第28話 ゴーレム討伐①
風神竜の討伐から数日が経つ。
家に帰るやいなや、吸い込まれるようにベッドに倒れたことをよく覚えている。戦っている最中は気にしていなかったが、相当な体力を持っていかれたらしい。
ダンジョンから出ると、ステータスは意味をなさない。【人竜融合】はもちろんのこと、【バックステップ(風)】すら発動できない。MPに関係なく、肉体を酷使し、精神的に強く負荷がかかったので、疲労感を覚えた、というわけだ。
「ただ、風神竜の討伐は序曲に過ぎないと」
『汝がそのことを理解しているのは幸いだな』
「当たり前だ。なんせあと二体のボスを倒さなくちゃならんのだろう?」
『いい忘れていたが、二体倒してようやくスタートラインだ』
「そりゃ初耳なんだが」
現在、俺は舞風ダンジョンに潜っていた。八ツ橋と有栖はきていない。つまり、単独での探索だ。
『【
「人間でもないのに詳しいな」
『汝の兄のおかげだ』
赤城王牙。ダンジョンで死んだ兄貴であり、黒神竜の前相棒である。
彼の死が、俺をダンジョンに引き寄せた。
「ほぅ。元相棒の兄さんは、どれくらい強かったんだ」
『汝と比べるにはまだ早過ぎるくらい、とでもいっておこう』
「そりゃ相当らしいな」
『そうさ。なんせあの男が死ぬとは信じられなかったくらいであるからな』
「どうして死んだかは……」
『まだ伝えるときではない』
「そういわれると思ってたよ」
兄の死については、いまだ疑問が残っている。どうして死んだかはもちろんだが。
どうして黒神竜が舞風ダンジョンの第三層にいたか、そしてどうやって俺の意識に語りかけてきたのか。
舞風ダンジョンの受付で遺留品をもらっている以上、兄さんが死んだのも舞風ダンジョンとみて間違いないだろう。
舞風ダンジョンを攻略した経験をふまえると、あそこは、兄さんが死ぬような場所ではないと思った。
唯一懸念されるのは、俺の周りで、不可解な死を迎えた者がいることだ。
古海淳。
黒神竜曰く、古海は安易に真実を知ろうとして、生命を絶たれたという。
隠し部屋にいたゴーレムは、あの階層におけるモンスターの一般的なレベルを上回っていた。
こういった現象が、舞風ダンジョンの他の場所でも起こるとすれば、初心者向けであるはずのあそこで兄が死んだのにも、説明がつきそうだ。
「なあ。古海のことだが。安易に真実を知ろうとした、ってのはどういうことだ?」
『ダンジョンの秘密を知ろうとしすぎただけのことだ。だから、消された』
「答えになっていないじゃないか!」
『立場を弁えろ、人間よ。私はコンピューターでも教科書でもないし、なにより汝にとって都合のよい存在と誤解されては困る。汝の求めしむるところを、私が解決してやるとは限らないのだ』
「……すまない」
黒神竜との距離を感じさせる言葉だった。仲良しこよしではない。俺に目的があって、黒神竜もそれは同じだ。
目的だけで繋がるような関係でありたいと望まれるなら、黙って受け入れるしかない。
兄の死の真実を手繰り寄せるには、黒神竜が必要なのだから。
『わかったなら構わない。ともかく、汝には強くなってもらう必要がある。そうしてはじめて、汝は兄の死の真相を知りえるだろう。いいか?』
「ああ。ダンジョンに潜り、戦い、強くなる。戦うのは俺の担当というわけだな」
戦わねばならない。もっと、強く……。
「さて、きょうは隠し部屋にいく。それでいいんだよな?」
『むろん。隠し部屋の秘密は、汝の試行錯誤によって発見することだ』
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます