第7話
幽霊を食べるようになってからというもの、私はびっくりするくらい普通の食欲をなくしてしまう。菓子パンかなんかを一口齧るだけで、もうおなか一杯になる。というか味がしない。みんなが食べてる普通の食べ物に味がしなくなる。
そうして満たせなくなった(満たす必要がなくなった?)食欲の代わりに、私は幽霊を食べる。しみちゃんみたいに食べる。どこだろうとなんだろうと、悪い幽霊を片っ端から食べる。噛む。すする。しがむ。しゃぶる。なめる。舌で転がして香りを鼻に抜けさせる。
「涼子あんたきれいになったね」オオガミさんが言う。悲しそうに言う。
「そうかな」私は鏡を見る。私には私がきれいには見えない。
江藤家の一件があってから、町は少しずつおかしくなっている。町で一番お金のあるひとたちのいる地域で、むごたらしい人殺しが起きたことが、いろんな形で町の人たちに悪い影響を与えたみたいだった。江藤家のみなさんはみーんなお上品で通っていて、彼らが自分たちの家族から殺人鬼を生み出し、そしてそれに家族皆殺しにされたという事件は、町全体に嫌な雰囲気を吹き込むことになる。
江藤家は売りに出されるけど買い手はつかない。事件のこともあって、土地と建物の物質的な価値を考えるととても正気ではいられないような価格がつくけど、それでもだれも買わない。〈顔〉のことは徹底して隠されていたけど、どこからか噂は広まったみたいで、旧江藤家は〈顔屋敷〉とと呼ばれるようになる。〈顔屋敷〉のうわさはインターネットでも広がり、一人のYoutuberが管理会社に無断で侵入し、中で大騒ぎする。不審に思ったお隣さんが通報。警官が駆け付けたときには、彼は配信中だったにも関わらず、意識不明の重体で発見される。階段から足を滑らせて落ち、頭を強く打ったのだとされているが、配信された動画には、Youtuberがなにかに謝り続ける音声だけが記録されていた。彼は病院で死亡が確認される。動画は削除されけど、探せば今でも見ることができる。ネット上の怪奇マニアたちの間で、伝説的な動画として扱われるようになる。
管理会社は〈顔屋敷〉の施錠を怠っているのではないかと責任を問われるが、会社はむしろ、被害を受けているのは自分たちであって、どうして完全に鍵を締め切ったこの家にひとが侵入できるのかわからない。と説明する。管理会社の代表はこうも付け加えた。「誰かがね、内側から鍵を開けてやってるとしか思えンのですわ」そして炎上する。
次に近所の男の子たちが〈顔屋敷〉で遊ぶようになる。親は必死にそれを止める。でも子供たちはとまらない。高級住宅街に住む小学生たちには、もっときれいで、機能的で、健康的な公園が用意されているのに、子供たちは〈顔屋敷〉で遊ぶ。初めは誰かの家で、あるいはその現代的な公園で遊んでいる。だいたいは持ち寄ったニンテンドースイッチで遊ぶか、たまにサッカーなんかもする。でも、誰が言い出すのか、気づくと〈顔屋敷〉でかくれんぼが始まっている。そして〈顔屋敷〉で、男の子が一人行方不明になる。子供たちが言う。奏多くんと琴音ちゃんが鬼になる。いなくなった子はかくれんぼは嫌だと言って、家から出て行った。琴音ちゃんがいいと言うまで、家を出てはいけないのに。半狂乱になった親たちが探す。〈顔屋敷〉中をくまなく探す。でも見つからない。みんな気味悪がって、あるいは次に自分が行方不明になるのが怖くて引っ越す。いい大学を出て、いい会社に入って、いい町にいい家を買うことができたいい大人たちが、自分の良さの証明になったはずの家と土地を手放して町から消えていった。
このようにして私たちの町の、あの素敵な住宅街〈一丁目〉は滅多に人の寄り付かない忌み地になる。あそこは地獄の〈一丁目〉。奥に進めば戻ってこれない。誰かがそんなことを言った。まぁわたしなんだけど。
私は毎日放課後にしみちゃんの病室を訪ねる。しみちゃんはまだ眠ったままだ。看護師さんがいうにはたまに目を開けていることがあるけど、それはまだ医学的には目覚めたとは言えない状況らしい。しみちゃんが意識不明になってそろそろ一か月が経つ。しみちゃんは一向に目覚めない。しみちゃん。しみちゃん。呼んでも起きないけど、私は泣きそうになるまでずっと彼女の名前を呼ぶ。
「海野さん。おれ、クビになっちゃったよ」
しみちゃんの病室から出てきた私を待ち構えていたのはあの幸田だった。幸田はもう陰キャ大学生みたいな恰好をやめていて、髭も剃って髪もキレイに整えて、安物だけどちゃんと手入れされたスーツを着ている。誰かわからなくて、「誰ですか?」って聞いたら、彼は残念そうにあぁ……とうつむく。
「ほら、幸田だよ。覚えてるよね……」
「ああ。どうも」
私が軽く頭を下げると、幸田はどうも納得がいかないという風に眉をしかめる。
「……君、雰囲気変わったね」
「そうですか。自覚はないんですが。……それじゃあ」
私が去ろうとすると、ちょちょちょ待ってよ。と幸田は私をひきとめた。
「ちょっと話さないか。コーヒーでも飲もう」
「中学生をナンパですか」
「冗談じゃない。勘弁してくれ」
――ほんとうにかんべんしてくれ。幸田が辛そうに言った。
独特の甘いような酸っぱいような匂いで私はすでにお腹いっぱいになる。食器のぶつかる音が絶え間なく響く。小さなお皿がいったりきたりして、客席を巡る。幸田が私を連れてきたのは、国道沿いの回転寿司店だった。
そこそこ客が入っている。平日の夕方に回転寿司を食べにくる人たちはどんなひとたち?私はお寿司が好きじゃない。
ここのコーヒーはね、なかなかいけるんだ。はぁそうですか。チェーンの回転寿司がコーヒーにこだわっているというのはなかなかないと思う。
「好きなものを食べていいよ」幸田が言う。
わたしは流れゆくお寿司を眺める。無意味だった命が象られて有意味のお寿司になっている。意味というのは人間の言葉で、つまり意味という考え方は人間にしかない。だから、太平洋を泳いでいただけの鮪や鯛には意味はない。海を揺らいでいた海苔も、秋風にざわつく稲穂にも意味はない。命はそのまま自然のかたちにあって、それを人間が垢だらけの手で捏ね回して「意味」のあるかたちにする。
どうして私はこんなことを考えるようになったんだろう?昔はそうでもなかった気がする。死んだり、いなくなったり、死ぬより酷い目にあったりした人たちを見て、私の中の何かが変わる。たぶんそういうことだ。私は私のつるつるぷるぷるの脳みそで、私の命と私以外の命について考えざるをえない。私の意味はなんだろう?私には神様がいない。だから生きている意味を自分で見つけなければならない。ただ生まれてきたから生きているのでは、あまりにも寂しい。でも今の私は、ただ生まれてきたから生きているにすぎない。
「日本政府は今回のこの町に起きた出来事について、完全解決を諦めたよ。●●市■■町一丁目は、日本国内に存在するほかのいくつかの
フゥ――ッ、と幸田が煙草の煙を天井に噴き上げる。すぐに店員さんが駆け寄ってきて言う。禁煙です。すみません。幸田は言っておてふきに煙草を押し付けた。店員さんは嫌そうな顔をしてどこかに消えた。私もかなり嫌だ。
「こんなふうになる前に、事を収めるのが僕の仕事だった。でもできなかった。初めの問題は染田麻衣子だった。彼女はいわゆる霊魂というものと同じ
幸田が話すのはこの世界の話で、私たちが経験してきたことの社会的な側面だ。そろそろ私にもそういうことが分かるようになる。人がたくさん死んだ。嫌な死に方だった。だからみんなそんなことは忘れたい。実際、よくないものがそこに溜まってしまって、危険でもある。だから国がなんとかする。この国をできるだけ長く健康に続けたいと思う人たちが頑張ってなんとかする。なんとかしようとした結果、幸田がやってくる。そしてどうにもならず、しみちゃんは眠ったままだ。
「なぜ発狂した江藤響が染田麻衣子を物理的に傷つけることができたのかは誰もわからない。でももうそれはどうでもいい。僕が最後に君に会いに来たのは、君に警告するためだ。僕はこんなことしかできなかった。海野涼子さん。なぜだか知らないが、今度は君が食べているらしいね。いいかい。これ以上はやめるんだ。君のことはどうでもいい。はっきり言おう。君のことなんかもうどうでもいいんだ。ただ君が食べ続ける限り、周りの人間が不幸になる。君たちがやっていることは、この世界のルールではもう対応できないことなんだ。あちこちでその対応不可能な現象を引き起こされると、また人が死ぬ。頼む。本当にやめてくれ」
「幸田さん。他人を理由にすれば私がやめると思ってそれ言ってませんか?」
「君はずいぶん頭がいいみたいみたいだね」
いつか私をめちゃくちゃに言い負かしたときみたいな光が、幸田の瞳をぎらりと輝かせる。でもそれはすぐにしぼんで消えていってしまう。
幸田は彼自身の髪を掴む。ずるりと髪が抜ける。幸田にはもう本当の髪の毛がなくて、彼がウィッグを使っていたことがわかる。そして私は気づく。私が彼を彼だと認識できなかったのは、その見た目が前よりもスマートになっていたからじゃない。彼が異常なほどに、痩せて、その人相がすっかり変わってしまっていたからだ。
「旧江藤家……今は〈顔屋敷〉と呼ばれている。あそこで行われていたのは儀式だった。江藤響が行った儀式。呼び出されたものは江藤奏多に憑りつき、その魂を貪っている。残りの家族はみんないけにえだ。江藤響が何を求めたのか知らないが、結局は一家全滅。呪いだけが残った。僕はこの町での最後の仕事として、あの家の状況を上に報告したんだ。中に入って、写真を撮って、レポートにそれをまとめた。一晩で終わったよ。次の日からはひどい熱が出てね。しばらくやられていた。熱が引いたら今度は、髪と歯が抜け始めた。今朝の話さ。今日は最期に大好きな寿司でも食べようと思ってね」
彼はレーンを周る皿をひとつとってそれを目の前に置いた。たこだった。
――たこは大好きだ。うまいし、強そうだから。
そう言って幸田は、寿司の上に醤油を垂らして、一つを口に放り込む。初めは嬉しそうにもぐもぐしているけど、次第に表情が険しくなる。やがて口を動かすのをやめると、おしぼりの中に口の中身を全部吐き出した。おしぼりが赤く染みていった。私は自分が何を見せられているのかわからない。
幸田は手で口元を隠して言う。「やれやれだね」なんだか発音がぎこちない。それから先、幸田はどうでもいいようなことをぺらぺらとしゃべり続けた。でもその間、口は絶対に私には見せなかったし、もう寿司をレーンからとる素振りも見せなかった。私はコーヒーを注文した。コーヒーは香りも味も悪くなかったが、おいしいとは思えなかった。
私がコーヒーをなんとか飲み終えると、幸田は出ようと言った。私は言う通りにした。会計はたこ一皿とコーヒー一杯だけで、レジを打った店員は怪訝な表情で私たちを見る。店を出ると幸田はもうなにも言わなくなっていて、ただ私をじっと見つめた後、なんとか作りだしたぐにゃぐにゃの笑顔を私にくれた。そして言う。「あのさ、ひとつ、頼むわ」私は何も言えなかった。
咥えた煙草に火をつけると、幸田はかっこつけて指二本を揃え、こめかみのそばで空を切る。路上喫煙ですよ。私が言うと、彼は嬉しそうに背を向けて、さよならも言わずにどこかに歩いていった。
そして独りぼっちになった私は家に帰る。宿題をする。ご飯はたべない。お風呂に入る。寝る。スマホにオオガミさんから連絡が入っているのに気づく。『次の土曜日、ウチまでこれますか』私は行くと返事をして寝る。
夢を見る。
しみちゃんも私は普通に元気で、オオガミさんに車を出してもらってみんなで海に行く。よっぴーもタカコも江藤先輩もいる。海に行くと幸田がナンパに失敗していて、ビールで真っ赤になりながらぶつぶつ何かを言っている。私たちは海で泳いだり、ビーチバレーをしたりする。バーベキューもする。現実にはいないイケメンの同級生が私を岩陰に連れてきて言う。おれと付き合ってよ。私は恋人がいるからごめんなさいと言う。それって染田さん? うん。そっかごめん。ううん。それじゃあ。帰りの車がちょっとぎこちない。江藤先輩がなんとか場を盛り上げようと頑張るけど、無理だ。そしてみんなとバイバイする。そして次の日、登校してくるとしみちゃんがいない。あれーと思っていると、クラスの雰囲気もなにかおかしい。よっぴーもタカコも私と目をあわせようとしない。そこで私は思い出す。ああそうだ。私はひとりぼっちで、しみちゃんはいつまでたっても起きなくて、いまそんな感じなんだったね。ちょろ~と私の目の端から涙が垂れて落ちる。みんなが私を無視して一日が終わる。それはいつものことなんだけと夢の中ではやっぱりぜんぜん耐えられなくて、私はホームルームが終わった後も一人で自分の席でひんひん泣いている。外が真っ暗になるまで私は教室にひとりでいて、思う。こんなに私は頑張ってきたのに、いろんなひどい目にあってまでやってきたのに、どうしてこんなことになるの?誰も助けてくれない。私は弱い人間なのにみんなが私に責任があるみたいな言い方ばっかりで、私はこのままどこにもいけないでずっと教室で独りぼっちだ。やがて教室には私のよく知る人たちが現れる。佐々木春乃、遠藤孝之、本田一平、高橋颯太、佐々木秋介、春見加奈子、高梨りん、江藤響、江藤鈴太郎、江藤音子、江藤琴音、江藤奏多。あぁ知ってる知ってる。よく知ってるおなじみの人たち。私にひどいことをしたひとたち。私が助けられなかったひとたち。共通点はみんな死んでるってことで。たぶんみんな私に恨みがある。彼らはじっと私を見るだけで、何か怖いことをいったり私を襲ってきたりはしない。ただじっと見ている。汗が身体中からだらだら溢れてくる。我慢できないかも、と思った瞬間に我慢できなくなってわあああああと叫んでしまう。夢なのに!これは夢なのに!夢なのに怖い!夢ってわかってるのにすっごく怖い!
目が覚める。朝になっている。私は汗一つかいていない。顔を洗って、髪をとかして、着替えて、学校に行く。私はぜんぜん夢のことをしっかり覚えているけど、なにも怖いとは思わない。現実と夢って違うんだなと私は思う。
土曜日に私はオオガミさんのところに行く。最寄り駅から鈍行に乗る。電車は少しずつ町から離れていく。車両から少しずつひとが減っていって、最後は私ともう一人、同い年くらいの女の子が残る。女の子はじっと本を読んでいて、でも降り忘れたという感じはない。電車が止まるたびに頭をあげて、駅名を確認しているみたいだった。私はぼーっと景色を見る。自然が増えてきて、人工物が減っていく。
私が電車を降りたとき、女の子も一緒に降りた。私は少し不思議に思うけど、別に話しかけたりはしない。この駅は私のためだけの駅というわけではないんだから、別に知らないひとが降りたって不思議じゃない。私は道かどうかも怪しい、林を分け入る空間に足を踏み入れていく。オオガミさんの神社に向かう道。しばらくすると後ろから足音がついてくる。私はとくに気にせず自分の道を行く。
神社に着くとオオガミさんが迎えてくれる。私は来る時間を指定されていたので彼女が私を迎えてくれたとしても不思議はない。彼女は言う。
「あ、やっぱりふたり一緒に来たんだね」
言われて私は振り向く。後ろにいたのはやはり駅で一緒に降りた女の子だった。かなり痩せていて、あんまり活発な雰囲気はない。どちらかというと、クラスの隅のほうでおとなしくしているタイプ。まぁ私よりはマシなはずだ。それだけは間違いない。
「オオガミさんこのひとは?」「え?」「こちらのかたは誰?」「佐久間ゆり……です」「佐久間ちゃんの話きいてない?」「聞いてないよ」「……」「一緒に来たじゃん」「? 一緒に来たというか、このひとがついてきたというか」「ごめんなさい」「別に謝ることじゃないのよ」「どういうこと?」「あの私、海野先輩と同じ中学の1年で……」「そう……」「とりあえず中はいらない? 喉乾いたでしょ」「その前におトイレ借りてもいいですか」「あらどうぞ。案内します」
オオガミさんと佐久間さんは一緒に小屋の中に入って行く。私はあんまり状況が飲めてないなと思う。二人がなんかやってる間に、私は私の用事を済ませてしまおう。
神社の鳥居の奥には幽霊は入ってこない。たいていそんな感じになっている。どこの神社でもそう。もし鳥居の内側に幽霊がいたら、考えられる可能性は3つ。①そこは神社として機能していない。②そこに祀られているものはもう神様じゃない。③幽霊だと思っているそれは幽霊じゃない。そして例にならって、オオガミさんの神社の外側には幽霊がいた。一人だけ。もう生きてた頃のかたちは忘れてしまったみたいだった。かろうじて元はひとだったんだろうと推理できる形になっている。例えばちょうど股間の位置から飛び出している右手なんかは、指がはちゃめちゃに折れて目も当てられないけど、ちゃんと五本ある。顔も体ももうぐちゃぐちゃでとりあえずこの世界に形をつなぎとめただけみたいな雰囲気だけど、私にはちゃんとその人が誰だかわかる。
私は鳥居の外に出て、彼に呼びかける。
「幸田さん」
ぐちゃぐちゃは一瞬だけ、なにか刺激を受けた筋肉の塊みたいに、ぎゅ~っと縮む。手が私のほうに伸びる。何かを必死でつかもうとする手。私はその手を取る。あまりにも可哀想で、それを掴んでしまう。それは私は引き込もうとする。呪いだ。幸田は〈顔屋敷〉に入った。穢れに触れてしまった。だから呪われた。死んでも魂は囚われ続けている。どこにも行けない。呪いをばらまき続ける。ほかの人間を引き込み続けるのだ。
私は私をどこかに引きずり込もうとする、その冷たい手から始める。幸田。幸田さん。何の役にも立たなかったけど、あなたは最後まで私のことを考えてくれたひとだったんだよね?そう思っていいんだよね?私は彼を信じることにする。そうしたほうが、ほんの少し、世界は優しくなるから。じゃあいただきます。
私は食べる。幸田だったものを食べる。呪いになってしまった彼を食べる。食べられた彼の魂はどこにもいかない。天国にも地獄にもいかない。ただ消える。私の一部になるだけ。それでいい。それが救いになるときだってあるよね。あなたを呪いになんかさせません。
「涼子なにしてんの。お客さんが待ってるよ~」とオオガミさんがプレハブ小屋から私を呼ぶ。お客さん?まったくあのひとは何がしたいんだろうね。私は歩き始める。
「あんた泣いてた?」私の顔をみてオオガミさんが言う。「泣いてないよ」私はそう返して、台所のインスタントコーヒーの瓶を手に取る。食事は喉を通らなくとも、コーヒーだけは飲めたりするのだ。
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