最強魔法使い、スタンピードと戦う①
「あっけなかったな」
「そうだね」
今はもうすぐ昼になるくらいの時間だ。
俺とニコルは探索者ギルドの職員用の食堂で遅めの朝食を取っていた。
昨日はギルド職員に取り調べを受けていたのでほとんど寝れなかった。
取り調べとは名ばかりで、関わった探索者が大変なことにならないように探索者ギルドが匿ってくれていたのだが。
そんな目的だから多くの探索者が一箇所にまとまっていた。
流石に男女は分けられていたが。
寝られなかった理由は宴会をしていたからだ。
探索者が集まれば当然宴会が始まる。
『酔い狼』が壊滅したのもあって、みんなで盛り上がってしまった。
男ばかりだったせいか、最後の方はちょっと人に見せられない状況になっていた。
いや、ニコルがいなくて本当によかった。
下手したらパーティ解散とかになってたかもしれないからな。
おそらく、宴会をすることも見越して地下の鍛錬場に押し込まれたのだろう。
あそこは訓練とかで大きな音が出ることもあるので外に音が漏れにくくなっている。
解散を知らせにきたのも屈強なギルド職員でゴネる探索者を力尽くで追い出してたし。
解放されたのは明け方で、そこから仮眠をとって起きたらこの時間だった。
俺以外の探索者も続々と起き出してきているようで、食堂には結構な探索者がいた。
起きて朝食をとっているとそばにニコルがやってきて状況を教えてくれた。
ニコルのいた部屋は女子しかおらず、普通に寝たらしい。
だから、朝に解放された後も普通に活動していたそうだ。
そのため、今の状況とかも詳しく知っていた。
どうやら、闇ギルドのギルドマスターはあっさり罪をゲロったらしい。
「どうやら、支部長に異動の内示が来たらしいよ。他の不正をもみ消すのでいっぱいいっぱいなんだって」
「あの支部長ならありえそうだな」
どうやら、レオナルドはちゃんと動いてくれたらしく、支部長は異動になるらしい。
朝になって解放されたのは異動に内示が出て支部長が動けないとわかったからなんだろう。
明け方にはクタクタだったから全然知らなかった。
宿に帰る元気もなくてギルドの仮眠室を借りてしまったくらいだ。
そういう探索者は多かったが。
「闇ギルドなんて横のつながりも強いだろうに、思ったより簡単に潰れたな」
「『酔い狼』は支部長の後ろ盾を使ってかなりあくどいことをやってたみたいだし、かなり嫌われてたんじゃない?」
『酔い狼』はかなり嫌われていたらしい。
俺はよく知らないが、相当あくどいことをこれまでやってきたのだろう。
俺が助けてもらった方なのにいろんな探索者に『酔い狼』を叩く手伝いをさせてくれてありがとうと感謝されたからな。
頼みの綱の支部長は今までこの街で行っていた不正をもみ消すのでいっぱいいっぱいだそうだ。
それで闇ギルドは切り捨てられたらしい。
おそらく、闇ギルドは証拠も抑えられているから揉み消すのは無理だと思ったんだろう。
それに、『酔い狼』は切り捨てられるとも考えたのかもしれない。
『酔い狼』の支部からは支部長の不正はほとんど出てこなかった。
もともとやばくなったら切り捨てるつもりだったのかもしれない。
支部長に一撃くらわせられなかったのは残念だが、仕方ない。
「これで来月には魔道士団に戻れるね!」
「うーん。それはどうだろう」
「え?」
「最後の悪あがきくらいはするだろうからそれで俺がどうなるか」
今回かなり派手に動いた。
『酔い狼』は完全に潰れたし、支部長は異動することになった。
俺がやったって言うことは分かるだろう。
支部長の異動は俺じゃなくてレオナルドがやったことだが、きっかけは俺だ。
支部長の憎悪は俺に向かうだろう。
支部長は最後に戻れないように嫌がらせして来てもおかしくない。
俺でも方法はいくつか思いつくし。
「そんな……」
「ま、その時はその時さ。探索者を続けるのも悪くないしな」
「! そ、そうだね」
ニコルは明らかに明るい顔をする。
ニコルは俺が探索者を続けるなら歓迎してくれるらしい。
それなら探索者を続けてもいいかもな。
支部長が何かやってくるのは予想できるけど、対応するのはめんどくさい。
いまでは戻れないならそれはそれで仕方ないかと思っているくらいだ。
このままニコルと一緒に探索者を続けるのも悪くない。
ーーズン
その時、地面が揺れた。
突き上げるような振動で、食堂の中の家具がいくつか倒れ、うるさい音が響く。
相当大きな揺れだった。
周りの探索者もなにが起きたのかわからず、キョロキョロしている。
中にはかなり警戒している探索者もいる。
それくらいの異常事態なんだろう。
「な、なに!?」
「わからない」
ニコルにも何が起きているのかわからないようだ。
俺たちはとりあえず食堂を出て状況を確認するためにギルドの受付の方に向かった。
受付に来るとギルドの職員も慌ただしく動き回っている。
質問できる状況じゃないな。
「ジンさん!」
「あ、カレンさんちょうどいいところに」
俺のことを見つけたカレンさんが近づいてくる。
カレンさんはかなり焦っているようだ。
いつも落ち着いた様子のカレンさんがこんなに焦っているのは初めて見た。
「ジンさん! 大変です! スタンピードが発生しました!」
「えぇ!?」
カレンさんは俺たちに衝撃の事実を告げた。
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