第3話 ユニークスキル【早熟】の獲得と実用

「ユニークスキル?」

『探索師固有の能力のことだ。探索師はみな獲得しているものだ』

「俺も、もらえるのか?」

『もちろん。だが、そう焦ることでもないだろう。私にも自己紹介くらいさせてくれ。我が名は黒神竜コクシンリュウ。君の兄、王牙の元相棒だ』

「兄さんの相棒……! それなら、兄さんの死ぬところも見たんじゃないのか。なぜ兄さんは死ななくちゃあならなかった?」

『汝は強欲だな。ユニークスキルを与えようとしているのに、兄の死に様ごときにをこうも執着するか。理解し損ねる』


 兄さんの相棒だというのに、なぜ死に様すら教えてくれない。

 俺にだって知る権利くらいあると思うのだが。


「じゃあ、なぜ黒神竜は俺を呼んだ?」

『ダンジョンを壊したいと望んだからだな。そのための力を、汝に受け渡すためほかならない。ダンジョンを破壊することこそ、汝の求める答えにつながる』

「どういうことだ」

『ダンジョンというのは、ひとつの生命体なのだ。汝はダンジョンの誕生を知っているか?』

「いつの間にか、世界中に現れていたというくらいしか」

『そもそも、【ダンジョン】という生命体は、この地球に長年存在していた。それが汝らにも見えるようになったに過ぎない。汝が果たすべきは、【ダンジョン】を抹消することだ』


「どうやって?」

『この県にある三つのダンジョンに潜む敵。それを打倒したとき、【ダンジョン】は真の姿を表す。その【ダンジョン】を倒してはじめて、汝は目的を果たす機会を得る』

「いっけん、簡単そうに思えるんだが」

『【ダンジョン】は、探索師の比にならないくらい強い。信じられないほどにな。どんなに強い探索師でも、現段階では【ダンジョン】の足元にも及ばない。必要なのは、圧倒的な力だ』

「ようは、ユニークスキルをあんたからもらい、強くなればいいんだな」

『そういうことだ。さて、今から汝にユニークスキルを献上しよう。私の鱗に触れてくれ』


 鎖に縛られた竜に、俺は手をつけた。


「これで、いいのか?」


 しばらくすると、俺は力がみなぎるような感覚に襲われた。

 自分の中に別のものが取り入れられていくのが、ひしひしと伝わる。

 いまにも破裂しそうなくらい、活力がみなぎっていくのがわかる。


『これでよい。あとは、ステータスバンドで、ステータスを見るといい。一度触れば、わかるようになっている』


 指示通り、俺はステータスバンドをタップした。

 すると、このような文字列が浮かび上がった。

 ──────────────────

 氏名 赤城竜司

 LV 1

 ユニークスキル:【早熟アーリーブルーム】 

 他のプレイヤーに比べ、より早くスキルを入手し、より早くレベルを上げることができる。

 スキル:【人竜融合】

 称号:ー 

 ──────────────────

 

「なんだか、思ったより弱そうなんだが……こんなんで【ダンジョン】は倒せるのかよ」

『それは汝の活躍次第、というところだよ』

「胡散臭いな……」

『さて。そろそろ人払いの術式が解かれ、この階層のボスが現れる。振り返ってみよ』


 ウォォ、といううめき声が背後から聞こえた。

 振り返って見えたのは、ミノタウロスだ。


 三メートルほどの大きさで、両手には斧を持っている。

 こちらの存在を敵視しているらしく、赤い目は怒りに満ちていた。

 力強い足取りでこちらに近づいてくる。


 目を凝らしてみると、ミノタウロスのステータスが表示された。


 ──────────────────

 ミノタウロス

 Lv28

 スキル 斧攻撃<単発><連続>突進 

 ──────────────────


「Lv、28……」


 たしか、俺のレベルは1のはず。

 ……格上すぎる。


「本当に、これに勝てるのか?」

『この神竜と契約をかわした汝は、同時に竜騎士としてのスキルを得た。そのスキル名を、口走るといい。さすれば、汝は竜騎士となる』


 得たスキル。名前は、【人竜融合】。

 やってみるか。


「【人竜融合】!」


 すると、竜は黒い霧となり、俺の体を覆いはじめた。

 戦隊モノや魔法少女が変身するように、俺の体は竜の鱗で包まれていく。

 霧の一部が黒い剣として姿を変え、右手に握られる。


「これは……」


 ステータスを確認してみる。


 ──────────────────

 氏名 赤城竜司 

 LV 50

 ユニークスキル:【早熟アーリーブルーム】 

 他のプレイヤーに比べ、より早くスキルを入手し、より早くレベルを上げることができる。

 スキル:【人竜融合】

 称号:竜騎士

 ──────────────────


『竜騎士の力を解放したことにより、レベルが上がったのだ。あとは剣を振るえば、ミノタウロスは倒せる』


 今にも斧を振りかぶろうとするミノタウロスに、剣を向ける。

 ミノタウロスの斧が振われた瞬間。

 俺はどうにか軌道から離れ、ガラ空きになった背後まで回り込む。


 地面を蹴って、背中を射程距離内に入り。


 一閃。


 剣はみるみるとミノタウロスに食い込み、体を真っ二つに引き裂いた。


 ──────────────────

 レベルが5上がりました 50→55

 称号を手に入れました 「一撃必殺」「ミノタウロス殺し」

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