第122話「養子」

「娘みたい……。まぁ話の流れで、花音さんが幼い頃から知り合いだったというのはわかりますが……ベネット家は、姫柊家と交流があったということですよね?」

「うん、私が幼い頃から交流があったかな」


「……私は、交流がなかったけど……」


 シャーロットさんの母親の言葉に、シャーロットさんが不満そうに反応する。

 確かに、交流があった割には、シャーロットさんと花音さんに最近まで面識がなかったことがおかしい。


「いろいろとあった、としか言えないわね……。そもそも、ロッティーは私が社長を知ってるってことも知らなかったでしょ?」

「……うん」


 俺は前に、シャーロットさんの昔住んでいた家を聞いた時、お金持ちのお嬢様だと察した。

 だけど、彼女自身はよく知らなかったらしい。

 つまりそれは、シャーロットさんの母親が隠していたことを意味する。


「なんだか、ややこしいことが沢山ありそうですね……」

「まぁ、いろいろなことが絡み合って、今の状況が生まれてると言えなくもないね」


 俺が愚痴をこぼすと、シャーロットさんの母親は仕方なさそうに笑った。

 本当に、どれだけのことが絡み合っているのか、という感じだ。


「多分聞かれると思うから先に言うけど、ロッティーに話さなかったのは、この子を社長にするつもりがないからだよ。どう考えても、向いてないからね」

「素直ないい子ですもんね」


 シャーロットさんはムッとしたが、俺も同じ意見だ。

 人々をまとめあげる能力はあるし、部下からも慕われる性格をしているが――絶対に、足元をすくわれる。

 人を従えて上り詰めた人間たちの中には、相手を騙したり弱みを探すような輩もいるのだから。

 何より、悪人に騙される気しかしない。

 

「それにロッティーには、好きなことをのびのびとやってほしかったからね」

「では、親戚に任せるつもりだったんですか?」


「うぅん、親戚はいないよ。会社自体は姫柊財閥の会社よりも大きいんだけどね、あまり子供に恵まれなかった家みたい。私も、養子で引き取られたくらいだし」

「――っ」


 それは、シャーロットさんも初耳だったのだろう。

 俺と同じく、驚いて母親の顔を見つめている。


 もしかしたら、シャーロットさんの母親が俺の面倒を見てくれたのは、自分を重ねていたのかもしれない。


「そっちについては、いずれね。今は、明人君の話だし」




-----------------------------------------------------------------------------

【あとがき】


いつも読んで頂き、ありがとうございます(≧◇≦)


そして、本日は『お隣遊び』4巻の発売日です(#^^#)


既に売り切れ報告など上がっていますが、

多くの方に楽しんで頂けているようで、

嬉しい限りです♪


WEB版と書籍版では1巻時点でかなり違っていて、

2巻以降はオリジナル展開満載なので、

ご興味があれば是非是非お手に取って頂けますと幸いです♪


また、明日は朝から新作を投稿する予定です…!

是非、そちらも読んで頂けますと幸いです(#^^#)

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る