第9話 第五層と食虫植物
あれから、俺は高校の方へと足を運んだ。
このままダンジョンに長い間潜ることを考えると、学校に通い続けるという選択は厳しいと判断した。
どうにかして退学か休学に持っていこうとしたが、そのための理由が「アルバイトと学業を両立するため」としたのが弱かったのだろうか。
学校には遅刻と早退をしていいから必ず月に何回かは来るようにいいくるめられてしまった。それだけでも十分な収穫だ。
この日はこれで一日が終わった。
次の日とその次の日は学校にいく気になれず、家でたそがれていた。まだ兄を失ったショックから抜け出せていないらしく、次々と兄に関する出来事がフラッシュバックする。
飯もあまり喉を通らず、軽食で義務的に食事を終えるくらいだった。
この気持ちを誤魔化そうと何をしても、無駄だった。何をすることができないのだ。神竜が脳内で語りかけてくることは、なかった。
そして迎えた、今日。日が昇るか昇らないかという時間帯に、俺は家を出た。
気持ちの整理がつき、俺は舞風ダンジョンへと向かう決心がついた。古海のおっさんは第五層にいるといった。合流できるかどうか不安だが。
「おはようございます」
支部ではまた同じ受付嬢が俺に挨拶をかわした。
「おはようございます」
探索にいくことを伝えると、冒険者用の服の貸し出し等々を済ませ、ダンジョンへ続く入り口へと案内された。
「お姉さん、マリさんっていうんでしたっけ」
「はい、そうですが…… 本名は
「これからも、よろしくお願いします」
「は、はぁ……」
俺はそのまま走り出してダンジョンに消えていった。す不自然な会話だったが、これでいい。瞬間から、俺は兄さんの死を受け入れる準備をしていく。そう決めたんだ。
光に包まれると、第一層へと到達した。
道を進むと、出てきたのは青いスライム。
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スライム Lv9
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【人竜融合】で黒剣をまずは生成し、サクッと斬るとすぐに倒れた。
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スライム撃破 レベルアップなし
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LV1だと弱すぎてレベルも入らないのか。それから第一層では計10体のスライムに遭遇するも、なんの収穫も得られなかった。
第二層では、斬れば斬るほど分裂するスライムがあふれていて面倒だった。攻撃はさほど強くないもの、一体あたりのコストが大きい。サクサクと倒せないのがキツかった。
こちらは15体ほど。
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スライム撃破 レベルが3上がりました 75→78
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やはりもっと強い敵と戦わなければな。
第三層、四層は敵とエンカウントすることなくサクサク下へと進めた。
そして迎える、第五層。
降りた瞬間、これまでと違うとはっきりわかった。
砂漠にあるようさらりとした砂で、地面が覆われている。天井が高く、これまでとはまるで雰囲気が違う。
最初にエンカウントしたモンスターは。
食虫植物のような見た目をした気色の悪いモンスターだった。
二足歩行で、体長は二メートルほど。
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ハエトリソウ Lv60
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「シャァァー!」
首を後ろに引いたそれは、粘液を口から放出した。
とっさに足を動かし、どうにか躱す。
粘液は壁に当たるやいなや、ジュワッと溶けるような嫌な音を立てた。壁の一部がはがれている。
体に当たったら溶けるタイプのものであるかもしれない。もし倒せたとしても、その瞬間に粘液がぶちまけられたら、ひとたまりもない。それはどうにかして避けたい。
モンスターの足の方から狙っていく。植物にしてはなかなか斬りづらく、少し手間取った。とはいえ、一本足を斬れればこちらのもだった。勢いに乗って切り刻む。
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ハエトリソウ撃破 レベルが15上がりました 78→93
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