中編

「はぁ……」


 思わずため息が溢れ出る。なんで、こんなことに。


「おはよう、奈子」

「あ、おはよ寧々」

「なんか元気ないね、どうしたのよ」

「あー……」


 このことを寧々に言ったら絶対騒がれる。でも、かといって話さなかったら、後々知られた時に面倒だ。…どうすべき?

 迷った挙句、言うことにした。


「実は……」

「えええぇぇえー! 」


 今まで聞いたことの無い声量で寧々は叫んだ。


「ちょ、声大きい! 」

「ご、ごめん。……それほんと? 」


 少し声を小さくして、寧々は聞く。


「嘘言ってなんか利点あると思う? 」

「いや、ないと思う」

「はぁ、…本当だよ」

「でも、あの高月くんと幼馴染だったんだね」

「うん」

「ちなみに、前、名前も顔も思い出せないって人いるて言ってたよね。それって高月くん?」

「勘がいいね、うん、そう」

「はぁーあ、なるほどねぇ……。同じ高校にいても奈子程のマイペースじゃ気づかないか」

「ちょ、それ、そんなに? 」

「うん。面白いくらいに」


 この話に興味津々な寧々は続ける。


「へぇ、で、落とす宣言されたわけかぁ。くぅぅ〜 キュンキュンするねぇ! 超楽しい!」

「当人になってみなさいよ。楽しくなんかないわ! 」


 あの後、楓に連絡先を聞かれ、渋々応じたものの、色々と面倒くさいことになりそうだ。教えなきゃ良かった、かも。


「でも、嫌いじゃないんでしょ? 」


 痛いところを突かれた。


「……うん」

「いいじゃん! じゃあ! イケメンだしぃ、高身長! それに勉強も出来るらしいよ? 超優良物件! 」

「物件て、結婚相手じゃないんだから」


 寧々を宥めながら考えた。

 確かに楓は格好がいい。寧々の言う通りだ。全然嫌いじゃないし、むしろ、という所はある。それでも、腑に落ちなかった。何年かぶりに再会したにも関わらず、楓は私のことをずっと好きだったと言うのだから。

 何故あんなにも楓は私に執着するのだろう。

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