最強魔法使い、クビにされる。④
「大丈夫かな。ジン」
ジンはレオナルドにとって数少ない友人だ。
あえば話をする程度の知り合いは何人もいるが、友人と呼べる存在は少ない。
レオナルドは幼い頃から強い魔力や加護のおかげでいろいろな人に特別扱いされていた。
レオナルドより位の高い貴族でも、彼の金髪を見ると一歩引いてしまう。
金髪というのはそれだけ特別なものなのだ。
金髪の者は大体いい加護を得ている。
そのため、魔力量が強かったり他に特殊な能力を持っている。
先代の国王は綺麗な金髪で、人の心を読む能力を持っていたらしい。
レオナルドも加護を受けていて、いろいろなところでその恩恵を受けている。
だから、特別扱いされるのは当たり前ではあるが、少し不満に思っていた。
皆、レオナルド個人はなく彼についている加護しか見ない。
それは実力以外が関係ないと言う国立魔導師団に入っても変わらなかった。
せっかく貴族の多い王宮の宮廷魔導師ではなくて危険度の高い国立魔導師団に入ったのに。
半分諦めていたときにジンと出会った。
ジンはレオナルドに普通の人に接するように接してくれた。
ジンにとっては貴族も金髪も王族も大して変わらないと思っていたのかもしれない。
レオナルドはそれが嬉しくて、手を回して同室になるように画策したりした。
「ジンは頭はいいけどバカだからな」
ジンは相当頭がいい。
王立の魔導師学校の首席卒業は伊達ではない。
しかも、調べたところ、歴代最高成績の倍以上の成績を残したらしい。
魔導師学校の卒業は十二歳だ。
まだ未発達な十二歳の時点で周りにダブルスコアをつけるなんて普通できることじゃない。
おそらく魔法に関する知識やその扱い方についてはレオナルドもジンには遠く及ばない。
魔法だけではなく、知識量に関しても驚かされることはある。
何の特産品もない領地や歴史上の重要人物や年号なんかはジンに聞けは必ず答えが帰ってきた。
レオナルドは物心ついた頃からずっと勉強させられているのにだ。
だが、ジンは何というか、変なところで抜けている部分がある。
前も休日に街に遊びに行ったときに少し目を離した隙に迷子になっていたのだ。
目的地で合流することもできずに探し回った。
しばらくしてから、町の門兵からジンの身柄を預かっているとの連絡を受けた。
なぜか町の外に出ていたらしい。
この街から外に出るには四方にある門で身分証を提示する必要があるのだが、出た記録はないのに外にいた。
身分証明書なんて街に遊びに行くのに持っていないため、門番に止められて身元保証人としてレオナルドが呼ばれたそうだ。
ほんとにどうやって町の外に出たのやら。
「まあ、何とかなるか」
ジンの魔力量や魔法の技術はずば抜けている。
ジンは気づいていないようだが、ジンの魔力量は俺が今まであった人間の中で一番だ。
しかも今も増え続けている。
魔力量は相当なもので、初級魔法なら数万発は打てるんじゃないだろうか?
何よりすごいのがその魔法の精度だ。
ジンが魔法を外しているところを見たことがない。
普通、初級魔法を千発撃ったからといって中級魔法と同じ威力にはならない。
同じところに千発当てるなんて不可能だからだ。
実際、ジンはレオナルドの前で初級魔法で中級魔法の威力を再現することに成功している。
千発魔法が撃ててすべてを同じところに当てる技術を持つジンは初級魔法しか使えないのに中級魔法を使える団員と同じことができるのだ。
「もしかしたら、ジンなら中層でもなんとかなるかもしれない。……でも、問題なのは仲間だよな」
ジンは友人が少ない。
ジンが自分で友人と呼んでいるのはレオナルドを除けば学生時代の友人一人だけだ。
それに、団の中でもジンは少し浮いた存在になっている。
市民出身だというのもあるが、感性が独特なのだ。
そういう人間は人を選ぶ。
うまく気の合う仲間を見つけられればいいが、下手をすれば誰ともパーティを組めないかもしれない。
「まさか、ソロで潜るなんてことはないと思うが……」
一人で潜れば死亡率は一気に跳ね上がる。
怪我したり、毒を受けたりと一人ではどうしようもないけど、仲間がいれば簡単にどうにかできることっていうのはある。
ジンは用心深いので一人で潜るとしても浅い階層だろう。
最浅層は冒険者もたくさんいるので、もし迷ったとしても助けてもらえるだろうし、大丈夫か。
この町のダンジョンは浅層と最浅層では入り口が分かれており、浅層からは最浅層に行けないようになっている。
浅層から中層に行くのも階段を使う必要がある。
流石のジンもいきなり中層にはいかないだろう。
……やっぱり少し心配だな。
「どうか、ジンに良い出会いがありますように」
レオナルドは自分の信じる神に友人の幸運を祈った。
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