第14話 階層ボス【サンダースライム】その二
【人竜融合】により、竜を身に纏う。
「この姿は、いったい……?」
「竜騎士、さ」
サンダースライムは俺の変身した姿を見るやいなや、敵だと認識したらしい。上下に身震いして、こちらに威嚇してくる。
体表から放電していて、電気は光ったり消えたりを繰り返している。
サンダースライムは、ギラリと鋭い視線を送ると体をいきなり収縮させた。
攻撃が、くるか。
ギリギリまで小さくなったのち、ためた力を解き放つように、体が膨らむ。
それと同時に、稲妻が四方八方に降り注いだ。
とっさに後ろへと下がる。どれも運良くこちらには当たらなかったものの、どこかが焼けたらしく、焦げた匂いが立ち込めた。
「これじゃ、迂闊に近づけないな──────ひとりなら、な」
後ろには回復師がいるんだ。少し冒険しても、どうにかなる。いまは、ひとりじゃないんだ。
「ゼアアアアッッ」
大きな歩幅で、一気に距離をつめる。
「くらえ」
一閃。サンダースライムの放電は、間に合っていない。俺は、確実に奴の体を引き裂くことに成功した。
「……何ッ?」
確実に斬ったはず。なのに、勝負は終わらない。斬られたはずの体は、何事もなかったかのように修復されてしまう。
もう一度斬りにかかろうとしたときには、サンダースライムは放電を開始していた。
今の段階ではどうもいえないが、少なくとも一度斬っただけでは倒せるような相手でないことは確かだ。
強かな奴だ。階層ボスを名乗るだけの実力は持ち合わせている。斬りかかれるチャンスは、放電がおこなわれてすぐとみていい。つける隙を、つくしかない。
体が収縮したのち、放電。
距離をとれば、当たることはない。
「もう一度、だ」
ステップを踏んで、一閃。すぐにきりかえして三連撃。だが、その努力は虚しく、体は再生してしまう。
それをもう一度繰り返してわかった。剣は効かない、と。
かといって、ここで【殲滅魔導砲】のようなコストの高い技を使っている場合ではない。
持っている力で、やりとげなくては。
八ツ橋は、サンダースライムの力に気圧されたようで、体がまるで動いていなかった。ただ何もできず、戦慄しているだけ。
武器を持つ俺がそれを放棄するわけにはいかない。
サンダースライムの再生、必ずどこかにカラクリがあるはず。無尽蔵に生き返るはずがない。
いったいどこに。
再度サンダースライムの体が収縮しているとき。
「赤城君。私、わかったかもしれない。赤城君となら、倒せる気がしてる」
「手がかりを掴んだか、八ツ橋」
「あのスライムは、体内の生命力を循環させているだけみたい。だから、目に見えなくてもダメージは少しずつ蓄積している。でも、生命力を循環させて体の原型を再生できてしまうからわからないだけ」
「どうしてそう思ったんだ」
「自分が生命力を操ってるおかげか、生命力の流れが見えたの。斬られたとき、外に生命力は逃げていたから。特に傷口から」
サンダースライムの再生機能も、回復師のスキルに似通っている。
八ツ橋だからこそ出せた、考え。
「なるほどな。それで、具体的にどうすればいい」
「赤城君がスライムを斬ったあと、断面に私の【
「んな無茶な……」
「でも、勝たなくちゃ。私、可能性があるならやってみたい」
「わかった、最善を尽くそう。放電が終わったら、突っ込むぞ!」
雷撃が走る。それを躱し、消えた瞬間を狙う。八ツ橋も同様に動く。
無防備なサンダースライムに、剣を入れる。これまでより早いペースで八つ裂きにしてやった。
「八ツ橋、チャンスだ」
スライムの再生にはタイムラグがある。断面に触れられるうちに、【
回復スキルは、凶悪な
「はい!」
スライムの断面にすかさず手を当て。
「【
俺でさえ、はっきりと生命力の流れが見えた。スライムから、八ツ橋が取り込んでいる。それもかなりのスピードで。
みるみるスライムはサイズを小さくしていく。
「もうこれで斬れるはず、赤城君」
八ツ橋は手を離し、縮んだスライムを宙に投げ上げた。
──────このサイズなら、いける。
「これで、おしまいだ!」
黒剣が、スライムを真っ二つに斬り裂く。
体は、元に戻らない。
「よっしゃぁぁ!!」
「勝った、勝ったよ! 勝ったよ!」
こうして俺たちは、サンダースライムを撃破した。
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レベルが上がりました 93→120
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