第30話 第4階層 ダンジョンのボス


「次はお前だ、デュラハン!!」


 ハヤトはデュラハンを睨む。


「いいだろう! 相手になろう。だが、俺は不死の身。通常の攻撃は効かん」


 デュラハンは大剣をハヤトに向ける。


「それはどうかな! 試せばわかるよ! 一発必中!!」


 ホノカはデュラハンに向かって矢を射る。


 デュラハンの胸に矢が突き刺さる。


 ……


 何も起きない。

 デュラハンのライフは100のままだ。


「言っただろう。俺にダメージを与えれるのは『信頼のつるぎ』だけだ」


 デュラハンは矢を引き抜いて捨てる。


「信頼の剣? どこにそんな武器があるんだ?」


 ハヤトはあたりを見渡す。


「女子たちよ、目の前の剣を握るがよい! それが信頼の剣だ。その剣が選んだパートナーとの信頼度で剣の強さが決まる!」


 デュラハンは呪文を唱える。


 ホノカ、レナ、リンの前に剣が現れる。


 サビ付いてボロボロな剣。

 今にも折れそうだ。


 三人は剣を握る。

 剣が勝手に動き、パートナーを指し示す。


 ホノカの剣はハヤトに向く。

 レナの剣はヨウスケに、リンの剣はレンタロウを指し示す。


「意義あり。他の相手に変更できないかしら?」


 リンはデュラハンに問う。


「剣が選んだ相手は変更できん。さあ、その剣で選んだ相手を切りつけてみろ! 信頼し合っていればその剣は真価を発揮する!!」


 デュラハンはリンの要望を却下する。


「ハァ……あなたとペアなんて……ついてないわね」


 リンはゴミを見る目でレンタロウを見つめる。


「そこは喜ぶところでゴザろう! はっ! もしや……拙者とパートナーになれて負い目を感じてるでゴザルかっ? 安心するでゴザル! リン殿もなかなかでゴザルよ!」


 レンタロウは親指を立てる。


「そう……じゃあ、しっかり歯を食いしばりなさい」


 リンは信頼の剣を両手で持ち、上段に構える。

 狙いをレンタロウに定める。


「ちょっ、リン殿!? 拙者、まだ心の準備が――」


 リンはレンタロウの頭に信頼の刀を振り下ろす。


「あいたぁぁああっ! 黒田 官兵衛くろだ かんべえ!!」


 レンタロウの頭に刀がめり込む。

 ライフが40になる。


「なんだ……真っ二つにならないのね……」


 リンは残念そうに呟く。


「発想が怖いでゴザルよっ!! しかしその剣、何も変わってないでゴザルよ?」


 レンタロウはボロボロな剣を指でつつく。


「信頼関係がないからだ。だが安心しろ。戦いの中で信頼関係が生まれれば、それが剣にも反映される」


 デュラハンは飽きれたように言う。


「次はボクたちの番だ、ハヤト先輩! ボクはキミとパートナーになれて嬉しいよ! ボクはキミのことを絶対的に信頼してるんだ。中学時代、キミはボクを救ってくれた。キミはボクのヒーローだよ!」


 ホノカは優しく微笑む。

 信頼の剣を振り上げる。


「ホノカ……俺もお前を信頼してる。お前だって、このダンジョン攻略で俺たちを何度も助けれくれたじゃないか」


 ハヤトはホノカの瞳を真っ直ぐ見つめる。


「嬉しいよ……。ボクはキミの絶対的味方なんだ。だから安心してくれ。この剣はキミを傷つけない。いくよっ!」


 ホノカは信頼の剣をハヤトめがけて振り下ろす。


 剣はハヤトの体をすり抜けて地面に突き刺さる。


「ねっ? 言っただろ。ボクはキミの絶対的味方だって」


 ホノカはニッコリと笑う。

 信頼の剣を地面から引き抜く。


「まっ、眩しい! 剣が光り輝いているよっ!!」


 信頼の剣が白く輝き始める。

 ホノカは信頼の剣を眩しそうに見つめる。

 サビは取れ、ボロボロだった刃先は完全に復活している。


「なんという輝き! 信じられんっ!!」


 デュラハンは驚きの声を上げる。


「次は私たちの番ね! 頑張るわよ!」


 レナはヨウスケを見つめる。


「う、うん! きっと大丈夫だよ! ボクはレナさんを信頼してるよ。ダンジョンで敵の攻撃からいつも守ってくれてありがとう。それに学校でも、学級委員長としてクラスをまとめてくれてるもん」


「そ、そんなことないわよっ! 面と向かって言われると恥ずかしいわねっ! まあでも、私もあんたのことはわりと信頼してるのよ。あんたの魔法がなかったらここまでこれなかったしね」


 レナは顔を赤らめてプイと横を向く。


「れ、レナさん、ありがとう……」


 ヨウスケはちょっぴり涙目になる。


「でもっ! あなたのロリ巨乳好きは頂けないわよ!」


「それまだ引っ張るの!?」


 ヨウスケは叫ぶ。


 レナは信頼の剣を振り上げる。


「まあでも……信頼してるわよ。それに……」


 レナは顔を赤らめる。

 小さい声でこう付け加えた。


「私も家で……ぬ、ぬいぐるみに話しかけるのよ……」


 レナは剣を振り下ろす。


 信頼の剣はヨウスケの体をすり抜けて地面に突き刺さる。


 レナは剣を地面から引き抜いて真上に掲げる。


 剣が白く輝き始める。


「ほう、見事だ! 信頼の剣は二人で一本。男女どちらが装備しても構わん。戦闘能力が高い方が持つんだな。さあ、かかってこい!!」


 デュラハンは大剣を前に突き出して戦闘態勢に入る。


「ホノカ、俺が信頼の剣を持つ! お前は弓で援護してくれっ!!」


「うん、わかったよ! あいつは強い。気をつけてくれよ!」


 ホノカはハヤトに信頼の剣を渡す。


「いくぞ、デュラハン!!」


 ハヤトはデュラハンの懐に飛び込む。


「フンッ!」


 デュラハンは大剣を水平になぎ払う。


 ハヤトはしゃがみ込んで大剣をよける。


「さぁああっ!!」


 ハヤトはデュラハンの胴体を切りつける。


「踏み込みが甘いぞっ」


 デュラハンが後ろに跳んでハヤトの剣をかわそうとしたとき――


「ん? 矢が!?」


 デュラハンの右膝に矢が突き刺さる。

 ホノカが放った矢。

 デュラハンの動きが一瞬遅れる。


 信頼の剣がデュラハンの胴体を斜めに切る。

 デュラハンの甲冑に亀裂が走り、ライフが90になる。

 亀裂の中は漆黒の物質で満たされている。


「くっ……だが傷は浅い! なめるなっ!」


 デュラハンはハヤトの膝にキックを食らわせる。


 ハヤトの体は宙に浮き、そのまま地面に倒れる。

 ライフが80になる。


「これで終わりだ!」


 デュラハンは大剣をハヤトめがけて振り下ろす。


「ハヤト先輩っ!!」


 ホノカが悲痛な叫び声をあげる。


 ドゴォォォォォーン!!


 轟音が広場一面に鳴り響いた。


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