置いてけぼりなんですけど。【談話01】

「へぇ~、君はでも彼のカイネコだろう?」

「半分野良だ。あんたが「アンドロイド」ってやつか?初めて見た。なにやら妙な電磁波でチリチリするぜ。」

「そうだよ~モフモフ(カラスの毛を撫でる)、僕は102号型A-09、って言っても分かんないな・・・それにしても慣れてるんだね?この電波」

「伊達に生きてるわけじゃねぇさ。それよりあんたのことを教えてもらいたいんだが」

「さすが!そうだね、じゃあこれを見てもらったほうが早いだろうね。」

「ほう?ふむふむ。なんだそれは?


・・・


俺置いてけぼりなんですけど


―――(さかのぼること10分前)


アンドロイド。最近都会で流行りだした人型人工知能だが、現物は初めて見た。

星雲のようにキラキラした目、灰色ですら潤うフサフサの髪、前髪が目にちょっとかかってる演出。・・・あれだ、乙女ゲーに出てくるアイドルかなんかの立ち位置にいそうなイケメンだ。笑顔が眩しいなーさすが流行り。流行りは伊達じゃな


「可愛いね。君、?」


・・・・・

駄目だ、AI(精密機械)を殴っちゃいけない。落ち着け。


男なんすよー(乾いた笑)、ハハハ、」


「はははっ(笑)そうだったかぁー、ごめんね?ちゃんと読んでなくて。」


ビキビキと青筋を立てる拳が机の下で震えているところに、カラン、と涼しげな音が響く。ジュースにアイスクリーム、ワンプレートが3つずつ。

暗い笑み(逃げたな)で迎える俺。無視するカラス。


「晩飯はまだだったか?悪ィな、あんたの好みを聞くの忘れちまって。おごろうと思って適当に見繕ったが嫌ならこっちによこしてくれ。このチップがある。」


「おお、覚醒者ネコちゃんだ!」


パッと目を輝かせるアンドロイド。ルビが本音か。


「いいのかい?僕は基本なんでも食べられるし・・・割勘にしたいところだけど、実は財布を持ってなくて。」


「気にするな。俺はジャガル・ダラスだ。アンタの名前はユーリだったな。」


「へえ、凄いや。あんな遠くからでも聞こえるんだね。」


「(椅子に座りながら)進化?によって特定の音波を聞き分けられるようになったらしい。役に立つことといえば餌だろうが、ここにいれば退化しそうだ。なにしろおいしすぎる。」


「あ、ほんとだ。このまろやかな風味、潮風を想いおこす塩見。それにレモンのサワー・・・だけじゃない、これは山椒か。アイス一つとっても一ひねりしていることろが興味深いね。それに


待て、何か話の流れがおかしい。あとデザートから食べるんかいAI。それに猫よ。お前の名前はジャガルではなくカラスのはずである。


「ねぇ。。。ちょっと触ってもいいかな、その毛。」


「いいぜ。」


「・・・おい」←俺


「凄い、モフモフだ!僕のマンションペット禁止でさ~」


「伊達に30年生きてねぇからな。ブランドってもんよ。」


――現在に至る。


「これは複合発電式タブレットさ。お、あったあった。このページだよ。」


「5ちゃんねる?」


「そう!この「名無しNo05」ってのが僕。」


「あんたオカルト趣味だったのか。どうりでここに来たわけだ。」


「・・・あ?」←俺


「未知領域に関しちゃほど熱心な種族はいないと思うよ?」


「ふーん、種族ねぇ・・・普段は何をしてるんだ?」


「ネットパトロール。ちょっとタブレットをカタカタしたりしてたまに散歩する日常だったんだけどね、最近妙な兆候が多いもんだからこれはまずいと思ってたんだ。」


「俺もそれは予感してた。ていうか、仮にもアンタらはその、・・大丈夫なのか。こういっちゃなんだが、元となった機械っていうのは環境で簡単に壊れてしまうほど繊細で脆いじゃねぇか。それが異世界なんて行ったら」


「・・・心配してくれてるのかい?大丈夫だよ。能力解放もね。・・「物には命が宿る」ということわざだけじゃないんだ。」


「それはどういう、


「そうだ、一部訂正しておこうかな。。」


俺+カラス「「な、」」


彼の横顔がかげってみえたのは気のせいだろうか。


突然、ドン!と衝撃があった。慌ててみれば、彼の腰あたりにサイドテールの小さな女の子がしがみついている。


「君はさっきの、」


「知り合いなのか?」


カラスが訊ねる間もなくその子は叫んだ。



「助けて!」





―――memo


アンドロイドー

歴史を話せば朧げになるくらい長いものだが、一言でいえば最近都会で流行りだした人型人工知能だ。

初期は介護からもはや芸術レベルにまで昇華した存在だが、なんといっても彼らが自らの意思を持っている、ということが従来型との違い。

こんなことを書けば人類の立場が脅かされるだのなんだのといった疑問点も出てきそうだ、実際その通りなのはここギルドでも同様である。それらしい少女や猫?と思しき耳をした人もいるようだ。だが、時折冒険者の間で舌打ちや耳打ちをしているのが聞こえてくる。

政治でも物議を醸したことは想像に難くない。実際問題なのは、「意思」の正体が機関によって秘密裏にされていることで、しかもビジュアルとか、機能の多彩さによって爆発的に広がったニーズがその壁を埋めてしまったということらしい。だが事実需要は成り立ち「新たな文化」として一役担っている。

今現在のところ「実験段階」ということでテストされている状態なのだという。

「安全性」「信頼性」「機能性」においてのテスト。あるいは人間本来のコミュニケーションにおいて障害となるか否かにおいては議論が進んでいる。

機械由来ということから、人間との立場に上下関係が生じやすい。

まだまだ偏見も多いようだ。

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