カラスの覚醒編

※R18です。



ーーー――――――――――――――――


「ガあっ・・ぐ」


「惜しいなァ。」

今度は腹部と頭に革靴が直撃し、さんざん受けた激痛とともに視界がゆらぐ。間延びした残念そうな声がきこえる。

「なんだい。」さっきの男が何か取り出した・・バール・・・?

「筋力と声さえなかったら女じゃん。犯してやってたのによ。」

「ああ、ほんとだw」


「ぐッ!!?」


「いっそ去勢しちまうかぁ?」

「うおお怖え怖えwグロいことすんなよ、どうせ「殺る」んだろ?」

「それもそうだ、とっくにキズモノだしなww」


ハハハハハと笑いながら (男3人の)暴力が雨あられと降り注ぐ。力なく手足を動かしてみるが、縄が締まって動けない。


「でもこいつも馬鹿だな、「知らないひとの車に乗るのは危険」って、ママに教わらなかった??」

「おーい、さっきまでの威勢はどうしたぁ?」




〈冒険者希望かい?〉


――「冒険者潰し」


後に「新帝都」と呼ばれる集団は、冒険者、あるいはその意思を継ぐものを迫害し、混沌(カオス)を望む。恐怖の中で支配を作り出そうとする。争いを善とし、裏で暗躍する組織である。


カラスは休憩の途中でまんまと逃げだした。いつもの逃走癖かと思った。

海を背景に走って行って、

だが車はとある山道で止まった。傍には小屋がある。

「坊主」

車を下ろされ豹変した男と、ガチャと隣の男にいきなり向けられた銃口を見た。瞬間、俺は銃を蹴っ飛ばした。銃なんて初めてだったけど。口笛があがるがどうでもいい。問題は、こいつらが国衛を装った詐欺野郎だったってことだけで。


「どういうつもりだテメ―――」


だが遅かった。バン!という破裂音とともに、崩れ落ちる。隠れていた3人目に、背後から足に銃弾を喰らったのだと、気づくまでに時間がかかった。



今に至る。


布の隙間から辛うじて息をする、睨む暇もなく追撃を受ける。声が漏れる。濃い錆びた味。口元から血が垂れてくる。弄んでから殺す。いっそ気絶したいと望むほどに、自分の体力が憎い。

「うーん、そろそろって感じ?」


ガラガラとバールを引きずってくる足元が見える。

「可哀そうな子猫ちゃん?」

悪魔みたいな笑みとともにそのバールが振り下ろされる――ことはなかった。


「あ?」

・・・

何が起こったのかわからない。困惑した顔で周りをみる男。

いない

さっきいたはずの二人が忽然と「消えている」。


「なんだ、飽きちまったか?」


そんなわけがない。今まで俺を蹴り倒していたのだから。再び向き直った男の顔に脂汗が浮いている。その瞬間、


バ シュッ !


黒い線が走り、ギャアあ”ア”!!と絶叫が森の向こうで響いた。

気づくとソイツは目の前にいた。


黒いケモノの脚。


黒いしなやかな胴体、尻尾


紋様が入った顔、黄金色の鋭い瞳。

その顔・・・


(カラ・・ス・・?)

縄が解けていた。


「走るぞ。」


低い男の声が響く。

風が起こり、痛みが走るがカバーされる。お姫様だっこされてることすら何もツッコめない。疲労感と、痛みすぎて麻痺している痛覚と、あとは謎の安心感ともに、

腕の中に崩れ落ちた。






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