第4話 第1階層 マロンちゃん その2
「私はこのダンジョンの案内役・
マロンは額の前でピースサインを作り、ウィンクする。
「わかった。それでマロンちゃん、俺たちは本当にゲームの中に吸い込まれたのか?」
ハヤトは訪ねる。
「うん、そうだよ! ハヤトお兄ちゃんたちは宇宙人が作ったゲームの中にいるの。でも安心してね☆ このゲーム内で死んじゃってもログアウトするだけだよ。一日一回だけこのゲームにログインできるよ!」
「そうか。このゲームをクリアしたら願いを叶えてくれるってのも本当なんだな?」
「うん、本当だよ☆ でも空を飛ぶとか死人を復活させるとか、地球の法則に反するのはダメだよっ」
「なぬっ!! 聞き捨てならぬでゴザル! もしや、女子高生が乗る自転車のサドルになるのがダメという可能性も万に一つはあるでゴザルか?」
「余裕でダメだよ☆ 万に万でダメ。でもレンタロウお兄ちゃんの特殊な変態性癖なら直してあげれるよ☆」
「拙者はいたってノーマルでゴザル! マロン殿も大人になればこのロマンがわかるでゴザルよ!」
「え~マロン、そんな特殊なロマン、分かりたくなーい」
「うるせぇ! 話がこじれるからレンタロウは黙ってろ!」
ハヤトはレンタロウの口を押えて黙らせる。
「それでマロンちゃん、このゲームはどうやってプレイするんだ?」
「高校生6人でパーティを組んでダンジョンを攻略するの☆ 最下層にいるボスを倒したらゲームクリア。各階層には敵がいるよ。みんなで力を合わせて敵をやっつけてね☆」
「そうかわかった。それでこの服装はなんなんだ? 俺は武器を持っていないけど……」
「冒険者の職業に応じて服装と武器が決まるんだよ☆ ハヤトお兄ちゃんは『武闘家』。攻撃力とスピードが高いよ。スキルは『憤怒の拳』。キレたときだけ発動できるの☆ ハヤトお兄ちゃんがこのパーティのリーダー・勇者だよ」
マロンはヨウスケに視線を移す。
「ヨウスケお兄ちゃんは『魔法使い』だよ☆ でも魔法を発動するには条件を満たす必要があるの。魔法は『マジックポイント』を消費するから気をつけてね☆」
「拙者は武士でゴザろう! さぞ攻撃力が強いであろうな。スキルは『一刀両断』でゴザるか?」
レンタロウは日本刀を抜いて構える。
「うん! レンタロウお兄ちゃんは武士だよ。でも攻撃力も防御力も弱いの。その刀はなにも切れないよ☆」
「……へっ? そんなバカなっ! マロン殿、何かの間違いでゴザろうっ!! きっとその代償として強力なスキルがあるでゴザろうっ!?」
「え~~っと、あっ! ほんとだ! レンタロウお兄ちゃんにもスキルがあったよ☆」
「そうでゴザろう! 強力なスキルにはそれ相当の代償が伴う! それがゲームのセオリーでゴザル。それでそのスキルとはなんぞや!?」
「スキルは『イカ墨』だよ☆ 刀の先っちょからイカ墨がでるの。次はホノカお姉ちゃんだね! お姉ちゃんは『狩人』だよ☆ スピードが速いの。スキルは『一発必中』。狙った場所に矢が刺さるよ☆」
「待つでゴザルッ! おかしいでゴザルよ!! 刀の先っちょからイカ墨がでてもパスタ作るときしか役に立たぬでゴザルよっ!!」
レンタロウはマロンの前に立つ。
「そんなこと言われてもマロンわかんない。そういうゲーム設定なんだもん……」
「そこをなんとかならぬでゴザルか? ほ、ほら、お兄さんがどこかでアイスクリーム買ってあげるでゴザルよ?」
「お母さんが知らない人からお菓子をもらっちゃダメっていってた。変質者だからって。お母さんの言葉はやっぱり本当だったんだね☆」
「どういう意味でゴザルか!? 後生でゴザル、スキルを再考してくだされ!!」
レンタロウはマロンの両肩に手をかけて揺すぶる。
「うざ……」
「へ?」
レンタロウが自分の耳を疑ったとき――
マロンはジャンプする。
「マゲェェェェエ!!」
レンタロウの頭にマロンの踵が食い込む。レンタロウは奇声を発する。
「しつこい言うてるんじゃいっ!! この変態侍がぁ! これ以上ガタガタ抜かすとケツの穴から手ぇ突っ込んで奥歯ガタガタ言わしたるぞ、あぁ!!」
マロンはレンタロウの襟首を掴みガクガクと揺らす。
「ひ、ひぃ~……ごめんなさい! 許してくださいでゴザル~」
涙目になるレンタロウ。
「わかってくれたんだ☆ マロン、嬉しい! じゃあ次はレナお姉ちゃんの説明をするね☆」
何事もなかったかのように無邪気な笑顔でマロンは説明を続ける。
「レナお姉ちゃんは『盾の騎士』だよ☆ 防御力が高いんだ! みんなを守ってあげてね☆ スキルは『ダメージ転移』。攻撃を受けると自動で発動するよ」
「マロンちゃん、それはどんなスキルなの?」
レナは続きを促す。
「受けたダメージをレナお姉ちゃんが着ている特殊な服に転移できるの。だからライフが減らないんだよ☆」
「凄いわねっ! 敵の攻撃を私が受ければ、誰もダメージを受けないっ!」
「でも……このスキルは弱点があるの。服にダメージを転移すると服が破れちゃうの……」
「「えっ!」」
レナとレンタロウがハモる。
レナは驚き、レンタロウは心底嬉しそうだ。
「ちょ、ちょっと待って!! ダメージを受けるたびに私の服が破れていくってことっ!?」
「うん、そうだよ☆ PTAには内緒だよ☆」
マロンは人差し指を唇の前にもってきてウィンクする。
「素晴らしいでゴザル! これぞ健全な高校生活!! さあ、今すぐ敵を倒しに行くでゴザるぞっ!!」
レンタロウが頬を紅潮させて叫んだとき――
「ひとの話は最後まで聞けやぁ!!」
マロンはレンタロウの首に水平チョップを食らわせる。
「鎖国ぅぅぅうう!!」
泡を吹きながら奇声を発し、レンタロウは床に倒れる。
それを目の当たりにしたレナは歯ぎしりをし、マロンの説得を諦める。
「最後にリンお姉ちゃんだね☆ お姉ちゃんは『ブックマスター』。本の中の物事を具現化できるんだよ! でも本はログインのたびに変わるし、自分では選べないの。マジックポイントがなくなると使えないから気をつけてね☆」
「わかったわ。ありがとうね、マロンちゃん」
リンは静かに答える。
「さーてと、説明は以上だよ☆ お兄ちゃん、お姉ちゃん、頑張ってね!! バイバーイ!!」
マロンは無邪気に手を振る。
みんなも手を振り返す。
「あっ! ひとつだけ大切なこと忘れてたっ! マロンのお馬鹿さんっ☆ 『ライフ』について説明してなかったね」
マロンは自分の頭をコツンと叩く。
「『ライフ』の説明するね! レンタロウお兄ちゃん、こっちに来てほしーな☆」
マロンは甘えた声を出す。
「えっ! ライフなら知ってるでゴザルよっ! ゼロになるとログアウトするやつでゴザろう!? お忙しいマロン殿にわざわざご説明頂く必要もないでゴザルよっ!!」
危険を察してレンタロウは必死に拒否る。
「いいからいいから☆ マロンはこのダンジョンの説明役なの。みんなにちゃんと説明しないといけないんだもん☆」
「いやいやいや! お気持ちだけでもう十分!! 拙者たちは準備万全でゴザルよっ!」
「早くこんかいっ!!」
「御意!! 今すぐ参るでゴザル!」
レンタロウがマロンに近づいたとき――
「シャーッ! このコノヤロウ!!」
マロンは顎を突き出ししゃくれる。
「ヘっ?」
レンタロウがそのしゃくれに気を取られた瞬間――
マロンはレンタロウの背後に回り込む。
後ろからレンタロウを抱きしめた。
マロンの両腕はレンタロウのお腹にしっかりと巻き付いている。
「いくぞー! イチ! ニイ! サン! ウチュー!!!」
マロンはレンタロウを抱えたまま腰を後方に反らせ、レンタロウを反り投げる。
プロレス技『ジャーマン・スープレックス』だ。
「のぶながぁぁぁ!!」
レンタロウは後頭部から地面に激突する。
黄色いバーがレンタロウの上に出現する。
バーの値が100から70に減少した。
マロンは両足を蹴り上げ、もう一度、投げ飛ばす前の態勢に戻る。
「シャーッ! もう一発行くぞ、このヤロウ!! 声援、ヨ・ロ・シ・ク!!」
マロンはハヤトたちに向かって叫ぶ。
「「「「「「イチ! ニイ! サン! ウチュー!!!」」」」」」
今度はみんなでハマる。
レンタロウは綺麗な弧を描いてマロンに投げられる。
「みつひでぇぇええ!」
レンタロウは後頭部から地面に激突する。
黄色いバーは70から40に減少する。
マロンは右腕をクルクルと回している。
「「「「「レッツゴー・マロン!」」」」」
「「「「「レッツゴー・マロン!」」」」」
マロンコールが響き渡る。
「
レンタロウはフラフラしながら立ち上がる。ブツブツとうわ言を呟いている。
「いっちゃうぞ! バカヤロー!!」
マロンが叫ぶ。右腕を水平に伸ばしたまま全力でレンタロウに駆け寄る。
プロレス技『ラリアット』だ。
マロンの右腕がレンタロウの首に激突する。
レンタロウは空中で3回転し、顔面から地面に叩きつけられた。
「本能寺ぃぃいー!!」
レンタロウの黄色いバーが40から0になった。
ボンッ!
効果音とともにレンタロウは煙となって消えた。
「愛してま~す!」
マロンはエアギターパフォーマンスをしたあとにそう叫んだ。
「ねっ☆ さっきの黄色いバーがライフだよ! ライフは大事にしてね!! レンタロウお兄ちゃんは明日までこのゲームに参加できないよ☆」
マロンはウィンクする。
「でも……いい運動になったし、今回は特別! レンタロウお兄ちゃんを復活させてあげる☆ みんなで協力して敵をやっつけてね!!」
マロンは指をパチンとならす。
ボンッ!
効果音とともに無傷のレンタロウが現れた。
「それじゃあ、お兄ちゃん、お姉ちゃん、バイバーイ!!」
マロンは手を振る。
マロンの体がだんだん透明になり、すぐに消えた。
突然、地面が揺れだす。
「なんだ、地震か?」
ハヤトはあたりを見まわす。
「前方に何かいるわっ!!」
レナは盾を構える。
床が盛り上がり、3m近いゴーレムが4体現れた。
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