺。
何だか話がややこしくなっていっている様な.....。
困ったなオイ.....。
思いつつ夢色を見る。
「夢色。ちょっと退いてくれ。ここは店だから」
「イヤ。ぜったいにイヤ」
「アハハ。仲が良いじゃない。.....春ちゃん.....?」
「.....」
すまん何がどうなっている。
何故こんなに冷や汗が出るのだ?
そして何故.....夢色は退かないのだ。
思いつつ俺は.....痺れる膝と共に.....盛大に溜息を吐いた。
マジに困ったとしか言いようが無いんだが.....。
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