第3話 第1階層 マロンちゃん


「ん……? ここは一体……」


 気がつくとハヤトは薄暗い部屋の中で仰向けになっていた。

 岩でできた床の冷たさが背中を伝わってくる。


「ハヤト殿! やっと目を覚ましたでゴザルかっ! 大変なことになったでゴザル!!」


「レンタロウか? ってその服はなんだ!?」


 声のほうを振り向いてハヤトは目を見開く。


 さっきまで高校のブレザーだったレンタロウ。

 今は薄紫色のはかまを着ている。

 腰には一本の長い日本刀を携えている。


「それが拙者にもさっぱりわからぬでゴザルよ。スマホに吸い込まれたと思ったらこの服を着てたでゴザル」


「ボクも同じだよ。服装的にボクは魔法使いかな?」


 ヨウスケがレンタロウの後ろから現れる。

 フードの付いた真っ黒い服に全身が覆われている。

 右手には背丈ほどもある木の杖を握っている。


「どんな魔法を使えるのかなー? 楽しみだね!」


 嬉しそうにヨウスケは杖を振り回す。


「ハヤト殿はなんでゴザろう? 何も武器を身についておらぬが?」


 レンタロウに言われて、ハヤトは自分の服装に目をやる。

 上半身は裸に青いベストのみ。

 下半身は白い幅広なズボンを履いている。


「ハヤト先輩! キミはハヤト先輩じゃないかっ!! 会いたかったよ! 一日に二回もキミに会えるなんでボクは幸せものだよっ!」


 暗がりの中からホノカが飛びだしてくる。ハヤトの胸に抱きついた。


「ちょ、お前っ、その服っ!!」


 ハヤトは顔を真っ赤にしてホノカを引き離そうとする。


 ホノカの服装は緑色のビキニ。

 腰に茶色い布切れを巻いているが圧倒的な肌色成分!!

 弓と矢を背中に背負っている。


「あの童顔にあのナイスバディ! 1年2組のホノカ殿ではないか! 学年一かわいいホノカ殿のこれほど神々しい御姿を目の当たりにできるとはっ!! 拙者、武士に生まれて良かったでゴザルよ!」


 涙を流すレンタロウ。


「怖いよっ! レンタロウくん! 入学したばかりの女子の名前をしってるなんて……。ストーカーは犯罪だよ! 武士はなんにも関係ないし!」


「拙者はストーカーではゴザらん! あんな犬畜生にも劣る外道と一緒にしないでほしいでゴザル!! ストーカーから女子生徒を守るために、女子の名前を暗記しているだけでゴザル!!」


「お巡りさん、こいつですっ! ボクの友達でほんとうは良いひとなんです! 刑期は短くしてください!!」


 ヨウスケはレンタロウの袖を捕まえる。


「静かにしなさいっ! 敵に私たちの居場所を教えるようなものよ!!」


 暗がりの中から鋭い声が飛んでくる。


 真っ赤な瞳。燃えるように赤い長髪。

 赤司あかし レナが現れる。

 白いブラウスに真っ赤なミニスカート姿だ。

 背丈ほどもある深紅の盾を装備している。


「レナさんの言う通りよ。まあ、敵が現れたらストーカー侍を餌にして私たちは逃げればよいのだけれど」


 雪城ゆきしろ りんも現れる。

 黒ジャケットに黒いタイトスカート、縦ストライプ入りの白シャツというスーツ姿だ。右手に分厚い古本を抱えている。


「とにかくみんな落ち着いて! まずは現状整理が最優先よ。スマホが光りだして体が浮いたと思ったら、スマホに吸い込まれて今ここにいる。この理解でいいわね?」


 レナの質問にみんなが頷く。


「じゃあやっぱり、ここはあのゲームの中ね……」


 レナは辺りを見渡す。


 岩の壁に囲まれている。

 部屋の広さは学校の体育館ほどだろう。

 出口はどこにもない。


 パッパラパーン☆


 安っぽい効果音が部屋中に響く。


「『ドキドキッ! 宇宙人のダンジョン☆攻略大作戦!!』へようこそ! 高校生のお兄ちゃん、お姉ちゃん、力を合わせて頑張ってね☆」


 小学生みたいなロリっ子が現れる。

 ツインテールに結んだピンク色の髪。

 フリルの付いたピンク色のワンピース。

 ピンクのランドセルを背負っている。


「私はこのダンジョンの案内役・宇宙丸うちゅうまる マロンだよ! マロンちゃんって呼んでね!」


 マロンは額の前でピースサインを作り、ウィンクした。



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