第100話「お隣に立ちたいです」
「……膝の上、座る?」
部屋に戻ってきた俺は、離れようとしないシャーロットさんに対してそう尋ねてみる。
すると彼女は恥ずかしそうにしながらもコクリと頷き、腰を浮かせて俺の顔を見つめてきた。
どうやら俺が誘うのを待っていたらしい。
俺は彼女が座れるように体勢を変えると、両腕を広げて彼女を迎え入れる。
「…………」
膝の上に座ったシャーロットさんは、何も言わずスリスリと頬を俺の胸に擦りつけてきた。
本当に甘えん坊モードになるとこの子はエマちゃんにそっくりだ。
血が繋がっているだけあって似た者姉妹ということなのだろう。
クイクイ――。
甘えてくるシャーロットさんを見つめていると、なぜか彼女は急に俺の顔を見上げてき、胸元の服を優しめに引っ張り始めた。
俺の顔を見つめる瞳には熱がこもっており、何かを求めているというのがわかる。
――うん、これがキスのおねだりではないということを俺はもう十分に理解している。
だから、サラサラとした綺麗な銀色の髪へと俺は手を伸ばした。
「えへへ……」
優しく頭を撫でてあげると、シャーロットさんは満足そうにまた俺の胸へと頬ずりを再開した。
見ていて癒やされると同時に、心臓が高鳴りすぎて凄く痛い。
甘えん坊モードになったシャーロットさんの破壊力は普段とのギャップもあり、大抵の男の理性ならあっさりと壊してしまいそうだった。
「デート、駄目になってごめんね……」
彼女の機嫌が段々と直ってきたことがわかった俺は、今日のデートを駄目にしてしまったことを謝る。
「あれは、明人君のせいではございませんし……」
確かに巻き込まれたという面はかなり大きいのだけれど、やはりシャーロットさんが楽しみにしてくれていただけに胸が痛む。
「次はちゃんと遊園地に連れて行ってあげるから」
「次……いつになりますでしょうね……」
苦笑いのような笑顔を見せるシャーロットさんに更に胸が痛んだ。
今日二人だけでデートに出かけられたのはたまたまであり、普段ならエマちゃんが一緒にいてしまう。
優しくて面倒見がいい彼女はエマちゃんのことを邪魔者扱いしないけれど、やはり二人きりで遊びたいという気持ちはあるはずだ。
正直俺もシャーロットさんと二人きりで遊びたいと思う。
もちろんエマちゃんがいて嫌だということはないのだけど、二人きりじゃないとできないこともたくさんあるので仕方がない。
だから、今度可能ならシャーロットさんたちの親と話をしたいと思った。
「なるべく早く行こうね」
「はい……」
二人で遊園地に遊びに行くことを約束すると、シャーロットさんはまた甘えたそうな目を向けてきた。
そのため、今度は頬を撫でてあげる。
すると、シャーロットさんはくすぐったそうにしながらも嬉しそうな笑みを見せてくれた。
本当にかわいくて仕方がない彼女だ。
一緒にいればいるほど、離れたくないという気持ちは強くなる。
――それから小一時間ほどシャーロットさんを撫で続けた後、彼女はゆっくりと体を起こした。
もう満足してしまったのかもしれない。
俺としてはもう少し撫でていたかったので少し残念だが、しつこく感じられても嫌なのでシャーロットさんの体を解放した。
すると、シャーロットさんは至近距離からジッと俺の顔を見つめてくる。
「ど、どうかした?」
俺は凄くかわいい彼女の顔がすぐ近くまで来たことで若干動揺しつつ彼女に尋ねてみた。
何やら先程までとは雰囲気が違うため、いったい何を言われるのかわからない。
変なところを撫でて怒らさせた――ということはないはずだ。
基本的に頭や頬、たまに顎の下や首を撫でただけで、それより下は撫でていない。
だから、シャーロットさんが怒っているということはないと思うけど……。
俺は少しだけ身構えながらシャーロットさんの顔を見つめる。
すると――。
「私も、明人君のお隣に立ちたいです……」
なんだか、よくわからないことを言われてしまった。
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