最強魔法使い、狙われる⑤
「ふはー。生き返ったー!」
「間に合ってよかった」
俺は水筒の水を飲みほす。
これで五本目だ。
最初は水を飲むのもつらかったが、だいぶ回復した。
どうやら、ニコルは俺を探してこの洞窟に入ってきたらしい。
この洞窟がかなり広いことも知っていたので、数日分の飲み物と食べ物を準備していたそうだ。
流石ニコル。
俺とは全然違う。
俺が回復するまでの間にニコルはここに来るまでのことを教えてくれた。
洞窟に潜ってしばらくしてから、俺がつけたしるしを見つけたらしく、それを追ってここまで来たらしい。
よかった。印付けておいて。
ほんとによかった。
「ニコルはどうしてここにいるんだ?」
「キャサリンさんに聞いてきたんだ。前にジンが迷子になったとき、門を出てないのに街の外にいたって。この地下道は町の外に通じてるからここかなって」
そういえば、学生時代に一度迷子になって街の外に出たことがあったっけ?
こんなところがあったんだな。
「ここは何なんだ?」
「ここは昔のダンジョン跡だよ。この街のダンジョンはかつてのスタンピードで一度崩れてるのは知ってるよね? この辺は昔最浅層だったんだけど、崩れた際にダンジョンから切り離されたんだって」
「へー」
この街のダンジョンは少し特殊だ。
本来最浅層にしか入口がないのに、浅層にも入り口がある。
それは、かつてスタンピードの主が大暴れしたときにダンジョンが崩落したかららしい。
もう相当前のことで、文献が少し残っているだけらしいけど。
その崩落の時にダンジョンから切り離されてただの洞窟になったのがこの場所らしい。
どおりでダンジョンみたいな見た目のはずだ。
「街の中の入口は全部塞いであるはずなのにどうやって入ったの? 私はキャサリンさんに聞いて唯一塞がれていない入口から入ってきたんだけど」
「さ、さぁ?」
どうやら、街の出入りを勝手にされないように街の中の入口は全部塞がれているらしい。
ニコルは街の悪ガキが代々引き継いでいる秘密の入り口から入ってきたそうだ。
その入り口は小さく、小柄なニコルがギリギリ通れる程度の大きさしかないらしいし。
出る時は魔法で少し崩して出ないといけないな。
その入り口も、上に民家が立っていて、誰にも見つからずに出入りするのは不可能なところにあるらしい。
そこで俺を見た人はいなかったそうだ。
ほんとどうやって入ったんだろう?
まあ、悪ガキが入口を確保してるくらいだから、他にも入口はあるんだろうけどさ。
「そっか。キャサリンは?」
「キャサリンさんは武器店で待ってる。ほかの探索者さんも探してくれてて、見つけたらそこに集合することになってるよ」
「そうか。キャサリンやほかの探索者にも迷惑をかけたな」
俺は頭痛も治ったので地面に手をついて立ち上がる。
「よっと。……あれ?」
だが、立ち眩みがしてふらふらしてしまう。
そんな様子を見かねて、ニコルに肩をつかまれる。
ニコルは少し怒ったような顔をしている。
「さっきまでふらふらだったんだからもう少し横になってた方がいいよ」
「悪い」
俺はニコルに肩をつかまれたまま座らされ、横たえられる。
俺はニコルに膝枕される形になった。
少し気恥しい。
だけど、さっき倒れそうになった手前、強く抵抗もできない。
ニコルも顔が赤いから痛み分けか。
「そういえば、孤児院にはちゃんと帰ったのか?」
「一度顔を出したよ。村についたときはこんなことになってるって知らなかったからね。みんなの顔を見て、それでジンのことが心配になって戻ってきたんだ。ちょうど王都からこの街に向かってる商隊が村に居たしね」
「そうなのか」
ニコルには悪いことをした。
俺のことがなければもっと長く向こうにいられたはずだ。
「ジンが悪いんじゃないんだから気にする必要ないよ」
どうやら、顔に出ていたらしい。
最近、ニコルには隠し事が出来なくなってきてる気がする。
「そういえば、どれくらい時間が経ったんだ? 日が落ちたことは知ってるけど」
「もうすぐ日付が変わるくらいかな。戻ってきてすぐにキャサリンさんと合流して、探し始めてから一時間くらいでジンを見つけたから」
どうやら、思ったより時間は経っていなかったらしい。
走り回ったのと、気持ちの問題で体が弱っていたようだ。
「相変わらずすごい引きだな。この広い洞窟で」
「えへへ。それが特技みたいなものだからね」
この洞窟はかなり広いはずなのに、1時間で見つけてしまうとは。
「この後どうするの? またどこかに隠れる?」
そうか。
まだ一日半ほどしかたっていないから、あと一日半は逃げ続けないといけないことになる。
「それなんだけど、俺に考えがあるんだ。とりあえず、キャサリンの武器店に一度戻らないか?」
「そうだね。みんなも心配してるはずだし、いったん戻ろう」
俺はこの後の予定を決めるために一度キャサリンの武器店に戻ることにした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます