最強魔法使い、ウッドドラゴンと戦う④

「効いてる!」

「やっぱり傷が治りきってなかったみたいね!」


 俺は喜びの声を上げる。

 キャサリンとレオナルドもウッドドラゴンの様子を見てうれしそうにしている。

 彼らから見てもちゃんとダメージは通っているように見えるようだ。


 これなら何とかできるかもしれない。

 攻撃はかなり効いたようで今もウッドドラゴンはじたばたと暴れている。


 ほかの魔導士たちはいきなりウッドドラゴンが暴れだしたのを見て何が起こったのかわかっていないようだ。

 攻撃を止めて俺たちの方を見ている。


「翼の傷だ! 翼の傷を狙え!」


 俺はウッドドラゴンの翼があったところを指さしながら大声で弱点の情報を叫ぶ。


 一人であれだけのダメージを与えられたのだ。

 全員で攻撃すればこのウッドドラゴンだって倒せるはずだ。


 俺がそういうと、魔導士が一斉にウッドドラゴンの方を見る。

 ウッドドラゴンの体の上の方に俺がさっき攻撃を当てた傷が見える。


 ウッドドラゴンというだけあってからだは木に近いらしい。

 さっきのファイヤのくすぶりがまだ残っている。


「あんなところ狙えるかよ!」


 だが、魔導士たちは反論してくる。

 マジか。


「さすがに的が小さすぎるよ」

「そうよ。ジン。私もあれは狙えないわ」


 どうやら、俺以外が狙うにしては翼の傷は的が小さいらしい。


 魔導士学園で俺と同じくらいの魔法の精度を誇っていたキャサリンと魔導士団で俺の次に魔法の精度が高かったレオナルドが狙えないのであれば無理だろう。


 狙えるのは俺だけのようだ。

 つまり、あいつにダメージを与えられるのは俺だけということだ。


 俺は魔導士団で雑用をやりまくっていたので魔法の制御はかなり上達したからな。

 まさかこんなところでその成果を披露することになるとは思わなかった。


「くそ。しかたない」

「頼む! ジン。お前だけが頼りだ」

「お願いね」

「わかってる! 『ファイヤ』!」


 俺は『ファイヤ』の魔法を再びウッドドラゴンに向かって放つ。

 俺の放った魔法は狙いたがわずウッドドラゴンの古傷に命中する。


「ZYAAAAAAAAAAAA!!!!」


 やっぱりちゃんと効いているようで、俺が魔法を当てるたびにウッドドラゴンは嫌そうに体をゆする。


「「「あ」」」


 攻撃をした直後、俺たちはウッドドラゴンと目が合う。


 大層お怒りのようだ。

 視線だけで気弱な奴なら殺せそうだ。


 やばいと思ったが、もうどうすることもできない。

 ウッドドラゴンは首ごと俺たちの方を向く。


「ジン。まずいわ!」


 ウッドドラゴンは口を開く。

 すると、キーーーーンという音が聞こえてきて、魔力がウッドドラゴンの釘に集まっていく。


 ブレスだ。


「に、にげ――」


 言い切る前に閃光があたりを満たす。


「あれ?」

「俺たち」

「生きてるわ!」


 次の瞬間、あたりの景色は切り替わっていた。


 目の前ではウッドドラゴンがきょろきょろ辺りを見回している。

 どうやら、俺のことは見失ったらしい。


「大丈夫!? ジン!」

「あ、ニコル」


 すぐ横にニコルが立っている。

 ニコルが助けてくれたのか。


 え?

 無茶苦茶早くない?

 なんか瞬間移動したみたいになってたけど。


 ニコルに運ばれたのは初めてだ。

 まさかこんなに早かったとは。

 体感すると外から見ているより早く感じるな。


 それに、あの一瞬で俺たち三人を同時に運んだらしい。

 前はパワーは全然上がってなかったけど、明らかにパワーも上がってる。

 身体強化魔法になれたせいかな?


「じゃあ、二人に任せるよ!」

「がんばってね~!」


 キャサリンとレオナルドの声が遠くから聞こえる。


 気づけばレオナルドとキャサリンはかなり離れたところで手を振っている。

 どうやら、二人も巻き込まれるのはいやらしい。


 いつの間にあんなに遠くに行ったのやら。


「薄情なやつらめ」

「いや、当然でしょ」


 俺たちの周りには誰もいなくなっていた。

 ほかの魔導士たちも攻撃をしても無駄なので下がったらしい。


「二人っきりだな」

「いつも通りじゃない?」

「……それもそうか」


 ここ最近、いつも二人で行動してた。

 いつもより敵が少し強いが、いつも通りといえばいつも通りだ。


 話をしているとウッドドラゴンは俺の方をにらみつけてくる。

 どうやら見つかってしまったようだ


「じゃあ、回避は任せるよ。相棒」

「攻撃は任せるよ。相棒!」


 俺たちはウッドドラゴンに攻撃を始めた。

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