第114話「賭け」

「――失礼致します。明人様とベネット様をお連れ致しました」


 有紗さんの言葉により、中にいた二人の視線が俺たちに向く。

 片方は、黒くて綺麗な髪をまっすぐと長く伸ばした、可憐な美少女。

 記憶にある顔よりも大人びているが、綺麗なところは変わらない。

 俺のことを弟のようにかわいがってくれていた、花音さんだ。


 その正面には、苛立ちを隠せないように俺たちを睨む男が座っている。

 花音さんのお父さんであり、姫柊財閥を現在率いている男だ。

 そして、俺の人生を滅茶苦茶にした男でもある。


「明人、シャーロットさん。まずは座ってはどうですか?」


 俺たちを見て優しい笑みを浮かべた花音さんが、自分は立ち上がって俺たちに座るように促してきた。

 花音さんが座っていた椅子の両脇には椅子が置かれており、彼女は左の椅子へと移動する。

 どうやら、真ん中と右側の椅子に座れと言いたいようだ。


 座り方的には、姫柊社長と対面するように座らせたいらしい。

 俺とシャーロットさんは花音さんに従い、俺が真ん中、シャーロットさんが右側の椅子に座る。


「お取込み中だったのでは?」

「かまいませんよ、些細なことです」


 どう考えても話し中だったのでそう尋ねたのだけど、花音さんは笑顔で首を左右に振った。

 しかし、苛立っている姫柊社長が口を開いた。


「些細なことだと……!? 父を売っておきながらよくそんなことが言えるな!」


 どうやら姫柊社長は、花音さん相手に激怒しているらしい。

 仮にも大手企業を率いる人間。

 頭の回転は速く、誰がテレビ局にリークしたのか心当たりを付けていたようだ。


「私にとっては些細なことです。少なくとも、あなたが私と明人を裏切ったことに比べれば、大した問題でもありません。あなたにとって、私たちを裏切ることが大したことではなかったようにです」


「今まで誰のおかげで不自由なく暮らしてこれたと思っているんだ! お前がやったことは私に対する裏切りだぞ!」

「どう捉えて頂こうと結構です。それよりも、お父様。賭けのことを忘れておりませんよね?」


 賭け……?

 いったいなんの話かはわからないが、俺が来たタイミングで話を切り替えるように持ち出したということは、俺に関わることなのだろう。

 何より、姫柊社長が焦ったように俺に視線を向けてきているし。


「明人、一つお尋ねしてもよろしいでしょうか?」

「なんですか?」


「あなたがどうしてこの場に来たのか、教えて頂けますか?」


 正直、この状況はよくわからない。

 だけど、花音さんが意味のないことをする人じゃないということは知っていた。


 それに、花音さんや姫柊社長の態度から見えてきているものもある。

 だから俺は深呼吸をし、姫柊社長の目を見た。


「本日は、許婚の話を白紙にして頂くために来ました」


 そう答えると、苛立った姫柊社長がテーブルの上に置いてあった湯飲みを俺目掛けて投げてきた。



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【あとがき】


いつもお読み頂き、ありがとうございます(*´▽`*)


『お隣遊び』は1巻から結構WEBと違う話になっており、2巻でも大分変わってたり書き下ろしをしています。

そのため、今後もWEBと書籍のほうでは話が全然違う進みになっていきますが、WEB版ものんびりと更新していきますので、

是非これからもよろしくお願いします!


書籍のほうの1巻、2巻は今までの集大成のようにシャーロットさんとエマちゃんの可愛さを追求し、

話の面白みも数倍に増していますので、

よろしければ是非そちらもよろしくお願いします(#^^#)


ちなみにですが、WEBで改稿前に登場していたクレアちゃんも2巻では登場しています♪


そして、3巻は滅茶苦茶最高の出来になりそうです……!


ご興味があれば、是非よろしくお願いします♪


それでは、これからもどうかよろしくお願いしますm(*_ _)m

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