第111話「お迎え」

 新幹線に乗った俺たちは、数時間かけて目的地へと辿り着いた。

 もうすっかり周りは暗くなってしまっている。


 これ、ちゃんと帰りは送ってくれるのだろうか?

 どう考えても帰る方法がないんだが……。


「ホテルにお泊り、しちゃいますか……?」

「――っ!?」


 考えていることが表情に出てしまったのか、腕を組んでいるシャーロットさんから思わぬ誘いを受けた。

 見れば頬がほんのりと赤くなっており、熱を秘めた瞳で何かを期待するかのようにこちらを見上げている。

 薄々気が付いていたけれど、この子は意外と結構積極的だ。


「か、帰れなかったら、そうしようか」


 俺は若干緊張しながらそう笑顔で告げる。

 このまま帰れないほうが俺にとって凄くお得な気がするけれど、そんなあからさまな態度を取るのはよくないだろう。

 それに、今は大事な話をしに来たんだしな。


「すみません、青柳明人です」


 俺は屋敷の門にいる守衛へと声をかけた。

 その守衛であるおじさんは顔見知りで、何度かこの屋敷に来た時に話したことがある人だ。


「あの頃のお嬢様お気に入りのサッカー少年が、今や時の人だな。随分と大きくなりやがって」

「まぁいろいろとあったんで……中、入れてくれますよね?」

「あぁ、話は聞いてる。彼女のほうも問題はない」

「ありがとうございます」


 守衛がシャーロットさんのほうを見ると、シャーロットさんはとても丁寧に頭を下げた。

 すると、守衛はご機嫌そうに屋敷に備えられた大きな門を開けてくれる。


「おっと、迎えが来たな。坊主、あの車に乗って行け」


 まるで門が開くタイミングを見越していたかのように現れたリムジンを見て、守衛が俺たちに先を促した。


「もう敷地内なのに、車で移動なんですね」

「庭が凄く広いからね。それに、下手に歩いていると番犬に襲われかねないし」

「そんな、漫画みたいな……」

「ほんと、趣味が悪いよね」


 俺が否定せずに言うと、シャーロットさんは困ったように笑みを浮かべた。

 今やセキュリティが万全なため侵入者はいないけれど、大分昔に敷地内に侵入した男がいたらしい。

 その男は、待ち構える番犬の集団に襲われて病院送りになった、という話を昔花音さんから聞いたことがある。

 現実だからといって、漫画みたいなことが起きないとは限らないのだ。


 そう俺たちが雑談していると、運転席からよく知る顔のメイドさんが下りてきた。

 いくら敷地内とはいえ、まだ高校生にリムジンを運転させるなんて本当にこの家は変わっている。


「――よくのこのこと顔を出せましたね、お嬢様の心にあれほどの傷を負わせた男が」

「有紗さん……」


 車から降りてきたメイドさん――有紗さんは、とても冷たい目を俺へと向けてきた。




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あとがき


いつもお読みして頂き、ありがとうございます!


いよいよ、『迷子になっていた幼女を助けたら、お隣に住む美少女留学生が家に遊びに来るようになった件について』

の発売日が5日後に迫ってきました!


本編は書き下ろしが多数で、大幅改稿もしております!


そしてそして、かわいすぎるイラスト満載ですので、

是非とも書店様でお手にとって頂けますと幸いです(*´▽`*)


発売日は2月25日です!

よろしくお願いいたします(#^^#)

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