第6話 自由
輝彦は、デッキの洗面所に向かった。
二階の個室からは、階段を数段降りて
デッキに向かうのだが
やや、天井が低く感じられるあたり
独特なムードがあり、楽しい非日常感。
洗面所は明るく、蛍光灯の白い光が目映い。
鏡に映る顔を見ながら、友里恵は
どうして僕に?と思い
助けを求めていたのではないか、とも思った。
自由っぽいから好き、と
友里恵は、輝彦をそう評価し
いつも、子犬のようにじゃれて来るのだった。
とても愛らしく
日常に見せる、緊張した攻撃的な少女とは
別人に思えた。
それは、おそらく
甘え、なのだろう。
でも、少女らしい願望は果てしなく
「好きな人と一緒にいたいから、就職しないで
お店で働く」
などと友里恵は言い、おとぼけ輝彦は
誰か好きな人が居るのかな、などと
思ったりした(笑)。
そして、いつもお店が終わると
友里恵は、輝彦の誘いを待ち
パーキングの、輝彦の車のところで
待っていたりもした。
「どっかいこーよ」と、親にねだるように
友里恵は、輝彦に甘える。
「そうだな、温泉とか」と、輝彦が言うと
「うん、温泉好きー。いこ?」なんて
にこにこする友里恵は、とても愛らしい。
そういえば輝彦はフリーライターだし
生まれ育った家に住んでいる。
旧家だし、別にあくせく働く事は無かった。
高校生とそんなに変わらない環境だと
輝彦は自嘲っぽく思う。
でも、友里恵から見ればおじさんなのに
どうして、クラスメートみたいに接する事ができるのだろう。
友里恵は、他の大人には
きちんと、敬語で話す事の出来る子なのだ。
それは、少年時代を想起すると
なんとなく分かる。
女の子たちは、仲が良くなると
呼び名を変えたりして、親密だと
思いたくなるのだろう。
でも、どうしておじさんの僕に、と
輝彦は尋ねる。
友里恵は、にこにこ。「おじさんに見えないもん。
クラスの男の方がよっぽどおじさんっぽい。
様子ばかり気にしてるし、暗いし」
それはそういうものだろうと思う。
若いうちは、エネルギーが余ってしまって
つい、暴力的な衝動に駆られるから
それを抑えないとならないので
不満爆発、で、暗いのだ。
反対に女子は明るい。
遊ぶ事に一生懸命だから。
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