第5話 姉は妹などを守る為に居るんだ

結論から言ってこの後の展開は想像した通りだ。

俺を嫌悪しそのまま有栖は何処かに行ってしまった。

外に出て行った様だが、である。


しかしそれは良いんだが.....何だか遅くないか?帰って来るの。

思いながら俺は時計を見る。

1時間も外に居るのか?何処に行ったのだ?

待っていたが流石におかしい。

普通でも考えられるけど何も告げず1時間は.....おかしくないか?


「うーん.....お姉ちゃん遅いですね」


「.....そうだね」


「.....ったくもう.....」


面倒臭いけどこういうのは男の仕事だしな。

父さんと神田さんも仕事の呼び出しがあったそうだし。

取り敢えずは俺しか居ない。

今動けるのが、だ。


俺はトランプを放り投げて立ち上がる。

それから掛けてある薄い上着を羽織った。

そして俺は玄関に向かう。


今は4月だしまだ肌寒いかもだけど。

でもそんな事より.....マジに何やってんだろうな俺。

あんな女なんてどうでも良いのだが。

姉妹が心配している。


「お兄ちゃん.....」


「お兄.....」


「.....お前らはここで待っててくれ。取り合えず探して来る


「う、うん.....何かあったら直ぐに電話して」


心配げな顔をする2人を一瞥してからそのまま急ぐ。

玄関のドアを開けて、だ。

スマホを持った、財布も持った。

よし、と思いながら。

そして駆け出して行く。


「.....はっ。何やってんだろうな。俺」


赤の他人と言われてそれで探しに行く?

馬鹿なんじゃ無いのか俺は。

思いつつも.....何だか引っ掛かるものがあった。


姉妹を泣かせたくない、という気持ちが。

つうか有栖。

お前は姉貴だろうよ。

何処行ったんだよオイ本当に。


若干に腹立たしく思いながら。

取り合えず河川敷とか探していく。

だが居なかった。


それから探し回って15分ぐらい経った所の公園。

そこの遊具の中で蹲っている有栖が居る。

そうしていたら雨が降り出してきた。

俺はクソデカい溜息を吐きながらそのまま有栖に近付く。

有栖が顔を上げた。


「お前.....何やってだこの野郎」


「.....!.....何で分かったの」


「分かったもクソも有るか。見えたんだよ」


「.....」


眉を顰めて、あっそ、とそっけない返事。

俺はその言葉に流石にカチンときた。

それから有栖の丁度、横の壁にドンッと手を付く。

有栖はビクッとする。


それから俺をビックリしながら見てくる有栖。

お前!!!!!俺は良いけど姉妹が心からお前を心配しているんだよ!!!!!、と絶叫した。

有栖は見開きながら俺を見てくる。


「お前な。俺の事はどうだって良いし無視しても構わない。お前自身は子供かもしれない。だけどお姉ちゃんという役職に就いているんだ。こんな馬鹿みたいな事とかで迷惑を掛けちゃ駄目だ。俺は一人っ子だから妹とかそこら辺は良く分からん。だけどなお前.....先に生まれたからには妹達を守る義務の元に居るんだ。なのに2姉妹は心の底から本当にお前を心配している事になった!裏切る様な事をしたら駄目だろう!」


「.....!」


雷が鳴り。

そして雨が降ってくるが。

そんな事を気にしないで俺はジッと有栖を見る。

有栖はまさかの俺の言葉に驚愕しながら俺を見てくる。


「お前がどういう経験をしたか知らないが俺もそこそこにぐちゃぐちゃな感情ってもんを知っている。理解出来るつもりだ。それがお前と同じ感情かどうかは分からない。でも大変な地獄の経験をしてきた。それでも分からない事は有る。だって俺はお前じゃ無いんだから。でもな。これは分かる。大人と子供の区別とかそんなのは全部分かるつもりだ。だから今こう言える。ずっとお前は最低な事をしてきたんだ」


何でこんな事を必死に言っているのか分からない。

全く分からないが.....俺は言いたい事を言わなくちゃいけない。

そんな感じがしたから言ったのだ。

すると有栖は俺を睨んできた。


「わ.....私の気持ちなんてこれっぽっちも分からない!今もどれだけ悩んでいるのか分かっているの!?少しだけでも理解しているって!?理解してないに決まっている!アンタなんかに.....私の気持ちは1パーセントも分からない!馬鹿なんじゃないの!?」


男は嫌いだ!大切な.....とても大切な宝物の様な夢色を虐待していたあの男みたいになる!!!!!、と絶叫した。

俺は見開きながら.....有栖を見つめる。

有栖は涙を流し始めた。

それから俺を殺す様な獣の様な目で見てくる。


「私は絶対に認めない!男は獣だ。私は.....みんなの目を覚ます!」


「.....お前.....家族が大切なんだな?」


「.....当たり前じゃない。とても大切だから」


「.....」


有栖は言いながらその場から去ろうとする。

馬鹿か?この悪天候で何処に行くつもりなのか。

思いつつ俺は手を握ろうとする。

そして怒った。


「アホなのかお前は!どこに行くんだ濡れるじゃないか!」


「アンタと一緒に居るのが嫌だ」


そして去って行こうとする。

俺は、ったくクソッタレが!、と有栖の手を掴んだ。

それから俺は有栖の肩を掴む。

そして俺はジッと見る。


「.....何」


「.....じゃあ約束する。俺が、親父が。.....もし裏切ったら.....このまま出て行って構わない。それまでは信じてほしい。1度だけチャンスをくれ」


「.....」


俺は土砂降りになり始めたがその場で頭を下げた。

まさかここまでするとは思わなかったが。

それから俺は有栖に手を差し出す。

そして数十秒して顔を上げる。

有栖は涙を流していた。


「何でそこまでするのよ。.....家族でも赤の他人なのに」


「.....分からん。正直言って馬鹿なのかも知れない。だけど.....これだけは言える。俺は仮にもお前らの兄になったから、だ」


「.....」


そうしていると。

長靴を履いた姫と夢色が傘を差して雨合羽を着てからやって来た。

俺達の様子を見ながら、お姉ちゃん。有栖お姉ちゃん、と涙声で言う。

その姿を見ながら有栖は笑みを浮かべた。

そして俺達に頭を下げる。


「ゴメン。みんな。.....そして。.....兄貴」


「.....!.....お前.....」


「.....今だけだから。.....後は春木って呼ぶから」


「.....分かったよ。有栖」


そして。

何とか俺は3人のお姫様と打ち解けた。

まだまだ時間は掛かりそうだったが.....取り合えず、だ。

ここからがスタートだろう。

思いつつ.....濡れた服のまま帰宅した。

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