第123話「試練」

 ――コンコンコン。


「入っても、よろしいでしょうか?」


 シャーロットさんの母親の話を聞いていると、ドアがノックされた。

 聞こえてきた澄んだ声の主は、この部屋の主だ。


「もちろん、いいよ。入って、花音ちゃん」

「失礼いたします」


 許しを得たことで、ドアがゆっくりと開く。

 その先には、花音さんと有紗さんがお辞儀をしていた。


「どこまでお話をされましたか?」


 花音さんは上品な足取りで歩いてくると、ソファに座りながらシャーロットさんの母親を見る。


「いろいろと脱線はしちゃったけど、大方は話せたかな。ただ、あの件・・・についてはまだ話せてないよ」

「そうですか。それでは、私の口から説明いたしましょう。それが筋でしょうし」

「うん、よろしくね。そっちはうまくいった?」

「えぇ、大方計画通りに。お姉さまのおかげです」


「…………」


 シャーロットさんは、自分の母親が、歳の変わらない少女にお姉さま呼ばわりされるのは嫌なのだろう。

 微妙そうな顔で、二人を見つめている。

 俺も、仮に母親がいたとして、他の子にお姉さまなんて呼ばれていたら、確かに困りそうだ。


「明人、シャーロットさん。まずは、一言お詫びをさせてください。私たちの勝手な思いで振り回してしまい、ごめんなさい」


 俺たちのほうを向いた花音さんは、深くお辞儀をしてきた。


「い、いえ、あの……! 謝らないでください……!」

「頭をあげてください、花音さん。俺たちのためにしてくださっていたことは、俺もシャーロットさんもわかっていますので」

「ありがとうございます、二人とも」


 先程とは打って変わって、花音さんはニコッとかわいらしい笑みを浮かべる。

 その笑顔には、安堵の笑みも混ざっていることがわかった。


 頭がキレて教養もあり、大人のような女性ではあるのだけど、年齢は俺たちの一つ上だ。

 不安を抱きながらも、それを見せないように事を運んでいたのだろう。


「どこからお話ししたものか――というのはあるのですが、大方聞いていらっしゃるということなので、簡潔に。事の始まりは、数ヵ月前――明人に許嫁を作る、という話があがったことにあります。それを良しと思わなかった私が、お姉さまに助けを求めたのです」


 許嫁――そういえば、その件はどうなったのだろう?

 姫柊社長が退しりぞくということは、白紙にかえったと思っていいのか?


「どうして急に、そんな話が……?」

「あなたに与えられていたノルマについては、シャーロットさんは知っていらっしゃるのですか?」

「いえ、話してませんが……」


 話せるような状況じゃなかった――というのは、言い訳だよな……。


「では、そこからですね。シャーロットさん、明人には姫柊家に入るために、ノルマ――いわば、試練が与えられているのです」




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【あとがき】


いつも読んで頂き、ありがとうございます(≧◇≦)


先程、新作である

『花咲姫花は氷坂吹雪を堕としたい…のだが、実は既に堕ちている。』

を投稿しました(#^^#)


ネコクロ初の、百合作品になります!!


コメディ要素満載の楽しいお話(?)になりますので、

是非是非、そちらも読んでいただけますと幸いです♪


――ふふ、楽しいお話に(笑)

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