最強魔法使い、反撃する①
「『酔い狼』をつぶす!?」
「あぁ」
俺とニコルはキャサリンと合流していた。
キャサリンは俺のことを相当心配していたらしく、熱い抱擁で再会を祝ってくれた。
その抱擁のせいで死にかけたのは言うまでもない。
今は俺たちはキャサリンの店に戻って作戦会議をしている。
俺はキャサリンの店がまた荒らされることを懸念していたが、俺の修復魔法で直せば全然問題ないといわれてしまった。
なんでも、壊れた装備とかも置いてあったのに一緒に直してしまったから、むしろ襲われる前よりいい状態になってしまったらしい。
今後、修理が大変な武器が出てきたらお願いするといわれてしまった。
いつもやってたことだから全然問題ないんだけどさ。
一通り話した後、俺が今後の予定を話すと、キャサリンは驚いた顔をした。
……当然か。
俺が闇ギルドとはいえ、ギルドの一つをつぶすと宣言したのだから。
「支部長が変わるなら一撃くらい反撃しておきたい!」
「……ジン。あなたねぇ」
キャサリンは呆れたような声を出す。
だけど、今まで散々いびられたのだ。
直接やると角が立つかもしれないが、あいつの関わっていた組織を潰すくらいであれば大丈夫だろう。
まだ異動の情報は入ってないみたいだから今だと裏金とかを闇ギルドに預けたままかもしれないから、支部長にも少なからず影響はあるだろ。
何より、ムシャクシャしてるので、やり返したと言う事実が欲しいのだ。
支部長に影響があるかどうかは二の次だ。
「まあいいわ。でも、そんなこと可能なの? 相手は百人以上いるギルドよ!?」
「ギルドとはいえ、別に登録された何かがあるわけじゃない。烏合の衆みたいなものだ」
闇ギルドはギルドとは名乗っているが、探索者ギルドのように国に認められているわけではない。
強い力に弱いやつらが寄ってたかって出来上がっている。
言ってしまえば、電灯に群がる蛾みたいなものだ。
散らすには電灯を消してやればいい。
闇ギルドでいう電灯はギルドマスターだろう。
「トップの求心力は強さの一点だけだ。じゃあ、トップをつぶせば何ら問題ない」
「まさか、本部に殴り込みをかけるつもりなの!?」
闇ギルドを束ねているのは強いという一点だ。
なら、そこをつぶせばあとは簡単に崩れ去る。
強いと言っても所詮は闇ギルドの長。
深層を探索する探索者ほどの理不尽な強さを持っているわけではない。
勝てない相手ではないはずだ。
俺で勝てないほど強かったら支部長の力なんて借りる必要はないだろうし。
「でも、ボスの居場所なんてわかるの?」
「どうやら、今回はギルド員全員がボスの居場所を知っているらしい」
普段は逃げ隠れして自分より強い相手と当たらないようにしているようだ。
だが、今は違うらしい。
ここにくる前に運悪く遭遇した『酔い狼』の下っ端っぽい奴がボスの居場所を知っていた。
おそらく、短い期間にターゲットを殺すために人海戦術をとったからだろう。
何にせよ、今ならボスの居場所が分かる。
なら、そこに乗り込めばいいだけの話だ。
「バカね。なんでそんなことしてるのかしら」
「どうやら、そこに俺の元上司もいるらしくてな。接待させられてるんだろ」
「あー」
『酔い狼』が大きくなったのはおそらく支部長とのパイプがあったからだ。
だから、あいつの要求を拒否できなかったんだろう。
「じゃあ、そこにこれからみんなで乗り込むのね?」
「ちょっと待ってくれ。キャサリンには別のことをやって欲しい」
「え? みんなで行くんじゃないの?」
ニコルも驚いた顔をする。
どうやら、三人で乗り込むつもりだったらしい。
「みんなで行くんだよ。探索者も含めてみんなでな」
「? どう言うこと?」
「キャサリンには、探索者ギルドに救助依頼を出して欲しい。理由はニコルが『酔い狼』にさらわれたとかでいいだろう。依頼を出す先はカレンさんがいいかな」
おそらく、俺がさらわれたと言っても動きにくいだろう。
どうやったのかは知らないが、俺は探索者資格が停止されてるらしいし。
それに、支部長の協力者はギルドにもいるだろうから、そう言う奴に潰されるかもしれない。
でも、ニコルは普通の探索者だ。
探索者ギルドも登録している探索者が闇ギルドにさらわれたと知れば動く他ない。
支部長の協力者が止めようとしても、難儀するだろう。
受付前に握り潰される恐れもあるが、カレンさんなら大丈夫だろう。
カレンさんでダメだったら探索者ギルドは本格的に使えない。
それにニコルは俺と一緒に行動していることは知られている。
俺に協力してくれてる探索者も何かあったとわかって対応してくれるはずだ。
大人数で行けばもしかしたら支部長も一緒に捕まえられるかもしれない。
上級魔法を使う支部長だが、鍛錬とかはしているところは見たことがない。
頼みの綱の上級魔法もそう何発も打てないだろうし、数で攻めれば何とかできるはずだ。
「いいわね。わかったわ」
「ここからは反撃の時間だ!」
俺は悪い笑顔でそういった。
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