第126話「見られたくなかった(絶望)」
「俺の解放ですか……?」
「大きな家に生まれた子は、全てが恵まれているわけではありません。家からの恩恵を返すために、家のために生きねばならないのです。政略結婚も、その一つでしょう」
確かにそれは、俺も覚悟していたことだ。
むしろ俺は、姫柊財閥の一員になり、姫柊のために尽くすことで、花音さんへの罪滅ぼしをしようとしていた。
それに俺も、花音さん経由とはいえ、姫柊財閥のお金で育てられている。
どうこう言える権利はないだろう。
「シャーロットさんと許嫁になるということも、結局は正式に姫柊家に入ってもらうことになり、それはつまりお父様の
花音さん側が用意した相手とはいえ、結局は政略結婚であり、その後も姫柊社長の言葉に俺は従わねばならなかった、ということだろう。
それを防ぐために彼女は動いてくれたようだ。
花音さんは、シャーロットさんと同じくらい優しい。
自分に何も得がなく――いや、損をしてでも、俺のために動いてくれる人なのだ。
だから俺は尊敬しているし、大切に思っている。
「賭けの内容はなんだったのでしょうか?」
「明人が自分の利益と恋人、どっちを選ぶか――ですね」
「……待ってください、二点ほど疑問が出てきました」
笑顔で答える花音さんに対し、俺は冷や汗が背中を伝う。
「有紗さんが俺のところに来たのって、付き合うようになった翌日なんですが……?」
そう、忘れるはずがない。
シャーロットさんと付き合うようになった翌日に、有紗さんが俺の部屋に来たのだから。
「あ~、まぁそれはそれとしまして」
しかし、花音さんは笑顔で話題を変えようとする。
更に嫌な汗が出てきた。
「俺、いつから監視されていましたか……?」
翌日に来たということは、監視されていたとしか思えない。
いや、さすがに疑いたくない部分ではあるのだけど……。
「まぁ、最初からですよね」
花音さんは諦めたように、そう視線を逸らしながら答えてくれた。
最初とはいったいどこだろうか……?
「俺が高校生になってから、ということですか?」
「いえ、私と一緒にいるようになってからです」
「…………」
人には、それぞれ知られたくないことがある。
俺だって、プライベートでは知られたくないことなんて沢山あるのだ。
それが全て誰かに見られていて、花音さんに筒抜けとなっていたと考えると――絶望しかない。
シャーロットさんとのデートや告白だって、見られていたってことじゃないか。
「もうやめて頂くことは……?」
「これからは自由ですからね。それに、私たちも一緒に暮らすわけですし、必要ないと思います」
それなら……ギリギリ、セーフなのか?
いや、もうだいぶ絶望的だけど。
「わ、わかりました。そちらにおいてはおいおいってことで――賭けの内容を聞いた限り、先程姫柊社長とやりとりをしていたことですよね? 新たに賭けるとかではなく、内容はそのままで、賭けたものが変わったということでしょうか?」
あまり自分としても深堀したくなかった俺は、もう一つ気になったほうへと話を変えるのだった。
====================================
【あとがき】
『迷子になっていた幼女を助けたら、お隣に住む美少女留学生が家に遊びに来るようになった件について』
略して『お隣遊び』シリーズ、
第4巻まで好評発売中です(≧◇≦)
1巻の段階からWEB版と結構話が違い、
2巻も書き下ろし沢山、
3巻以降はほぼ書き下ろしなので、
是非是非お手に取って頂けますと幸いです♪
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます