第113話「これからあなたが出す答えは、そのままあなたの未来に繋がるのですから」

「――到着しました」


 一般家庭の数十倍ある豪邸の前に辿り着くと、リムジンのドアが独りでに開いた。

 車から降りると、有紗さんが俺達を先導するように前を歩く。

 そして大きな屋敷のドアを開くと、中には数十人のメイドと執事が並んで待っていた。


「わぁ、アニメみたい……」


 俺の隣に立っていたシャーロットさんは、中の光景を見て目を輝かせた。

 どうやら独り言のようだし、ここは触れないほうがよさそうだ。


 俺達が中に入ると、全員がバッと頭を下げる。

 この家の主でもないのに、なんだか手厚いお出迎えだ。


「有紗さん、皆さんに顔を上げるように言ってくださいよ」

「なぜです?」

「居心地が悪いからですよ」

「堂々としてください。仮にも、あなたは姫柊家の人間なのですから」

「苗字、違うんですけどね」

「誰が屁理屈を言えと言いましたか?」


 思わず苦笑いを浮かべて返すと、有紗さんはズイッと顔を近付けてきた。

 もちろん、表情は冷徹と思えるほどに冷たい。


 美人が怒ると怖いというように、俺は有紗さんのこの顔が結構苦手だ。


「すみません、ただ、やっぱりこういうのは仰々しいというか……」

「何を今更……」


 俺の言葉に対し、呆れた表情を向けてくる有紗さん。

 確かに俺がこの家を訪れた時はいつもこの光景だったけれど、だからといって極たまにしかこなかったのだから、慣れるはずがない。

 シャーロットさんも大金持ちのようだけど、この光景は初めてなのかソワソワしているし。


 まぁこの子の場合、凄く嬉しそうだけど。


「花音さんは今どこにいるんですか?」

「旦那様のお部屋ですね」

「えっ……もしかして、花音さんだけじゃなく、姫柊社長とも話を……?」

「当たり前です」

「…………」


 いや、聞いてないんだけど……?

 確かに現在起きているのは、主に俺と姫柊社長の問題といえるけど……まさか、いきなり会う展開になるなんて思わなかった。

 これは、シャーロットさんを連れてこなかったほうがよかったかもしれない。


「そもそも、旦那様とお嬢様の間に割り込んだのは、あなたですからね?」

「なるほど……どうやら、電話をするタイミングを間違えたようですね……」

「後回しにするよりは、よかったと思いますが」

「…………」


 花音さんだけなら電話で和解したのもあって問題はなかったけれど、姫柊社長がいるのなら話は別だ。


 いったい何を言われるか。

 もしかしたら、とんでもない厄介事を押し付けられるかもしれない。


「過去を清算に来たのでしょ? でしたら、覚悟を決めなさい。これからあなたが出す答えは、そのままあなたの未来に繋がるのですから」


 有紗さんはそう言うと、足を止めて俺のほうを振り向いた。

 そして凛とした表情で、力強い目で俺の目を見つめてくる。


「来なさい、お嬢様たちは中でお待ちです」


 有紗さんはそう言いながら、左手をすぐ隣にあるドアへと向けた。




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あとがき


いつもお読み頂き、ありがとうございます!

おかげさまで、書籍版・電子版の『お隣遊び』の売り上げが絶好調らしいです!!


発売日からずっと書店様でも売り切れ店続出で、

本当にありがとうございます……!


また、本日新作ラブコメ

『幼馴染みいないんだよなぁって呟いたらよく一緒に遊ぶ女友達の様子が変になったんだが』

第1話「幼馴染みがいない――いや、過去にいたあの女の子が、転校しなければ……」

を公開致しました(*´▽`*)♪


是非、こちらもお読み頂けますと幸いです♪

春夏秋冬グループの仲良し四人組が紡ぐ物語を、

どうかよろしくお願いいたします♪

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