第4話 由加


それが愛に拠るものだ、と定義するのは

いかにも人間的である。


その証拠に、輝彦は

他のJKたち、例えば友里恵の友人に

由加と言う子が居たが


どういう訳か「由加とは遊んでくれないんですかー」


などと言い、友里恵のようにすり寄って来る(笑)



年老いた女のような振る舞いだが、実際の

彼女たちは、そんなに体験豊富な訳でもなく

ただ、度胸試しのような雰囲気で

自らの魅力を競い合っているのだろう。



そのあたりが今のJKの面白い所で

挑発的な、危険な事をしたいと言う傾向があるらしい。



しかし輝彦は、なぜか由加を愛したい、抱きしめたいと

思わなかった。


不思議な事だが、そういうものなのだろう、それが

人間の愛である。



と、輝彦は思っていた。



友里恵たちを見ていても、過去の女性たちを回想しても


そう思える輝彦であった。



男はいつも、求めに応じるだけである。




友里恵は、コンピューターゲームをしたりして

不登校になった時を過ごしていたと言う。


見た目がきれいでおとなしく、小柄な女の子に

結構いじめの被害は多いと聞くが


要するに僻みである。


輝彦も、なぜか女性にモテるので

同じように僻んだ男から嫌がらせを受けた事もあるが

長身であるので、被害には至らなかった。


単純な理由である。



友里恵は、ネットワークゲームは嫌いだと言う。


なぜ、と聞くと


「通信の相手が、人間だと意地悪したりする」と。



なるほど。



確かに、現実逃避でネットワークゲームをする人には

現実を嫌っているので、そうする人もいるかもしれない。



それが、輝彦たちの住む世界とは違う所だと

彼は自認した。


古いタイプの人間は、やってはいけない事は

やらない、ものであった。



今はそうではない。


例えば、政治を悪用して原発利権を作ったりと言う

ような事は、昔の人間はしなかった。


それは戦後に起こった事で、タブーを無視して

欲に走った結果である。



言ってみれば、反社会的行為だ。


それが、末端の友里恵、のような幼気な少女を

苦しめている。



たぶん、輝彦は友里恵を守ってあげたいと

思ったのだろう。


そういう愛、なのだ。



同じようなJKたちに愛を感じないのは

別に、守る必要がないから、なのだろう。








でも、友里恵も由加も、クラスメートたちも

みんな、男たちの歪んだ欲望の捌け口として

攻撃の対象にされていると思うと

同様に可哀想だとは思う。


サンライズ・エクスプレスは、瀬戸大橋を渡り

岡山駅に向かっている。

輝彦は、シャワー室の隣で

ヘア・ドライヤーを使いながら、鏡に映る自分を

なんとなく眺めていた。


友里恵は、僕の事を「自由でいい」って言っていたっけ。



それは、生き方の違いだ。

フリーな立場に居ると、安定はない。

代わりに、立場を気にしないでいいだけの事だ。




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