第112話「マシな顔付きになったようですね」

「有紗さん……」


 俺は、半ば睨んでいるような目でこちらを見つめる有紗さんの顔を見つめる。

 すると、シャーロットさんがなぜか俺の前に出た。


「シャーロットさん……?」

「あの、明人君のことを悪く言わないでください。彼は、故意に他の方を傷つけるような方ではありませんので」

「へぇ……」


 いきなり前に出るから何かと思ったら、シャーロットさんは俺のことを庇ってくれた。

 優しい彼女が若干他人に牙を剥いたことに、俺は驚きを隠せない。

 その牙を剥かれた有紗さんはといえば、なぜか感心していた。


 そして、俺に視線を向けてくる。


「あなたは、お嬢様たちに感謝するべきです」

「えっ?」

「いえ、なんでもありません。お嬢様たちがお待ちです、車に乗ってください」


 今の言葉はいったいなんだったのか。


 そう疑問を覚える俺だが、有紗さんからは威圧的な雰囲気がなくなり、一般的なメイドのように俺たちを案内し始めた。

 シャーロットさんに視線を向ければ、彼女も戸惑ったように俺の顔を見上げてくる。

 有紗さんをよく知る俺がわからないのだから、シャーロットさんにもわかるはずがない。


「行こう」


 だから俺は、シャーロットさんにいらない心配をかけないように笑顔を返した。

 そして、先にシャーロットさんに乗ってもらう。


「…………」


 リムジンに乗るシャーロットさんに視線を向けていると、なぜか有紗さんが俺の顔を見つめてきていた。


「どうしました?」


 だから声をかけてみると、彼女は素っ気ない表情で俺の顔を見つめてくる。


「どうやら、マシな顔付きになったようですね」


 有紗さんはそれだけ言うと、さっさと運転席に座ってしまった。

 俺が乗るまで待たないところは、相変わらずだ。


「明人君、どうされました……?」

「あっ、いや……なんでもないよ」


 シャーロットさんが不安そうに声をかけてきたので、俺は笑顔で答える。

 そしてリムジンに乗ると、自動的にドアは閉まって車が発進した。


「あっ……わんちゃんたちが、たくさんこっちを見てます……」


 道中、放し飼いにされた犬たちが揃ってこっちを見ていたので、シャーロットさんは驚いていた。


「こっちから何かしなければおとなしいから、賢い犬たちだよ」

「明人君はよくここで遊んでいたのですか?」

「いや、入れてもらったのは数えるほどしかないかな」

「そうですか……」


 シャーロットさんはそれ以上聞いてこなかった。

 その代わり、トンッと頭を俺の肩に載せてくる。


 有紗さんとは離れているから邪魔が入ることもないので、俺はそのまま彼女の好きなようにさせることにした。




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あとがき


皆様、お待たせしました!


いよいよ明日2月25日は、『お隣遊び』の発売日です(*´▽`*)


多くの方の手に取って頂けますと、幸いです!!


最高なイラストばかりですので、

よろしくお願いいたします!!

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