第29話 第4階層 眷属 その2


「フッ……やれるものならやってみろ。だが、俺の眷属を倒せたならな。いでよ、シャドウ・ガーゴイル!」


 デュラハンは叫ぶ。


 デュラハンの影から一匹の魔獣が浮かび上がる。

 猿のような見た目。全身が漆黒の毛で覆われている。

 頭に二本の角。背中に翼が生えている。


「グギャァァァアアッ!!」


 シャドウ・ガーゴイルは金切り声を上げてハヤトに襲いかかる。


「うりゃぁっ!」


 ハヤトは右ストレートパンチを打ち込む。

 シャドウ・ガーゴイルはしゃがみこんでハヤトのパンチをかわす。


 突如、シャドウ・ガーゴイルの姿が消えた。


「なっ! 俺の影に潜り込んだっ!」


 ハヤトは自分の影にむかってパンチする。

 地面に穴があくが何も起きない。


「効果なしか……」


 ハヤトは自分の影を見つめる。


「は、ハヤト殿? 大丈夫でゴザルか?」


 レンタロウはハヤトに近づく。


石田 三成いしだ みつなり!」


 レンタロウはハヤトに殴られて奇声を発する。

 レンタロウのライフが70になる。


「なっ、何するでゴザルか!! 痛いでゴザルよ!!」


 レンタロウは涙目になって殴られた頬をおさえる。


「かっ……体が勝手に動くんだっ!」


 ハヤトは体を小刻みに震わせる。

 額から大粒の汗が流れる。


「みんな気をつけて! シャドウ・ガーゴイルに影を操れているんだわ。影を動かすことで、ハヤトくんの体も動かせる能力なのよ!」


 リンはハヤトの影を睨む。


「と、とにかくハヤト殿の動きを封じるでゴザル! レナ殿、一緒にハヤト殿を抑えるでゴザルよ!」


 レンタロウはレナに目配せする。


 レンタロウとレナはハヤトを両脇から挟んで抑える。


「……あれ? 体が自由に動くぞ? いてっ!」


 ハヤトはレンタロウに刀で殴られる。

 ハヤトのライフが95になる。


「今度はレンタロウかっ! あいつは影から影に移動できる! みんな、影が重ならないように距離をとるんだ!!」


 ハヤトとレナはレンタロウから離れる。


「あいたっ! 痛いでゴザル!」


 レンタロウは自分の頭を刀で殴る。

 レンタロウのライフが60になる。


「くそっ! 近づけば影を乗っ取られちまう。何もしなければレンタロウがやられる!!」


 歯ぎしりするハヤト。


「ボクが魔法を使うよ! 影を消せばあいつは隠れられない。ランダム魔法!!」


 ヨウスケのマジックポイントが70になる。

 杖の上に文字が浮かび上がる。


『魔法:ホワイト・ライト』

『発動条件:パーティからランダムに対象者が選ばれる。対象者の最近のプライベートが再現される』


「よかった!! 今度はボクじゃないかもしれない! 2年B組 飯田 陽介、誰かのプライベートを暴露します!!」


 ヨウスケは嬉々として叫ぶ。


 床に魔法陣が浮かび上がる。

 ベッドの上に寝転んでいるヨウスケが現れる。

 ハリネズミのぬいぐるみを手にしている。


「ハリー、聞いてよ。今日もダンジョン攻略は大変だったよ~」


 再現されたヨウスケはハリネズミのぬいぐるみに話しかける。


「お疲れさまでハリ! でもヨウスケは頑張ったでハリ。偉いハリよ!」


 再現されたヨウスケは裏声を使ってぬいぐるみの声を出す。


「結局僕だったぁぁあああー!!」


 ヨウスケは頭を抱える。


「プークスクスッ! ヨウスケ殿はぬいぐるみに話しかけるでゴザルか~。しかもハリネズミだからハリー! 安直すぎるでゴザルぅううっ!!」


 レンタロウは腹をかかえる。


「い、いいでしょ、別に! ボクは動物アレルギーだからペットが飼えないんだよっ! それに、レンタロウくんを助けるために魔法を使ってるんだよっ!?」


 ヨウスケは顔を赤くして反論する。


「さすがだぜ、相棒! 発動条件クリアだぜぇ! きっと今頃、ハリネズミのハリーも喜んでるにちげえねぇ! いくぜ、ホワイト・ライト!!」


 バロンの周りに無数の光る玉が現れる。

 光る玉は空気中に広がり、あたり一面を明るく照らす。


 レンタロウの影が消えた瞬間――


「グギャッ!」


 シャドウ・ガーゴイルがレンタロウの影から飛び出す。


「逃がさないよ! 一発必中!!」


 ホノカの矢がシャドウ・ガーゴイルの翼を貫く。


 シャドウ・ガーゴイルはバランスを崩して地面に落下する。

 ライフが80になる。


「うりゃぁあっ!」


 ハヤトの右ストレートパンチがシャドウ・ガーゴイルの顔面を捉える。

 シャドウ・ガーゴイルは吹き飛ばされ、ライフが40になる。


「ハヤト、そっちに弾き返すわよっ! えいっ!!」


 レナは自分のほうに吹き飛んできたシャドウ・ガーゴイルを盾で弾き返す。

 シャドウ・ガーゴイルのライフは30になり、ハヤトのほうに吹き飛ばされる。


「とどめだ!!」


 ハヤトはシャドウ・ガーゴイルにかかと落としを食らわせる。


 地面に叩きつけられるシャドウ・ガーゴイル。

 ライフが0になり、煙となって消えた。


「次はお前だ、デュラハン!!」


 ハヤトはデュラハンを睨んだ。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る