第8話「美少女留学生のあまりのかわいさ」
「シャーロットさん、いいよ。エマちゃんは軽いから負担にもならないし、抱っこするよ。まぁもちろん、妹が男に抱っこされるのが嫌ってならやめておくけど……」
「あ、いえ! そういう事ではないです! ただ、これ以上青柳君に迷惑を掛けるのは申し訳なくて……」
「俺なら大丈夫だよ。それに、エマちゃんを抱っこしたほうが早く帰れるだろうしね」
幼いエマちゃんの足取りに合わせて帰るとどうしても遅くなってしまう。
いつもならそれでもかまわないどころか、シャーロットさんと一緒にいられる時間が長くなるため歓迎するくらいだ。
だけど、今日はこの後亜紀の元に行かなければならない。
お金は美優先生から預かってしまっているし、ほっておくと明日美優先生に地獄を見せられる事になる。
だから正直早くエマちゃんたちを送って亜紀の元に行きたいんだ。
シャーロットさんはどうしようか悩んだ末、妹が言う事を聞かなさそうという事で俺に抱っこをお願いしてきた。
『えへへ』
抱っこをしてあげると、エマちゃんが凄く嬉しそうな声を出した。
やっぱり抱っこが気に入っているようだ。
「申し訳ございません、青柳君……。エマには家に帰ったらしっかりと言い聞かせておきますので……」
「いや、大丈夫だよ。むしろ役得なくらいだ」
「役得……。もしかして、青柳君はロリコンというやつなのでしょうか?」
「ぶっ――!」
シャーロットさんから思いもよらない言葉が出てきて俺は吹き出してしまった。
まさかそんな言葉までも知っているとは思わないし、ましてやロリコン扱いされるなんて誰が想像つこうか。
「ち、違うよ!? てか、なんでロリコンなんて言葉知ってるんだ!?」
「あっ……ごめんなさい……。よく日本の漫画で出ていたので、使ってみたんです」
ロリコンがよく出る漫画ってどんなのを読んでるんだ!?
それにシャーロットさんが漫画を読んでるって事自体凄く意外なんだけど!?
上品な仕草や丁寧な言葉遣いから、漫画などには興味がないと思っていた。
しかしシャーロットさんの様子から察するに、どうやら俺の勝手な思い込みだったようだ。
『むぅ……。おにいちゃんたち、なにいってるのかわからない……』
俺とシャーロットさんが日本語で会話をしていると、腕の中にいるエマちゃんがつまらなさそうな表情をしていた。
まだ幼いから日本語がわからないようだ。
『あ、ごめん。これからは英語で話をするね』
一人仲間外れにするわけにもいかず、俺は英語で話す事にする。
『ありがとうございます、青柳君。青柳君は英語がお上手なのですね』
シャーロットさんもエマちゃんを除け者にしないよう、俺と同じように英語で話し始めた。
彼女からすれば英語が母国語なため、こっちのほうが話しやすいだろうしこれでいいのかもしれない。
『シャーロットさんの日本語ほどじゃないけどね』
『いえ、私の日本語よりも凄くお上手だと思います』
『そんな事はないよ。シャーロットさんのほうが凄く上手いと思う。どこで日本語を覚えたんだ?』
『そう言って頂けると嬉しいです。私は両親から教えて頂きました』
親から教わったのか。
もしかして上品な娘に育てるために、お嬢様口調の日本語を教えたのだろうか?
どうしても興味が沸いてしまうが、これ以上は踏み込む事をやめる。
あまり聞きすぎると相手はいい気がしないだろうからな。
『エマも、にほんごはなしたい』
俺とシャーロットさんの会話を聞いていたエマちゃんが、うらやましそうにシャーロットさんを見る。
日本語がどういう言葉かを理解出来ているのか不思議に思ったが、シャーロットさんが使うからなんとなくはわかっているのかもしれない。
『心配しなくても、エマちゃんなら話せるようになるよ』
『ほんと……?』
『うん、ほんとだよ』
『やったぁ!』
俺が頷くと、エマちゃんは嬉しそうに喜んだ。
そしてすりすりと頬を擦り付けてくる。
まるで猫みたいな子だな、と思った。
まぁ日本語に関しては親がシャーロットさんに教えているなら当然エマちゃんにも教えるだろうし、これから日本に住むのならいずれ話せるようになるだろう。
シャーロットさんは面倒見もよさそうだし、エマちゃんが覚えたがっているのなら教えてもくれるだろうしな。
だからエマちゃんが日本語を話せるようになるのは時間の問題だ。
まぁそれはそれとして――。
『なぁシャーロットさん。どうして急に俺から距離をとっているんだ?』
俺はいきなり距離を取り始めたシャーロットさんに声を掛ける。
もしかして、またロリコンだと思われて引かれた……?
いや、でも、今のやりとりでロリコンって言われたらさすがに納得がいかないぞ?
『あっ、えっと……特に理由はないのですが……』
理由はないと言っているにもかかわらず、更に距離をあけようとするシャーロットさん。
どうしよう、俺の精神力が急激に削られる。
シャーロットさんに嫌われたら普通に立ち直れない。
『ごめん……』
『ど、どうして謝られるのですか……?』
『いや、なんだか嫌な思いをさせているみたいで……』
俺が落ち込みながら言うと、凄く困った表情をシャーロットさんがした。
嫌で距離を開けている相手なのにもかかわらず、気を遣ってくれているみたいでやはり彼女は優しい子だ。
そしてそんな優しい女の子に嫌われてしまった俺は、いったいこれからどうしたらいいのだろう?
真面目に落ち込んでしまうんだが……。
『あ、あの……多分勘違いされているようなので言いますけど……。これは決して、青柳君の事が嫌で距離を開けているわけではないのですよ……?』
『だったら、どうして距離を取り始めたんだ』
直球でぶつけられた質問に、シャーロットさんが視線を
答えるかどうか悩んでいるようだ。
――結局視線を彷徨わせ後、シャーロットさんはゆっくりと口を開いた。
『走り回って汗をかいていたのを思い出して……。は、恥ずかしいのです……』
顔を真っ赤にして消え入りそうな声でそう呟くシャーロットさん。
照れる美少女留学生のあまりのかわいさに、俺の思考は停止してしまうのだった。
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