第4話 喋って良い事と悪い事がある

「.....姫。アンタ。先に配るのは良いけどイカサマとかしてないわよね」


「する訳無いでしょ?そんな事をしたらお姉ちゃんに殺される」


「わーい。ババ抜きだ」


そんな感じで久々に揃った3姉妹は俺を側で放ってから話をしていた。

俺はその姿を見ながら溜息混じりに手元のトランプカードを見る。

そこには結構な感じのリーチ目が出ていた。

俺は少しだけ余裕を持ちながら見る。


「じゃあババ抜きを上がった順に役割が少なくなるって事にしよう」


「.....分かった」


「分かった。それで良い」


そして、じゃあゲームをしようか!、と姫は高らかに宣言する。

俺はその姿を見ながらまた溜息を吐きつつ。

そのままババ抜きを開始した。


先ずはジャンケンで決める。

そして1から始まっての俺、夢色、有栖、姫。

この順番になった。

俺は横に居る夢色にカードを隠しながら見せる。

すると夢色は、むむむ、と眉を顰めながらカードを見ていた。


「そういえば自己紹介は一応したけどもっと自己紹介しない?今のこのタイミングで」


「何でよ。そんなの嫌。.....コイツも居るし」


「まあまあお姉ちゃん。そんな事言わずに。仲良くなろうよ」


「.....無理。.....私は.....」


有栖は顔を顰める。

俺はその姿に?を浮かべながら見つめる。

すると有栖は俺を睨んだ。

そして、アンタもどうせ私を、と言う。

この事に対して姫が、お姉ちゃん。それは無いよ、と否定した。


「.....お兄ちゃんは良い人だから。それは無いから」


「そうだよ。有栖お姉ちゃん」


「.....だったら良いけどね」


「.....」


どうやら。

かなり深刻な昔を背負っている様だ。

俺はそんな思いで有栖を見る。

有栖は俺を睨むのを止めてからカードを引いた。

すると今の状況を変えるつもりなのか姫が、はいはーい、と手を挙げる。


「私、中学2年生の姫でーす!県立山梨の中学校に今度通いまーす。私の趣味は可愛いもの集めでーす。身長は152センチ!後は秘密でーす」


「.....それって俺の通っていた中学校だな。.....お前はそこに通うんだな」


「そうなの?お兄ちゃん」


「そうだな。石清水とか元気かな。担任の」


「うんうん、今度会ってみるよ。アハハ」


するとカードを引いた姫が、きゃー、と短い悲鳴を上げた。

><の顔をする。

ババが来たな?多分。

と思いながら居ると、じゃあ今度はわたし、と手を挙げた。

それから胸に手を添える。


「私は夢色。12歳です。.....わたしは山水小学校に通います。今度、です。でもわたし.....学校に通うのが苦手なのでゆっくりだと思います。.....絵がしゅみです。よろしくです。身長は秘密.....後も秘密」


「.....そこも俺が通った場所だな」


「.....そうなの?お兄」


「.....ああ。でもまあろくな記憶が無いけど」


すると夢色が俺の腕に縋った。

それから見上げてニコッとしてくる。

何だ一体、と思っていると。

とんでもない言葉を発してきた。

それは。


「大丈夫だよ。お兄が好きだから。私」


「ファ!?」


「ゆ、夢色!?」


「お兄を見ていたら頑張ろうって気になったの。だからすき」


「.....ゆ、夢色.....」


それから俺の腕ですりすりしてくる夢色。

俺はその姿を見ながら頬を掻く。

すると姫が興奮気味で夢色にマイクの様に雑誌を丸めたのを差し出した。

それから鼻息を荒くする。


「ず、ズバリ何処に惹かれたんですか!?夢色さん!」


「お兄は私と同じだから。そこに惹かれた。えを褒めてくれた」


「ほほーう!!!!!スンバラしい!」


「ゆ、夢色.....離してくれ。恥ずかしい」


「うん」


夢色も少しだけ恥ずかしいのか頬を朱に染めてから腕をパッと離した。

それからモジモジする。

俺も何だか居心地が悪くなってきて目線を外す。

すると何だか不愉快そうに有栖が俺を見てきていた。

そして睨んでいる。


「有栖.....」


「何。なんか文句あるの」


「.....無いけどさ。もし良かったら仲良くしようぜ」


「アンタ.....何様?所詮は赤の他人だよね?」


そう呟いた。

所詮は赤の他人.....。

ちょっとショックだな、確かにそうだけど。

するとこの声に、お姉ちゃん!!!!!、と今まで楽しげにしていた姫が激昂した様に声を発した。

雑誌を投げ捨てて、だ。


そして有栖に詰め寄って行く。

オイオイ!?

思いながら俺は直ぐに止めに入ろうと立ち上がる。


「姫。アンタ達はおかしい。こんな奴らに心を開くなんて。赤の他人なのよ?おかしいと思わない?」


「お姉ちゃん。流石に喋って良い事と悪い事があるよ。赤の他人じゃない。確かにそうだけどお兄ちゃんは私達に必死に接しようとしている。だからそんな事言わないで」


「.....何をどうしようが所詮は裏切る。.....だから仲良くしたく無い」


そしてカードを投げ捨ててから。

そのまま去って行こうとする。

その手を姫が握った。


それから、何?、と振り返る有栖に涙目で姫は睨む。

俺は.....衝撃だった。

初めての姫の涙だったから、だ。

そして姫は口を開いた。


「昔の事は確かに忘れられない。だけどそれと今は別。お姉ちゃん。お兄ちゃんは私達の為を思ってお兄ちゃんも赤の他人と思いながらも接してくれている。.....私達が努力しないでどうするの!?」


「.....」


「.....オイオイ。マジに喧嘩するなって。夢色が悲しんでいるぞ」


あ。ご。ゴメン。夢色。

と姫は取り乱す。

するとその中で有栖は、だから私達は少しづつ今もバラバラになって行くんだよね、と言ってからリビングから去って行く。

俺はその姿を.....ただ呆然としか見る事しか.....出来ずだった。

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