最強魔法使い、ダンジョンをさまよう。②
「……おかしいな。全然外に出られないぞ?」
どれくらいの時間がたっただろうか?
少なくとも三時間以上はたっている気がする。
ずっと右手を壁について歩き続けているにもかかわらず、外に出られる気配はない。
レオナルドが俺に嘘を教える理由がないし、もしかして、このダンジョンは俺が想像していたよりずっと大きいのか?
もう出られてもよさそうなものなんだが。
このまま出られないのはかなりまずい。
そろそろ、問題が出始めていた。
「疲れたな。腹も減ったし」
モンスターとかは別に問題じゃない。
問題は自分自身の中にあった。
ずっと歩き続けていたのでかなり疲れた。
それに、今日は朝食をとって以来何も食べていない。
その朝食も、その辺の屋台で簡単に済ませたので、今はすごくおなかがすいている。
空腹のせいなのか、モンスターを倒すのもてこずるようになってきていた。
さっき出てきた馬よりでかいクモなんか百発くらいの『プチファイヤー』をぶち込んでやっと倒せた。
百発同時に打ち込めばいいだけなので、そこまでの苦労はないんだが。
まだ魔力の使用量より回復量のほうが多いし。
「いや、モンスターのほうが強くなってるのか?」
浅層内でも奥に行くと少し強いモンスターが出るという話を聞いていたが、本当だったらしい。
これが少しなのか……。
これだと俺は浅層のモンスターと比べ物にならないくらい強いという噂の中層のモンスターの相手はできなさそうだな。
先走って中層に突入しなくてよかった。
……中層へ行く魔法陣を見つけられないから中層に行くなんて無理か。
さっき見つけた階段も抜けたら普通に通路に戻っただけだったし。
なんだったんだ?
あれは。
「それにしても人と会わないな」
街中ほどではないにしても、ダンジョン内にも探索者はかなりいるはずだから、これだけ歩き続ければ一人や二人は出会ってもよさそうなものなんだが。
……もしかして、俺より前には誰もいないのか?
そういえば、俺は朝早くにダンジョンに突入した。
運よくずっと前に進み続けていたなら、俺が一番深い部分にいることになる。
だから誰とも出会わなかったのかもしれない。
もしそうなら、ここで立ち止まって後ろから人が来るのを待つほうがいいかもしれないな。
いや、いっそのことここで引き返すか?
俺が一番前にいるのなら、引き返せばすぐに誰かと出会えるかもしれない。
右手をつきながらだからバックで帰ることになるが、まあ仕方ない。
かなり練習したからうしろ向きでも魔法は打てるしな。
魔導士学校でうしろ向きに打てなければ退学だといわれて必死で訓練したのだ。
どうやら教師からのいびりだったらしく、魔導士団に入っても前向き以外の方向に魔法が打てる魔法使いはいなかったし。
おかげであらゆる方向に魔法が撃てるようになったのでよしとしておこう。
「きゃぁぁぁぁ!」
「!」
その時、前方から人の悲鳴が聞こえてくる。
かなり近い。
緊迫感のある悲鳴だったので危険な目に遭ってるのかもしれない。
助けに行かないと。
「『プチフィジカル』」
俺は少しでも早く悲鳴の主のもとに向かうため、身体強化魔法をかけて駆け出す。
早くいかないと間に合わないかもしれない。
それに悲鳴の主には悪いが、これは俺にとってチャンスでもある。
助ければもしかしたら現在地くらいは教えてくれるかもしれない。
俺は悲鳴の聞こえた方へと全速力で駆けだした。
右手が壁とこすれて少し痛いが、今はそんなことより、早く人のいるところに行くことが先決だ。
***
「助けてぇ!」
「SHAAAA]
広間につくと、さっき倒したのと同じようなクモが女の子に襲い掛かろうとしていた。
女の子は壁際に追い詰められているようだ。
「『プチファイヤ―』!」
「SHAAAA]
俺は『プチファイヤー』をクモに向かって放つ。
百発ぶちこむと、クモは炎にまかれてもだえ苦しむ。
あれは死んでない奴だ。
さっきのやつより強いのか?
そういえば、一回りくらい大きいような……。
「え?」
「そこの人。早くこっちに!」
「は、はい!」
女の子が俺の方へと掛けてくる。
どうやら、大きなけがはしていないようだ。
よかった。
毒とかになってたら治せるかわからないしな。
「SHAAAA!」
クモはうまく火を消すことに成功したようで、立ち上がって俺の方を向く。
どうやら、まだ戦意は衰えていないらしい。
「『プチファイヤー』!」
俺は今度は二百発の『プチファイヤー』を生み出す。
俺の生み出した『プチファイヤー』を見てクモの動きが止まる。
俺にはクモが「え? マジ?」と言っているように思えたが、それも一瞬だった。
直後、プチファイヤーがクモに着弾して、クモはあっけなくこの世を去った。
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