当落線上の「健ちゃん」
3回の第二打席に二塁打。5回の第三打席。ギガンテスの投手は左の
それじゃあ俺も右打席にスイッチしますか。両打ちの俺は右打者としての
1B1Sからの直球はまだ本来のキレじゃない。
バットとボールの乾いた衝突音。ボールは再び左中間方向へ。スタンド上段への2ラン本塁打。
「健ちゃん、お疲れ。」
代表の打撃コーチの
「健ちゃん、予定どおり明日は二番手で2イニング投げてもらうから準備しておいて。」
投手コーチの矢間田さんに投手のテストも告げられる。あくまでも俺は「投手枠」だからね。
「健ちゃん、ボールは慣れた?」
国内組の投手陣はWBCの公式ボールの扱いに苦慮しているみたいだ。アメリカのボールは日本のものに比べると「のっぺり」しているのだ。大きいし縫い目も浅いし、表面の皮も日本のものに比べると
「俺はアメリカにそこそこいるんでこれといった違和感はないです。こんなもんかと。」
俺は身長が190cmを超えているため、それなりに手の大きさもある。それに日本の公式球に比べて変化は面白いくらいかかる。だから落ちる球だってフォークはいらない。やや握りの浅いSFFでも十分に落ちるのだ。
さらに言うと、メジャーにはこの変化のしやすさを逆手に取って「ド変態な」変化球を投げる投手も多い。
俺が「国際試合」に強いと言われるのはこう言う
翌日の練習試合は昨日から一転して小雨。昨日が暖かだっただけに余計に寒く感じる。
日曜のせいもあるが大勢のお客さんが来ている。小雨であるにもかかわらずだ。スタンドが公式戦並みに埋まっているのだ。というのも、普段日本で生のプレーを滅多に観る機会がないメジャーリーグで野球をしている選手たちが参加していることもある。
昨日と今日投げるのはメンバー入り当落線上の投手。なので俺も当然、今日は登板がある。昨日の2本塁打で打撃はアピールできたのはいいが。
埼玉ライオンハーツの和久井さんの後を受け、3回から。ギガンテスの安倍さんとはヲリンピック以来のバッテリーを組むことになる。
「安倍さん、2回は右一本で行きたいんですけど。」
俺は両投げなのだ。打者ごとに左右を変えてもいいのだが、ここは右の俺と左の俺をしっかりとアピールするには1回ずつ投げることにしたのだ。
「直球が走る方やったな。なら健ちゃん、
「おまかせします。」
ギガンテスの9番打者から。勝手知ったるチームメイト相手に安倍さんはなんともエグい攻め方。外角低めいっぱいに4SB。同じコースにブレーキの利いた4SG。同じフォームで同じ球筋に来たら、初見で打てるのは名選手クラス。面白いように空振りが取れる。まずは三振。
日本代表に何人か抜いたとはいえセリーグ覇者。一番打者は
次の要求はインハイぎりぎりに4SB。ホップ気味にひと伸びして見えるのでのけぞってしまった。思いっきり睨みつけられる。そりゃこの時期に怪我したくはないでしょうが、安心してください。コントロールは魔法制御ですから。それにコースに決まっているのでストライク。
支援魔法「命中率アップ」。もとは
そして外角低めの4SG。自信満々に見送ったものの、コース目一杯に決まってストライク。見送り三振。むちゃくちゃ悔しそう。サインを出してる方を恨んでくださいね。ギガンテスの若手ナンバー1打者からの三振奪取は小気味よい。
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